ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第76節 アーティファクトの行方

 その日の夕方、カイルは仲間のもとに戻り、話をしていた。
「収穫なしって感じね……。」
 エメローナは呆れた風に言った。
「やむを得ないな、ここでの捜索はパスするか……」
 フレアはそう言うとバルファースは調子よさそうに言った。
「ここは一つ、情報屋ローナス様の手腕を拝もうじゃないか?」
 それもそうか、カイルは頷いた、どうせならこの町にしばらく滞在してメロリンちゃんともっと一緒に仕事したいし!  声を大にして言えないけど。
「ほいほい、ちゃんと調べてありますよ、表面だけですがね」
 それに対してエメローナは顔をしかめて訊いた。
「ちょっとぉ? あんたの腕をもってして表面だけってどういうことよ?  やっぱりアンダーアビス行きでお願いしますってこと!?」
 ローナスは焦っていた。
「そ、そんな! 滅相もございません! 表面上しか調べられなかったということですよ!」
 それについてグローサルは考えていた。
「霊体ゆえにアーティファクトの話となると踏み込んでの捜索ができなかったと、そういうことか?」
 そう言われてエメローナとフレアは気が付いた。
「ということは……この町のアーティファクトの能力は未だにアクティブな状態ってこと?」
「だが、それにしては妙だ……それだったら私らがその存在に気が付いてもいいハズ、 なのにどうして見つけることができないでいるのだろうか――」
 そして2人は悩んでいた。
「私としてもそういったケースは少々気がかりでございましてね、 私の体であればそもそもアクティブな状態だったらこの町にいることさえできんハズなんすよ。 なのに、それでもこの町のアーティファクトは大きな力を保有しているかのように見える、 まるでアクティブな状態であるかのように――」
 するとグローサルは考えた。
「ということは考えられることはただ一つということだな」
 どういうこと? 全員が注目した。
「アーティファクトと呼ばれるものについては我が”フレアガルディアス”の世から作られ始めている。 しかもそれの生産地とくれば大体この辺りと相場が決まっている、この辺りがまさに発祥の地だからですね。 要は――」
 エメローナは頷いた。
「この町にあるアーティファクト、もしかしたら1つじゃない可能性があるってわけね。」
 フレアは納得した。
「確かに、異なる力場を発するものが複数あって力場が干渉しあう…… それなら疑似的に大きな力場があるような状態にもなりえるということか」
「それに異なる力場によるものだったらアビス行きのあんたが力場の間を縫ってこうして平然といられたって不思議じゃないわね。」
 俺、やっぱりアビス確定なのか……ローナスは落胆していた。
「そう……複数あるっていう可能性で考えれば1つ心当たりがあるんですがね」
 ローナスは続けた、やっぱり手掛かりを持っているんかよ!  なら、アビス行きは避けられないな、勿体ぶりやがってこいつ。

 ローナスによると、それはまさに所有者のいる代物だった。 交渉という手こそあるが、期待はしないほうがよさそうだ。
「持っているやつはアロザルト家の連中っすね――」
 そういわれてバルファースとディウラは悩んでいた。
「知っているのか?」
 カイルは訊くとバルファースは答えた。
「エンケラスでは手広くやっている商人のお家だな。 ここじゃあ”がめつさ”ナンバーワンとも呼ばれているほどの連中で、 それこそ我がバンナゲート貴族界の中でもかなりの大物として有名なザ・重鎮オブ重鎮たる存在だ。 取引して何とかなる相手じゃねえ、やつを出し抜くには相当の手腕が必要ってことだな。 無論、それについてはアテがないわけでもないが――」
 ディウラが続けた。
「一応、アロザルトの家に対抗できる家としてシェルベリア家というのがいるのよね。 ただ――今のシェルベリア家は大黒柱たる大旦那様という方が少し前に亡くなったばかりでね、 それで貴族界の勢力図が大きく変わってしまったのよ」
 そう訊いてエメローナは考えた。
「ふーん……ということは取引の材料としては一定の財産が確実に必要ってことになりそうね。 となると……出し抜くには相当入念な準備が必要ってわけか……」
「だな、精霊界で出し抜くといえばシルグランディアの右に出るものはいないとも言われているからな、 なんとかなりそうか?」
 フレアはそう訊いた、マジか!?
「言っとくが、そんなヤワな取引じゃねえんだぞ?」
 バルファースはそう苦言を呈すがフレアは頷いた。
「案ずるな、その点に関してはシルグランディアはまさに歴戦の勇士、 如何なる相手をも下しているからな、それがたとえ人間界の豪商と呼ばれる存在であってもな」
 マジですか……
「時間はかかるけどね。 ま、取引材料を探っていろいろとやってみましょうかね。」
 エメローナは得意げに話していた、何をするんだシルグランディア……。