ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第3章 東の大陸へ

第52節 取り扱いの難しいもの

 難なく最深部へとやってきた一行、 そこにはあからさまにアーティファクトらしきものがあった。
「もう少し灯りを――」
 フレアはそう言うと、彼女が展開している光の魔法の力が強くなった。
「祭壇とは如何にもといったところだな」
 バルファースはそう言いつつそれをまじまじと見つめていた。
「こんなに身近にアーティファクトがあれば、その話は信じるというわけか」
 フレアは言うとバルファースは言った。
「そいつはちょっと違うな。 確かに、アーティファクトの存在は信じているんだが1,000年前の出来事はどうでもいい…… 俺としてはそのぐらいのスタンスでしかないんだがな」
 そう言うことか、フレアは考えた。
「道楽としてターゲットにしているものが何者なのかわかっていれば十分ということか」
「理解が早くて何よりだ」
 フレアは首を振りつつ話をした。
「とにかく、どうやら特に何もしかけはなさそうだ。 見たところ、なにかしらの魔法で封印されていたようだが――」
 そう言いつつ、フレアは祭壇の真ん中に置かれている物体を取り出すと――
「どうやら長い時を経てその魔法の効力も失われているようだ」
 パティアはフレアが取り上げた物体の形状に気が付いた。
「それ、鍵ですかね?」
 フレアは言った。
「恐らくな。 私の知る限りでは恐らく”黄金の鍵”……だったと記憶している」
 それについてカイルが訊いた。
「それそれ、ずっと引っかかっていたんだけどさ、精霊って人の世界の何某に手を出す考えはないんだよな?  確かに、第4級精霊だからそうでもないとかアーティファクトの影響を知りたいとかそのあたりの話は聞いたけどさ、 でも――それにしてはアーティファクトに対するインプットがあるのってどういうことなんだろうなって――」
 フレアは言った。
「それは第4級精霊ゆえの知識というやつだな、”フォース・ゾーン”の乱れ……つまり、 この世界の力場を乱す存在についてはつぶさに観察しているのだ。 精霊界にとって一番危惧しているのはアーティファクトの影響を知りたいということからもわかる通り、 フォース・ゾーンが乱れることに他ならない。 精霊界がそれを言う以上、第4級精霊としてはフォース・ゾーンが最も乱れる要因を注視することになる――」
「だから第4級精霊としてはアーティファクトの存在は警戒対象として見ておく必要があるという考えに至ったということか。 それでどのようなアーティファクトがあるのか……第4級精霊の中でその情報を共有しているというわけだな」
 バルファースはそう言うとカイルがさらに訊いた。
「でもさ、それこそ大昔の暗黒時代とか、これから来るだろう邪竜とか、むしろそっちのほうを危惧しないものなのか?  ……いや、だからアーティファクトを集めようと行動しているのはわかるけどさ――」
 それにはバルファースが言った。
「フォース・ゾーンが最も乱れる要因がこいつだって言ったところを気にしているのか、 魔物退治を専従するハンターらしい考え方だな。 でも、俺だったら力を宿すお宝のほうを重要視するね、 魔物とかなら殺っちまえばそれまでだが形あるものはぶっ壊さない限り残り続けるもの…… しかもこれまでの話の通り、そういったものは奪い合いの果てに人から人へ流れていくもの――」
 フレアは頷いた。
「理解が早くて助かるな、まさにそう言うことだが―― 魔物にも死骸自体がアーティファクトのようなやつもいたりする――似たようなものだが。 そう、我々が気にしなければいけないのはその場に残り続ける力場……その存在には常に注視しているのだ。 かといって、安易に破壊することもフォース・ゾーンを乱す要因にもなる……」
「痛し痒しってわけか、面倒なことだな」

 一行は洞窟から出てこようとしていた、するとバルファースが――
「待った、なんだか様子がおかしい――」
 と、入口の脇にすぐさま駆け寄って周囲を警戒していた、 例のおつきたちが付近をうろついていたようだ。
「まさか、バレた!?」
 ディウラは焦っているとフレアは考えていた。
「これだけ動いていればその可能性もあり得るな――」
 バルファースは首を振った。
「とにかく島を脱出しよう、それしかないな」
 それしかないな。