ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第3章 東の大陸へ

第50節 霧隠れ

 ということで、早速アーティファクトを探しに行くことになった、それは――
「なるほど、そんなところにあるのか――」
 フレアはそう言いつつ考えていた。
「そうなのよねぇ、目と鼻の先にあるんだけど少々厄介なのよね――」
 ディウラはそう言いつつ悩んでいた。 それもそのはず、目的のアーティファクトがある場所はディウラの家の庭の中で、 なんだか遺跡のような建物の中にあるという。 それは人目につかない狭い庭にある建物の中なのでその点では問題がなさそうだが――
「問題はどうやって鍵を手に入れるかだな」
 と、バルファース、入口はしっかりと施錠されていて入りようがないのだが、 あろうことか、その鍵は当然のようにディウラの家であるリアンドール邸の中なのでとにかく面倒なのである、 そう――
「今はドラ息子はいねぇようだが、そのおつきとやらがいるようだな――」
 バルファースとディウラは邸宅の様子をそっと偵察すると、戻ってきた。 取り合えず、遺跡のような建物の前へと戻ってきた。
「見つかると大変そうね、どうしようかしら――」
 ディウラは悩んでいた。
「具体的にはどこにあるんだ?」
 フレアは訊いた。
「お父様の書斎の金庫の中ね。 入れさえすればすぐに取れるところにあるから全然問題ないんだけど――」
 そうなのか、バルファースは考えると――
「仕方がないわね、私、行ってくるわね――」
 ディウラはそう言って歩き出すと、バルファースは慌てて止めた。
「待つんだ。 お前な、それでこの前連中に拉致まがいのことをされかけたのを忘れたのか?  二度とあんなことになるのはゴメンだからな――」
 そんなことがあったのか、ますますひどいな――フレアとパティはそう思った。
「で、でも、どうしてもアーティファクトが必要なんでしょ? だったら――」
 と、彼女はフレアを見ながら言うと、フレアは頷いた。
「すまないな。だが、見つからずに行くという方法ならあるぞ」

 フレアとディウラはリアンドールの屋敷へと入ることにした。
「本当に大丈夫だろうな?」
 バルファースは訊くとフレアは頷いた。
「まあ見てろ。さて、ディウラ――準備はいい?」
 彼女は決意すると、フレアは早速始めた。
「なら、始めよう――<ミスト・スクリーン>……」
 すると、なんと2人の姿は霧に包まれ、次第に――
「き……消えた!?」
「お姉ちゃんたち消えちゃったよぅ! お姉ちゃんの魔法ってすっごーい!」
「便利な魔法だな」
 ということである、パティとザードは感動しており、バルファースも唖然としていた。
「純粋な姿くらましの魔法だ、だから物理的接触には注意してほしい。 それに消せるのはあくまで姿だけだから音などにも気を付けてほしい」

 確かに、屋敷の中はクレマスト邸よりも少々豪華な作りである。 もっとも、あくまで少々豪華に留まる程度だが、 そのクレマスト邸もやはり桁外れと言ってもいいほどのそれなので、 もはや常人には理解しがたい世界と言っていいだろう。
 そして、侵入しているメンツの問題でそこまで感動がないのも残念である。
「あそこがお父様の部屋よ! 周りには誰もいないし、部屋に入るチャンスね!」
 ディウラはフレアにそう伝えた。
「誰か入っているという可能性はないのか?」
「それは――出たとこ勝負ね……」
 そんな――フレアは悩んでいた。
「まあいい、もしものことがあれば私が何とかしよう」
「ごめんね、私も考えるから――」
 ディウラに言われてフレアはますます悩んでいた。

 ディウラは部屋へと入った、すると――
「うん? 誰だ? 何の用だ? 部屋には誰も入るなと言ったろう――」
 やばい、誰かいた――フレアは焦っていたが、ディウラは――
「お父様!」
 なんだって!? フレアは驚いた。 ディウラは霧の中から抜け出し、お父様に近寄っていた。
「ディウラか! どうしてここに!? 姿が見えんかったが――」
 ディウラはフレアを紹介し、事情を説明した。
「そんな魔法が――。まあいい、それより、やつらに聞かれたらまずい! こっちに来なさい!」
 お父様はそう言いつつ、2人をさらに奥の書斎へと案内した。