大きな屋敷というだけあって内装も何とも圧倒される光景だが――
「外も立派だけど中もやっぱりすごいね、これがバンナゲート貴族なんだね!」
と、パティ……なんか、そこまで感動を感じていない点でカイルは違和感を覚えていた。
感動しているのはザードだけ――
「わーい! 大きなおうち! 広ーい! すごーい!」
初見時の自分はまさに彼と同じリアクションで田舎者のごとく目をキラキラと輝かせていた――
いや、ザードのはちょっと感動しすぎなのだが。
「ふ、フレア……?」
彼女もそこまで感動してはいない、何故だ――カイルは悩んでいた。
「”野生の精霊様”で悪かったな。
そもそもこの手の家からの依頼も何度かある、珍しくもない」
あ、そうですか、そこは流石はエターニスに近しい人、人間の世の何某にはそこまで興味はないか、イメージ通りである。
それに……そういえばシュリウスには確かに金持ちの邸宅はあっても、
ハンターの仕事でここまでイメージ通りの桁外れな邸宅にはお目にかかったことがなかったと思ったカイル。
所謂、貴族の洋館というものはシュリウスにもなくはないが、
ディーマスの家もディウラの家も洋館というより洋城と言ったほうが正しいだろう。
「ねえねえ! あのお空に浮いているあれ! なーに!?」
ザードは興奮しているとパティが答えた。
「あれはシャンデリアっていうんだよ、灯りの役目をしているから暗くっても明るいんだよ」
「んじゃあ……あれは何!?」
「あれは噴水だね。
普通は家の外にあるんだけど家が広いから中にあるんだよ、すごいね!」
いや、てか、彼女のテンション……なんで感動が薄いのよ――カイルは訊いた。
「え? うん、だって――実家にもシャンデリアや噴水ぐらいあるし、ピアノやステンドグラスだって……」
パトリシア=レイナンド、まさかの良家のお嬢様な件発覚……カイルの頭はパニックになっていた。
「あのな……お前、うちに来たのこれで7回目だろ? 何を今更田舎者みたいに燥いでいるんだ?」
と、バルファースに苦言を呈され……違う! この家に驚ているんじゃねえ! カイルはそう突っ込まずにはいられなかった。
「ったく、恥ずかしいヤツだ――」
フレアは頭を抱えて呆れていた、ぐぬぬぬぬぬ……カイルは何とももどかしい思いをしていた。
ということで、一路そのままリビングへと促された。
するとそこにはオルダナーリアがメイド服に身を包んでおり、
クライツもバトラーたる服装で整えていた。
「本当に使用人なんだな――」
フレアはそう言った。
これまでの2人はどちらかというと使用人を感じさせないような恰好だったのだが、
それでも使用人という立場故なのか礼儀だけは正しかった。
それでこんな格好をさせられたら……まさにその通りという感じしかしない。
「とりあえずメシでも食うか、”アーティファクト”の話はその時にな」
しかし、こいつは打って変わって服装に変化はなく、態度もそのまま続投中……道楽にしゃれ込む自由人、そのイメージにはあっている。
既に夕飯時、豪華なひじ掛けとテーブルのダイニングにて、
豪華なハンバーグステーキがそれぞれの面前に出された。
カイルはほどほどに礼儀正しく、フレアは上品に食べていた。
一方でパティもディーマスもディウラも流石にお家柄故か上品に食べていたのだが、
ザードはそのイメージ通りにバクバクと食べており、
その際はオルダナーリアにステーキを切り分けてもらっているのだが、
その様を見ながらワクワクしていた、かわいい。
その夜――フレアが寝泊まりしている部屋にて、ディウラがやってきた。
まさしく名家のお嬢様、美しいネグリジェ姿でしっかりと決めていた、
言ってもそれはフレアも大して変わらないので――
「やっぱり! 流石はラムルの女ね!」
と、ディウラはフレアのネグリジェ姿を絶賛していた。
言われたフレアは顔を赤くしていた。
「それを言ったらディウラこそ――」
「言ったでしょ? 良家のお嬢様ってのはそれが基本ステータスだって。
でも――そっか、つまりフレアも良家のお嬢様に相応しいものを持っているということになるわけね!」
そんなことは――フレアは照れていた。
「だけど、正直言って、良家のお嬢様の何某なんかにはあんまり興味がないのよね――」
と、ディウラは漏らした、それゆえの不良娘か。
「外の世界のほうが好きということか」
ディウラは頷いた。
「ラムルの女――プリズム族だからね、
いろんなモノがあふれている生活よりも外の世界で危険と隣り合わせでもいいからいろんなところに行っていろんなものを見てみたいんだ――」
確かに、それはフレアも共感するところだった。