ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第2章 名もなき旅の序章

第43節 どこまでヤバイ存在

 そして、一行は朝方の白の街並みを堪能することとなった。 だが目的はヴァナスティア神殿、何とも厳かな佇まいのそこに行くことが目的なのである。 何故かというと――
「パンドラ・ボックス、あっさりと手に入るといいな」
 カイルはそう言った、そう、その”アーティファクト”はフレアの持っている情報通りならここにあるらしい。
「案外、あっさりと手に入るかもしれませんよ。 なんといってもヴァナスティアですからね――」
 ディウラは楽しそうに言うとフレアは言った。
「あっさりと手に入るのであればそれに越したことはない。期待だけしておくか――」
 するとそこへ――
「あっ! いたいた! ディウラさん!」
 そこへ白いローブ姿の女性が現れた。
「あっ! リシェルナ!」
 ディウラは彼女と待ち合わせしていたのだそうだ、だが――
「あれっ!? そちらの方はもしかして――」
 と、リシェルナはフレアの存在に反応した。
「まさか!? どうしてここに第4級精霊が!?」
 なっ!? 第4級精霊だって!? フレア以外に特異性を持った存在がいるのか!?

 彼女の名はリシェルナ=グランディス、第4級精霊ならではの特別な話はあるが、 とりあえず、それについては後にすることに。 ただ、見た目の印象はなんとなくパティに近いような女子という感じである。 ローブの中は明らかにブラウスにスカートと、なんともカジュアルな服装であるあたりもパティに通づるものがあった。
 ともかく、今回の目的は”アーティファクト”だ、それについて問題を解決しよう。 彼女についてはそれからでも遅くはない。

 御殿の中に入るとそこは礼拝堂、 御殿の外観は何とも堂々した佇まいでなんとなくきらびやかな印象すら思えるのだが、 内装は打って変わって質素である。
 ヴァナスティス神教は”ユリシアン”を最高神として祀っている。 つまり、礼拝堂では彼の像が祀られていてしかるべきなのだが――
「噂じゃあユリシアンじゃねえって話だったな」
 バルファースは言うとディウラが答えた。
「最高神は”ユリシアン”――だけど、この世界では唯一無二の神であり他には存在していないみたいね」
 じゃあ、一体祀られているのは誰なんだろう。
「というか、”ユリシアン”は男神だったよな?  あそこに祀られているのはそもそも男ですらないように見えるんだが?」
 カイルは祀られている像に指を差s……おとと、慌てて手で指し示して訊くとリシェルナが答えた。
「あの方はフラノエルという女の精霊様ですね!」
 フラノエルって確か――バルファースが言った。
「ヴァナスティアの教えだ」
「ヴァナスティアの教え最終章”神の奇跡と時の英雄たち”。 時の英雄となる世界を均す者たちは神の奇跡を信じ、精霊フラノエルと共に当時の邪悪をうち滅ぼした――」
 ディウラがそう続けた、流石に知っているな。
「フレア、そんなことあったのか?」
 カイルは訊くとフレア彼女は答えた。
「らしいな、そこは教えの通りだろう」
 精霊フラノエルについては? カイルは催促した。
「そういう精霊がいたということは訊いたことがある。 すまないが、私はあまり彼女のことをよく知らんのだ」
 そうなのか……カイルはそう漏らした。そんなやり取りを見てリシェルナはにっこりとしていた。

 そして、彼らは礼拝堂のさらに奥のほうへと通されることとなった。 礼拝堂の横のほうに扉があり、そこから通廊のほうへと出てくることに。 通廊には屋根こそかかっているが、左右は屋根もなく完全に外の廊下である。
 途中で曲がり角や分岐路を曲がったり、階段を登って空中回廊のような場所を進んだりしつつ奥の建物へと入ると、 そこにはいくつかの部屋……扉があった。
「すみませーん! 失礼しまーす!」
 リシェルナはある扉をノックしつつ扉ごしにそう訴えると、 彼女はそのまま扉を開けて中に入った。 するとそこには――
「おお! リシェルナ殿! すまんな、こんな状態で……」
 と、中に老人がおり、腰の低そうな態度で――
「ああ! 立たれないで大丈夫ですよ!  さあみなさん、中へとどうぞ♪」
 立ち上がろうとした矢先、リシェルナがそう言ってカイル達を部屋の中へと促した。