再び進むことにした面々。
最後に108段のロープウェーでヴァナスティアへとたどり着いた。
時間的はちょうど夕暮れ時、夕日に照らされて赤々としたヴァナスティアの街並みが見られ、
何人かは感動していた。
ヴァナスティアの街並みは通称”ヴァナスティア・ホワイト”とも呼ばれる白の街並み、
門前町など他の追随の白とは比較にもならない白の色であり、
それによる美しい景観は疲れ切った旅人たちの癒しになっているのである。
だが、その時――
「あらあら大変!」
すぐそこの建物から女性が出てくると、彼女は彼らの前に立ちはだかった!
「海賊がこんなところにまで!
ふふっ、さあ海賊さん、おとなしくお縄につきましょうね♪」
なっ……まさか、一触即発の状態か!? と思いきや、バルファースは彼女を目の前に呆れた態度をしていた。
「なんだ、いたのかお前――」
女性は答えた。
「いたのかお前だなんて、随分なあいさつですわね。
むしろそれはこっちのセリフ、私はよくここにきているのだからいてもおかしくなくって?」
バルファースは呆れた態度で答えた。
「まあ、それはそうなんだが――」
と、その会話にカイルが口をはさんだ。
「あれ? もしかしてディウラさん?」
「久しぶりねえカイル君!」
彼女はにっこりしながら返した、お前知り合いかよ。
宿屋の一室にて、カイル・ディウラ・バルファースはどういう知り合いなんだろうか――フレアは話を聞いていた。
ディウラは白のトップスの上にブランドのレザージャケットを羽織っており、
下はオシャレなロングスカートと、明らかに良家のお嬢様というような見た目をしている。
髪も金というよりクリームイエローの長い髪の毛をしたザ・美人という感じで、
どことなくフレアにも通ずるポテンシャルを持ち合わせているような印象だった。
「こいつはただの不良娘だ」
不良娘? フレアは訊くとディウラはにっこりとして答えた。
「ええ、その通り、不良娘のディウラでございますわ。よろしくお願いいたしますね」
海賊と不良娘という組み合わせ……変な知り合い同士だな、もはやクサレ縁なんじゃないかという感じすらある。
だが――
「なるほど、そういうこと――
それならそろそろ教えたほうがいいんじゃないかしら? ねえ、ディーマス?」
ディウラはバルファースにそう訊いた、ディーマス?
するとそのディーマスは両手をそっと上げつつため息をついていた。
フレアはその話に呆れていた。
バルファースの身なり、そしてディウラの身なりなどを見てもある程度把握できる通りだが、
この2人は実は――ディウラとバルファースは話を続けていた。
「私の名前はディウラ=T=リアンドール、
そしてこっちの海賊さんがディーマス=F=クレマストって言うのよね?」
「忘れたのか?」
「ただの海賊崩れに良家の名を語らせてもいいのかわからなくって――」
確かにそれはその通りだ! フレアはその皮肉を絶賛しているが、当のバルファースは呆れた態度で示していた。
そう、良家――2人は実はバンナゲート島の資産家の家の者なのである。
バルファースの大きな船は資産を投じて購入したものであり、
一緒にいたオルダナーリアとクライツはネタではない本当の”じいや”と”ばあや”……もとい、
クレマスト家の使用人なのだそうだ、使用人を手下にしているだなんて……。
「で、それでやっている”海賊行為”が金持ちの”道楽”ってわけか……」
フレアはなおも呆れていた。
「金持ちだからな、”道楽”ぐらいしかやることがねえってわけだ」
バルファースはかっこつけて言ったようだが、フレアはさらに呆れていた。
「ねえ、フレアさん……いざとなったらこんな海賊、捕まえて豚箱に放り込んでもいいんですよ?」
どうやらディウラとは仲良くなれそうだ、フレアはそう予感した。
そんなディーマス=F=クレマストに対し、
カイルやフレア、そしてパティにとってもディウラ=T=リアンドールは大変ヤバイ存在だった。
「えっ!? ディウラさんってそうだったのか!?」
それにはカイルが真っ先に驚いていた。
「うふふっ、実はそうなのよねー♪」
「じゃっ、じゃあ……今度から”ボス”って呼ばないとダメかなぁ?」
と、パティ……”ボス”というのはつまり――
「やだあ! そんな”ボス”って器じゃあないわよ! 普通に”ディウラ”でいいわよ!」
「それじゃあ、今度から”ディウラお姉様”って呼ぶね!」
「うん! ディウラお姉ちゃん!」
パティとザードは興奮しながら言うとディウラは照れていた。
「まあ! パティみたいなカワイイ娘とザード君みたいなカワイイ子にそんなこと言われると照れちゃうなぁ♪」
彼女はデレていた、名家のお嬢様という割にはあんまりらしくないところが見えるような憎めないキャラ――
そういうところ含めての不良娘らしい。だが、不良娘たる真の理由はほかにあった。