ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第2章 名もなき旅の序章

第31節 身近にいたヤバイヤツ

「改めて、お疲れさん! 請負中の仕事の報告だな!」
 受付は元気よく言った。 仕事はギルド・ネットワークによる連携で、 どのギルドに行っても請負中の仕事の状況を確認・清算することができるのである。 ただし、現地の仕事を受ける場合は現地のみなので、それは直接行かなければならない。
 ちなみに、現地と言っても実際の仕事は随分と離れている場合もある、 だからこそのギルド・ネットワークということである。 なお、ギルド・ネットワークの連携方法については悪用防止の観点から秘匿されており、 一部の者しか知らないのだという。
「今受けているのはガルトゥース討伐とコボルト退治とシルヴァンス・ウルフ調査、 それからドミナント聖火リレーだな? 全部清算するか?」
 えっ、ちょっと? 聖火リレーはいいとして、 他の3つはもう確認が済んでいる!?  というか、コボルトは退治できたわけではないんだが? 2人は驚いていた。
「詳しい話は聞いているがあんまりよくわからなかった。 けど、とりあえず確かな情報筋からの話だから間違いないだろうな」
 確かな情報筋ってどういうことだ!? すると、横から見慣れた姿が――
「よう、カイル! そして美人さん!」
 ……そいつはまさかの情報やローナスだった。
「お前! どうしてここに!?」
 すると……
「私と一緒に来たんですよ!」
 えっ、その声は……まさかパティ!?

 そこにいたのは見紛うことなきパトリシア=レイナンドだった。
「ガルトゥースの死骸は確認したよ、燃やしたのはわかっているんだ。 コボルトは……うまい具合にかき乱してくれたおかげで連中はどうやら仲違いしているようだ。 シルヴァンス・ウルフは今子供を連れているんだろう?」
 えっ、えぇ……ローナスが言ったことに対して2人は悩んでいた。
「ローナス……お前さ、いつも思うんだけど、そういう情報をどうやって仕入れるんだ?」
 しかもどうやら初めてのことではないらしい……カイルは呆れていた。
「そいつはもちろん企業秘密さ。 ま、それはもちろんだけど、辛うじて言えることは――」
「見ていたから……本当かよ!?」
 と、ローナスが言うことにカイルは続ける……え、見ていたというのか!? フレアは驚いていた。
「只者ではないようだな。何者だ?」
 フレアは訊いた。
「見ての通り、ただの――」
「精霊族……というだけではなかろう?」
 えっ、ローナスって精霊族なのか!? カイルは驚いていた。
「おいおいおい、カイルー……長い付き合いで今更そいつはナシってもんだぜぇ?」
 それについては流石にフレアも呆れていた。
「お嬢さん、見ての通り、俺はただの精霊だ。 あんたのような大精霊ごとき存在とは比較にもならん存在……ただの第5級精霊ってやつだよ」
 本当かよ……それについてはあんまり納得できないのだが――
「ホント、いつもながらわけわからないやつだよねぇ……」
 パティも頭を抱えていた。

 ローナスはギルドに残り、パティが一緒に船までついて来ることになった。
「あいつ、本当に見ていたというのだろうか……」
 フレアは頭を抱えていた。
「だいたいそうなんだよねぇ……。 それこそ、どういうわけか隣の大陸で他のハンターが倒した手配モンスターまで把握してて、 それも”見ていた”とか言い張るんだよ!? ホント、気味が悪いよね!」
 パティはそう言った、確かに気味が悪い。
「ホントにモヤモヤするよな――」
 カイルは呆れていた。
「だよね! もしかして、あいつ幽霊かなんかじゃないの!?」
 幽霊? フレアは訊いた。
「確かになあ。 あいつ、いつものことだけどいつの間にか突然いるって感じなんだよなぁ。 それに”見ていた”とか言うけど、どう考えても”見ていた”というだけじゃあ説明のつかないことだってあるんだぞ?  例えば洞窟の中とか……一緒に入っていたとか言うのだったら百歩譲って”見ていた”で納得してやってもいいけど、 特にあの邪竜騒動の時は当事者である俺は本当に驚いたからな……」
 そう、最初のあのドラゴン・スレイヤーの件のことである。 あいつはどうしてそれを知ったのだろうか、カイルは未だに腑に落ちていない。
「幽霊だったら洞窟の壁を通り抜け、その時の光景をはっきり見ていてもおかしくはないってことか。 だが、後追いで洞窟内を確認しに来たという可能性もあるぞ。 それに……あそこで起きた真実を話さなかったことについては?」
 フレアはカイルにそう訊いた。
「ん? ん? んん?」
 何のことだろうか、パティは首をかしげていた、すると――
「いや、あいつは他のやつと違った。 他のやつはあの時の行方ぐらいしか聞いてこなかったのに、 あいつは俺が斃したことを知っているかの如く、 俺に向かってただただニヤニヤしているだけで何も言わなかった、 あの後の行動も素振りも何から何まで何が起きたか知っているかのように振舞っていたからな…… だから焦った俺はあいつのことをしばらく無視していたんだ―― 思い出したらなんだか無性に腹が立ってきたな……」
 マジか……フレアは唖然としていた。すると――
「えぇーっ!? あの邪竜って、結局カイルが斃したんだー!?」
 あ……そういえばパティ……いや、他の人にはリークしていない話だったっけ……カイルは悩んでいた。