すると、そのうち海が。
「ん、あれは!」
カイルは気が付いた、海と言えば船、クルーザーというよりはフェリーと言うべき大きさの船が沖にあった。
海岸には小さなボートが……
「さあ、早く乗りな、レディーファーストだ」
海賊はフレアにそう促すが、フレアは躊躇った。
「そいつは取りゃしねーから、死にたくなければさっさと乗るんだ」
そう言われ、フレアはしぶしぶ乗ることにした。
それに続いてカイルと海賊の3人はボートに乗り込むとボートはフェリーに向かって漕ぎだした。
すると……
「しつこいな!」
カイルはコボルトが射た矢を剣で払っていた。
「諦められないんだろうな、その宝は相当重要なものということか……」
海賊はフレアが持っている”グリフォン・ハンド”を見ながらそう言うと、
「私に任せておけ――」
フレアはおもむろに炎魔法を発動!
海岸で構えているコボルトを一度に薙ぎ払った!
コボルトたちは一目散に逃げだしていた、流石に諦めたようだ。
ボートはそのままフェリーへと接近、フェリーに乗り換えて海へと漕ぎ出すことに。
「バルファース! 久しぶりじゃないか、相変わらず宝探してんのか?」
海賊の名前はそう言うらしい。
「お前のほうこそ、何故”アーティファクト”を探しているんだ?」
バルファースは訊き返した。
「いや、いろいろとあってな……」
カイルは照れた様子で答えた。
カイルはこれまでの経緯を全部バルファースに話していた。そこへフレアが――
「海賊に何の話をしているのだ?」
バルファースは呆れた様子で答えた。
「手厳しいもんだ。
ご所望通りドミナントへ向かってやってるんだから、むしろ礼を言ってほしいぐらいだな」
言われてみればそれもそうなんだが。というわけで、今はドミナントへ向けて西へ進路をとっていた。
「にしても、まさかテメェで持ってた得物も”アーティファクト”だったなんてな、
世の中何があるかわからんもんだ」
バルファースはカイルの持っている”ドラゴン・スレイヤー”を見ながら言った。
「お前のほうこそ何故”アーティファクト”を?」
バルファースは答えた。
「そりゃあ海賊だからな、お宝を狙うのは当然のことさ」
と、バルファースは少々気障ったいような感じに答えた。
彼は海賊とは言うが、所謂賊っぽい服装はしておらず、
むしろどこかのいいところの家の人という感じの服装でしかなかった。
「言いたいことはわかる、言っても眉唾物の”アーティファクト”だからな。
だが、そんなもんは関係ない、物の価値は持っているやつが決めることだ。
あんたはそいつにどんな用事があるんだ?」
バルファースはそう得意げに言いつつ、フレアに話を促すが、
彼はそのまま首を振りつつ、一言言い残して去った。
「言っても”アーティファクト”だからな、
もちろんそれをわかってて狙っているんだったら俺がとやかく言うことじゃないな」
あいつはなんなんだ……フレアは話を聞いて顔をしかめていた。
「”アーティファクト”を狙っているってんなら”バンナゲート”にも行ってやるがどうだ?」
バルファースは舵を握りしめながらそう訊いてきた、ますますどういうつもりだろうか……
フレアはそう思っていると、カイルは言った。
「そこまでしてもらっていいのか?」
バルファースは調子よく操舵しながら答えた。
「お前のためじゃない、そっちの……美人には優しくするもんだ、ただそれだけのことさ」
いや、おい、そういうことかよ、カイルはコケそうになっていた。
「だけどそんなナリして”アーティファクト”なんて危なっかしい代物を狙っている理由っていうのも気になるな。
それに、さっきの魔法……そんじょそこいらの使い手が操るにはちょいと難儀な所業だ。
そのあたりから察するに――」
すると、フレアは答えた。
「今時、精霊族など珍しい存在ではなかろう。
第一、そっちの女性も精霊族だろう?」
それは、バルファースが連れている2人のうちの片方で、彼女も精霊族だった。
すると、その女性はバルファースと何やら話をし、互いに頷いていた。
「”ただの”精霊族だったらな。
だが、オルダが言うには、どうやらあんたは特別な存在らしい。
なら、そういう連中が有効活用すればいいんじゃねえのか?」
なんだって!? 一介の精霊族が自分のことを見抜いただって!? フレアは驚いていた。
「はい、あなた様はエターニスの手の者なのでしょう。
”アーティファクト”が必要であれば、ぜひともお持ちください」