とはいえ、相手はそれなりの知恵を持った魔物、道具を使いこなすだけあって戦い方も三者三様、バランスが取れていそうだ。
1体は大きな剣を持ち、もう1体は小振りな剣と盾を持ち、そして残りの1体は弓矢を携えている……人間でも普通にいそうな編成である。
さらに特筆すべきは揃いも揃って頑丈そうな鎧を身にまとっていること、
自らの力をアピールするかのごとく、人間の村から奪った代物か、そこいらの鉄板を力づくでひん曲げて鎧にしたものというような装いに3人は圧倒されていた。
見張りなのはもちろんだが、要衝を任されるほどの存在なのだから戦闘能力は確かなのだろう、苦戦は免れなさそうだ、ザードを連れてきたのは失敗だったか?
だが――
「このぉっ!」
なんと! ザードは既にいち早く飛び出しており、弓矢を携えたコボルトにいきなり襲いかかっていた!
「ざ……ザード!?」
カイルは驚いていた、ザード弓矢に当たるまい射させまいとしてどんどん距離を詰めてはそいつを軽く翻弄していた。
「流石は霊獣シルヴァンス・ウルフ……
お前は寝坊していたから見ていないだろうが、ザードの戦闘能力は侮れないものがあるぞ……」
フレアは既にその能力を目の当たりにしていたようだ、寝坊……カイルがまだ寝ている間に確認していたということか。
「タワケガ! コノクソガキ!」
と、盾を持ったコボルトは剣を振りかざしてザードに襲いかかった!
「おっと! ガキ相手に2対1だなんていくら何でも卑怯じゃねーか!?」
と、そのコボルトの前にカイルが立ちはだかった!
「ナラ! キサマモ地獄ニ落チルガイイ!」
ということは……
「つまり、貴様が私の相手ということだな」
フレアは静かに剣を抜いてそう言うと、大剣を持ったコボルトは答えた。
「フン、女ダカラト言ッテ容赦ハセヌゾ、覚悟スルコトダ……」
「安心しろ、もとよりそのつもりだ」
そうでなければ危険を犯してこんなところに入ろうとは考えない。
とはいえ、危険を犯してまで飛び込んでいるということはそれなりに勝算はあるからこそである。
「フレア!」
「お姉ちゃん!」
2人は合図した。
「フン、ナンノツモリカハ知ラヌガドウヤラココマデノヨウダナ!」
大剣を持ったコボルト、そう言いつつ振りかざすと、無防備なフレアに向かって……
「遅い……<フレイム・スパーク……>」
と、フレアの周囲に火炎が激しく飛び交う!
「ナ……!? シマッタ! 魔法カッ!」
「燃エルー! 燃エルー! 助ケテクレー!」
「ヒッ、ヒィィィィ!」
コボルトたちがもだえている中、カイルは調子よく言った。
「やっぱり大精霊様の魔法だなー!
この調子でちゃっちゃと回収しに行こうぜ!」
カイルはさらに奥へと進んでいった。それに2人も続く。
「わーい! やっぱりお姉ちゃんはすごいなー!」
「やれやれ、人使いが荒いな」
洞窟内を焼き払いながら突き進む3人、
壁の松明も払い落としながらさらに奥へと進んでいく。
「これじゃあどっちが略奪者かわかんねーな……」
カイルは呆れつつ松明の炎で布を引火出せていた。
「お父さんとお母さんの仇だ!」
そうだ、ザードにとっては仇だったか。
そして――
「2人とも! そこを右に曲がれ!」
と、フレアは促した、
ドラゴン・スレイヤーの時と同じく力を感じ取ったのだろう。
するとそこには――
「この先か……?」
カイルは息を呑んだ、薄暗いトンネルが奥へ奥へと繋がっているようだ、明らかに何かありそうだ――
奥へと行くと、そこにはいくつかの松明によって真ん中の祭壇が照らし出されていた。
そして祭壇に祀られているものはやはり……
「”アーティファクト”!? こんな風に置かれているってことはコボルト共はこれがなんなのか分かっているってことか!?」
と、カイルは驚きながら言うとフレアは頷いた。
「力こそ正義を謳うような連中だからな、
力に対する執着心があればこのように信仰同然のレベルで扱うこともあり得る。
それこそそこいらのパワーストーンでさえこのようにして祀っているケースも見かけるからこれもその一環に過ぎないのではないのか?」
ということはつまり、”アーティファクト”かどうかは無関係に祀っていることもあり得るのか。
じゃあ、これは? どうやら古の怪鳥の足を模した代物のようだが――
「確かにこれは”グリフォン・ハンド”、紛れもない”アーティファクト”の一つだ」
やっぱりそうだったのか! カイルは期待していた。
そして、フレアはそれに手をかけた途端――
「なっ、何!? 今の何!?」
ザードは身構えていた、大きな揺れを感じたのだった。
すると――
「うわあ!」
なんと、いきなり祭壇の隣の壁から爆炎が! カイルは咄嗟に身を引いた!