カイルは悩みながら訊いた。
「これ……逆ハーレムか?」
「一応そう言うことになるな」
カイルはその発言に唖然としていた。
そしてフレアはビールを飲むと――
「飲みすぎじゃねえのか?」
と一言……それに対して取り巻きの男一人がカイルを睨みつけた。
「さっきからうるせえぞテメエ! 姐さんに文句があるやつはこの俺が許さねえ!」
そいつに対してフレアはなだめていた。
「そいつは私を心配しにきたのだ、仲良くしてもらえないだろうか?」
男は悪びれた様子でカイルに握手を求めた。
「いやぁー、悪かったよ! 許してくれよな?」
「お、おう……」
2人で握手していると、フレアは改まった。
「どうしても私と飲みたいというものだから断る理由が見当たらなくってな……」
いや、なんで見当たらないんだよ――
変態吸血鬼とか変態コボルトとか、一定の男に対して散々イラついてたくせに――カイルは悩んでいた。
「お姐さん、”アーティファクト”の情報、お役に立てたかい?」
と、1人の男が言っ……”アーティファクト”だって!?
まさか、その情報を探すため!?
「まあな。
真偽はともかく、噂が広まるようなネタとしては何とも有益な情報だった、
そうして噂は広まっていくんだな」
……なるほど、”アーティファクト”を酒の肴程度のネタで話をしているに過ぎないのか、
彼女はなんとも世渡り上手だな……そういったあたりはつくづく感心する、
カイルの抱いている精霊のイメージとは酷くかけ離れていた。
精霊と言えば、もっとこう――浮世離れした不思議ちゃん的なイメージ……
なんだけど、その精霊は今、片手にビールの入ったグラスを持っている――。
「ま、そういうこったな。
ケルクスには昔から”アーティファクト”があるっていう話だけは有名なんだがな。
ただ、知っての通り見つけられたやつはいねぇ。
所詮はおとぎ話、そもそもあんのかっていう話にしかならねえわけだが、
一昔前までは一攫千金を夢見て探し回っている連中がいたらしいが今は御覧の通り、
そんな夢にすがってないで現実を見ろって言う教訓として言い伝えられているに留まっているのさ」
「それでもケルクスには”アーティファクト”があるって言われているけどな。
言ってもそれを言い張っているのはあくまで地元住民、
やっぱり昔ながらの地だから伝統を重んじているんだろ。
何せおとぎ話が実在した話だったにしても1,000年は経っているからなあ――」
「だな。
嘘とは言わねえにしても、流石に1,000年も経っていて、いつまでも同じところにあり続けるってのもなあ。
だって、それこそ”アーティファクト”だぞ?
んな大層なもんが本当にあるぐらいならそいつを巡ってデカイ戦が起きて、
時の権力者が独り占めしているに決まっているだろ?
だからこんな田舎にずーっと置いてあるのがおかしいのさ」
なんともマトモな話をする男連中だな――カイルは感心していた。
「さてと、そろそろ帰るか、世話になったな」
フレアはそう言いつつ立ち上がると、男3人が声を合わせて言った。
「ええ~、もう帰っちゃうの~!?」
「悪いな、門限が厳しくてな」
「も、門限か、そりゃ仕方ねえよな……」
レストランが締まるような時間でこんなところで飲んでる女が門限を気にするわけないだろ……。
「楽しかったぜ姐さん! 姐さん美人だからいつでも大歓迎! また一緒に飲もうぜ!」
男たちは何とも楽しそうだった。
「悪かったな、もう少しゆっくり飲んでいたかっただろう?」
帰り道、フレアはカイルに訊いた。
「ま、まあそうだけど……でも、久しぶりに飲めたから俺は満足だ。
それよりもフレアは何杯飲んだんだ? やたらと平気そうだけど……」
「1杯だ、そもそも酔うほど飲めないからいつもこんなもんだ」
おお、ギリギリ精霊様のイメージ……ということにしておこうか、カイルはなんか少しだけ安心した。
「ところで、”アーティファクト”の情報を訊きまわっていたのか?」
カイルは本題を切り出すと彼女は頷いた。
「アルコール臭いままザードのもとに帰るわけにもいかないから少し話をするか――」
それもそうだ。