次の日、2人は街道を進んでいると、なんだかおびただしい量の流血が見えてきた。
「なんだこれは!?」
そこへフレアが……
「これは獣の匂いだ――」
まさか、何者かが魔物に襲われて!?
「カイル! 森の方へと伸びているぞ!」
フレアはそういうと、カイルは懐の剣を抑えた。
「行こう!」
急いでいく2人、だが、そこには魔物の姿はなく、
まるですべてが終わった後という感じであった。
「一足遅かったか」
「くそっ、魔物め――」
どんどん森も深くなっていくようだが、終わりはすぐに見えてきた。
「フレア! あそこだ!」
2人はその場に慌てて駆け付けたが、そこにあったのは――
「ん? なんだこれは!?」
カイルはそこにあった死骸の隣までやってきた。
よく見たら、それは人間の形を成していない。
それはむしろ――
「カイル、これは人間の血ではない、この獣の血のようだ――」
あっ、本当だ、カイルは気が付いた、どう見てもその獣の流血のようだった。
するとカイルはとんでもないことに気が付いた。
「あ! こいつ! こいつはガルトゥースだ!」
なんと、本当か!? フレアは訊いた。
「言われてみれば確かにこいつはヘル・ハウンド種のようだが――」
特徴的なのはなんとも物騒で気性の激しそうな褐色の毛並みと口の中からむき出し気味の牙、
そして、こいつを”隻眼のガルトゥース”と決定づける右目を掻っ捌かれたような大きな傷、
そしてそいつが腹から大量の血が流れている――間違いない、ガルトゥースが何者かによって殺されているということだ。
「なんてこった、先を越されたか。
もっとも、事件が解決してりゃあそれはそれで――」
カイルはそう言った。確かに、事件がすでに解決しているのであれば言うことないが、
それでも先を越されたのはハンターとしては少々悔しい気もした。
だが、しかし――
「カイル、これはただの人間技という感じではないようだ。
見ろ、これ……」
フレアはガルトゥースの死骸に刺さっている矢を取り出した。
「なんだ? でも、道具を使っているようだけど……」
この矢が致命傷となったのは間違いなさそうで、深く食い込んでいた。
道具を使っているのだから人間技で間違いないだろう……と思うところだが、
「このご時世、人間技にしては妙に原始的すぎる道具だ」
いわれてみれば確かに、何だか知らないが妙に粗削り感満載な矢だった。
なんというか、矢の先端はナイフなんかで適当にとがらせた、文字通りの粗削りな代物でしかなく、
こんなんでよくもまあ刺さったもんだと言わんばかりの精度の低い代物だった。
とはいえ、刺さったら刺さったでそれは痛いことは間違いないのだが。
すると、カイルは再び気が付いた。
「フレア! これはコボルトの仕業だ!」
あっ、そうか、フレアも気が付いた。
「そうか、コボルトがいるといったな、つまりは連中の仕業か」
コボルトは狼系亜人種、狼人間のようなものといえば理解がしやすいか、
それなら曲がりなりにも道具を使いこなせるハズ、つまりは連中が縄張り争いのためにこいつを破ったということに……
「しっ、静かに――何か聞こえる……」
と、フレアは何かが聞こえたようでカイルにそう促した、なんだろう……カイルは不思議そうにしていると、
フレアは森のさらに奥へと行った。
「そこで待ってろ」
フレアはカイルが何か言いだす前にそう言い残していった。
なんなんだ……カイルはそう思いつつ、待つこと3分後――
「こんな小さな狼が奥で震えていた。
こんな状態だからな、連れて帰ってもいいか?」
その狼ははるかに小さく、フレアの胸の中にすっぽりと納まるほどの体格だった。
確かに、なんというか震えているようだったのでとりあえず連れて帰ることにした。
だがその狼、カイルはすぐさま気が付いた。
「なあフレア、その狼ってもしかして――」
そう、その狼は特徴的なものが備わっていた、それは……
「ああ、この銀の毛並みは間違いない、シルヴァンス・ウルフの子だろうな」
そう、つまりはそういうことである。
戻ってきた2人は早速家を展開、狼を保護した。
昼食は昨夜の残りなのだが、狼は先ほど震えていたのはどこ吹く風か、
一心不乱に食べていた。
「おいおいおい、こいつ、どうなっているんだよ……よく食うなぁ」
「こいつもお前にだけは言われたくないと思っているかもな」
そう言われたカイル、身に覚えがあった。
「そっ、それは……いやいや、かたいこと言うなよ!」
カイルはごまかそうとしていた。
「にしても狼なのに肉以外も食べるんだな」
「シルヴァンス・ウルフだからな」
「霊獣の類、人間とかのほうに近いってことはそういうことになるわけか……」
カイルは納得した。
「つまり、カイルも狼のように食うと、今の会話内容もきちんと理解しているハズだ」
なっ!? カイルは驚いていた、マジかよ、ウソだろ……!?