ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第3章 真に邪悪なる存在

第32節 ランゲイル上陸作戦

 お城が崩壊し、後処理に追われていた兵士やそのほかの臣下たち。 大臣テザンドの目論み通りにならず、お城の倉庫の不正なブツは暴かれた。 ジェラレンドもこのことは想定していたのだろう、ということはテザンドを見放していたということかもしれない。
 言っても、ヴィラネシアは”七魔性聖”でも強豪組と呼ばれる存在、 テザンドごときにやられるハズもなく、それぐらいは流石のジェラレンドも見越していたハズだ。
「このコンテナ1つだけでも目測だが、末端価格にしておよそ1億ローダってところか――」
 ハンターの1人がそう言った、まさに闇金――

 あの場はワイアンドに任せることにしたライズたち、 なんといってもヴァルナジア出身の賢者様ということもあり、この地方の民衆からの支持も厚い。 だから、たとえお城が崩壊するなんてことになっても賢者様の包容力で民衆を何とかしてくれるハズだ。 本当はお城が崩れないこと前提で連れてきたハズなのだが、こうなっては仕方がない。
 そして次なる問題は――
「残念だが、ザールの旦那はザマドスと刺し違えたようだ――」
 クオラールから残念なお知らせが。
「そうなのか? でも、あんたたち、斃されたハズなのにピンピンしていたよな、それは?」
 ライズは訊くとクオラールは答えた。
「斃されてなんかねえよ。 俺もザールも身代わりにハンター共の前に自分の分身をおいて逃げ出しただけだ。 俺もそうだがそもそもハンター共と一戦交える気もねえが、お前たちはしつこいからな、 だから死んだって既成事実を作って逃げられりゃあ俺はそれで十分だ」
 な、なるほど――ライズは反省するしかなかった。
「だが、今回は流石にそう言うわけにもいかず、ザールの旦那はそのまま――」
 それは残念だ。

 気を取り直して次はランゲイル島、あそこにたどり着くにはそう簡単ではなった。
「よし! 戦闘準備だ!」
 クオラールは方舟を巧みに操り、方舟に搭載している重火器を装填した。
「えっ!? ちょっと、どういうことだよ!?」
 ライズは困惑していた、いきなり戦闘準備って?
「あそこの島に上陸するにはちいっとばかし厄介なやつがいるのさ。 でも、殺したりはしねぇから大丈夫さ! なっ、お嬢!」
「ええ、ちょっとだけ痛い思いするけれども、すぐに幸せにしたげるわ……ウッフフフフフフ――」
 フェリンこと、ヴィラネシアはお色気モード全開の状態でスタンバイしていた。 なんだか波乱の予感がする――ライズは息を呑んだ。
「なっ、何がいるっていうんだ!?」
 ライズはブリッジの窓を眺めていた。 方舟の重火器はランゲイル島の一番高い建物の一番上を狙っていた―― すると、そこから何かが急に飛び上がるとこちらに襲い掛かってきた!
「まさか――聖獣に喧嘩を売ってたんか!!?」
 そう、ランゲイルに上陸するための邪魔なヤツはまさかのランゲイルの聖獣”イーグルガン”だった。 あいつのせいで”七魔性聖”の候補とも呼ばれていた――ヴィラネシアの同胞も何人か敗れていったという。 とはいえ、同胞と言ってもだいたい本当に悪さをしていたやつばかり、 そういうやつらはやられても仕方がないって感じがするが、そうでもない者のことを考えると――
 そして、そのイーグルガンはランゲイルに侵入しようとする”七魔性聖”を片っ端から排除する―― 聖獣なのでそれ自身は普通の行動である。
 しかし、まさか今回はどうしても手を出さないといけないだなんて――
「”七魔性聖”共め、この島は私が守る! お前らの好きにはさせん!」
 イーグルガンの声が聞こえてくると、クオラールは愚痴をこぼしていた。
「あんにゃろ、自分の島の中にとんでもないバケモノを抱えているとも知らずに……」
「言ってもムダよ、あの”ボウヤ”には”七魔性聖”の声なんて聞こえやしないのだから。 でも、今日からきちんと聞こえるようにしてあげるわ。 さあ、あの”ボウヤ”を軽く痛めつけてやりなさい」
「はいっ! 仰せのままに!」
 マジか――ライズは今の自分がいる場所に対して後悔していた。

「まずは小手試しといこうか!」
 クオラールは巧みに方舟を操作し、”ボウヤ”に重火器による射撃を浴びせた。 ”ボウヤ”はそれをひらりとかわすと、今度はこっちに向かって自分の翼の中に忍ばせている重火器から射撃をし返してきた。
「ふん! やるじゃねえか! あのアホウドリ!」
 クオラールも負けてはいない、方舟を操作して”ボウヤ”の攻撃をかわした。
「もう少しもんでやるぜ!」
 クオラールは再びイーグルガンに攻撃を仕掛けたが、結果は同じだった。
「喧嘩を売るのはいいけど、劣勢じゃないか?」
 ライズはそう言った、もちろん劣勢である、でなければこの島にはとっくの昔に上陸できていたほどだという。 つまり、クオラールはこの島には来たことがないということである、なるほど――ライズは納得した、けれども――
「じゃあ、今の状況ってやばいんじゃないのか!?」
 クオラールが得意げに言った。
「いいや、こいつはただの茶番の余興! 本番はこれからだぜぇ!」
 クオラールは方舟を操作し、操縦席から立ち上がると自分の刀を引き抜いた。