ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第3章 真に邪悪なる存在

第31節 消えた黒幕

 無論、それだけでは終われないので、やつのバックにいるジェレランドの手がかりをつかむため、次は大臣の部屋へと急いだ。
「お前たちはよくやってくれた」
「なっ、なんだ、こいつは!?」
 そこには黒いフードとマントをまとった全身黒ずくめの男がいた。 その背後には一面鏡張りの壁が不気味に光っていた。
「あんたは確か、ズ……なんて言ったっけ」
「ズイークだ。でもまあ、ヴィラネシアほどの女に名を一部でも覚えてもらっているとは光栄だな」
 こいつはズイークって名前なのか。
「覚えているも何も、あんたは”六星魔剣聖ギガデイオン”の取り巻きのハズ、なんでジェレランドのもとにいるの!?」
 ”六星魔剣聖ギガデイオン”、そいつは”七魔性聖”の一人で、 後から”七魔性聖”に認定された存在だが、現状の”七魔性聖”の中では最強格に属しているとされる存在である。 ”七魔性聖”では”審判のナムキアソ”が最強と言われているハズだが”審判のナムキアソ”はギルドとしては気まぐれ判定、 まあ、それについては話した通りなのでそれについてはいいことにしよう。
 しかし、”六星魔剣聖ギガデイオン”はそれこそ本当にヤバイやつで、 異質な”審判のナムキアソ”を覗いたら間違いなく最強の”七魔性聖”といえる。 そんなやつの手下が何故そのジェレランドの手下のところに?
「ふっ、私はテザンドとは違い、はじめからキサマがヴィラネシアだと知っていたよ。 とはいえ、それをテザンドごときに教えるほどのことではないから黙っていたがな」
 仲間同士で意地悪なやつだな、ライズはそう言うと、
「仲間? ふん、笑わせてくれるな。 やつとはただの協力関係……だが、その協力関係も死んでしまえばもはや意味をなさぬがな」
「じゃあ、なんのためにここにいるのよ?」
「言っただろう? ただの協力関係だ、だから単に協力していただけだ。 ジェレランドはこの世界を自らの闇の力で支配する、 しかしギガデイオン様は世界を支配するなどということに興味は持たぬ、 ただ強いやつを求めてひたすらそこいらの強者気取りを潰してまわっているだけだ」
「あら、案外弱いものイジメがお好きなのね、あなたの主は」
「嘆かわしいことに、主を超えるほどの強いものがいないだけだ、つまり、今もなおお嘆きになっているところだろうよ。 そこへきて、キサマが最近暗躍していると聞いたものだから、ここへきてただ確認しに来ただけだ」
「そう――結局、ギガデイオンはこの私をご指名ってワケね」
「あのギガデイオン様ほどの方がお手を煩わせた相手がキサマしかいないものでな、 そして、お前が生きていると知れば――どれほどお喜びになるか!」
 すると、ズイークはいきなり片手を天に仰いだ!
「なんだ、やる気かっ!?」
「……いや、今回は視察に来ただけだ。そもそもここでヴィラネシアを傷つけてしまってはギガデイオン様に申し訳が立たぬ。 それに私も、特にお前のようなハンター風情の弱者とやりあうのは好まんのでな、だから――今日のところはこれで引き上げだ!」
 ズイークは強烈な魔法を自らの周囲に降り注がせた! それにより、背後にあった鏡が砕け散った!
「私の役目はこれで終わった! では、さらばだ!」
「待てっ! 逃がすかっ――」
 しかし、ズイークはいずこかへと消えて行った。

 さて、どうしたものだろうか、これでジェラレンドの手がかりは――
「どぉら、ジェラレンド、でてきなさぁい♪」
 するとフェリン――いや、ヴィラネシアは割れた鏡の破片を一つつかみ、 それを額の近くに寄せ、目を瞑り、何やら念じていた。
「ん~、なるほどなるほど、ここは――」
 何をしているのだろうか?
「小さな島の国、大きな建物がたくさん見えるわ。その中にある一つの遺跡に大きな穴――」
 そして彼女は持っていた破片をその場に投げ捨てながら言った。
「この鏡は邪悪を映し出していた、邪悪というのはジェラレンドね。 その思念をたどったら、ランゲイル島にいることが分かったわ」
 フェリンはそう言った。急にヴィラネシアから戻った。 小さな島の国で大きな建物がたくさんといえば確かにランゲイル島だな、ライズはそう思った。
「以前もあの島で暗躍していたわね、あいつ……。 やっぱり、あいつはあの島の力に引き寄せられるんだわ――」
 以前ってことは、それこそ昔の代のヴィラネシアの頃のことか。 それで言うと、つまりジェラレンドも同じ性質であるということか。
「知っているかもしれないけれども、あの島は大昔に邪悪を封じていたっていう遺跡があるのよ。 邪悪はとある遺跡の大きな穴から現れたって言われているから、そこが一番怪しいわね」
 そう言われてみれば――ランゲイル島のその話についてはライズも知っていた、 確かに、かつては邪悪を封じていた島だとされているのだ。 すると、急に城が揺れ動いた――その後に地響きが!
「なんだ!? 地震!?」
「いえ、この揺れは人為的なもの、それに――下から強い魔力を感じる――」
 下のほうから強い力? 下といえば謁見の間があり――まさか――
「こうなれば、死なばもろとも……だ……っ!」
 テザンドだ! 道ずれにする気だ!
「きゃっ!」
 フェリンはよろけ、ライズにしがみついた、これは流石に喜んでいる場合ではない。
「フェリン、脱出するぞ!」
「う……うん!」
 途中、ワイアンドが地震のせいで城の入り口付近で平衡感覚を失っていたけれども、彼もなんとか助けつつ、3人で脱出した。 こうして、ヴァルナジア城は崩壊してしまったのだった――