ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第3章 真に邪悪なる存在

第28節 ヴィラネシアとジェラレンド

 フェリンの本質はそもそもいい人間のつもりなのだろう、それがたとえどんな悪い女を気取っていても。 それはメレア姫と顔を合わせたときに感じたこと、あの時の彼女の目の輝きと表情、ライズは絶対に忘れられない。 フェリンとしても、あのメレア姫の顔と同じ顔をした人間なのだから、 あの顔でがっかりされることをしたらいけないのだと考えているのだろう。
「で、でもさ、その割には――その恰好はやめないんだな」
「辞めるわけにはいかないわ。だって、私は”妖艶のヴィラネシア”なんだから、それを外すことはできないのよ」
 ”七魔性聖”のメンツを保つのも一苦労のようである。
「それに、ライズだってこの恰好はやめてほしくないでしょ♪」
 そうだな、ずっとその恰好でいてくれたほうが嬉し――いや、いやいやいや!  そんなことは――ドスケベ変態エロライズは混乱していた。
「そ、それよりだ、”七魔性聖”の一部?  って、なんていうか、あんなウロボロス・ドライブみたいなやつを隷にしているんだよな!  フェリンにも隷というのがいるのか?」
 フェリンは得意げに答えた。
「うっふふふ、もちろんいるわよ。 それに、私の隷はほかのどの”七魔性聖”よりも最強なのよ♥」
 そうなのか、それはすごいんだな。ちなみにどのようなやつなのだろうか、ライズは訊くと――
「うっふふふ――知りたいのね、いいわ、教えてあげるわ――。 私の隷は、この世界に住まうすべての男たちよ、ウフフフフ――」
 な、なんだって!?
「だって、私は”妖艶のヴィラネシア”だもん、そんな女が操る隷っていったら決まってるでしょ?」
 確かに――言われてみればなるほどだな。
「だからヴィラネシアには、自らの身体を相手の男の理想に変えることができる特殊能力を持っているのよ。 例えばこの胸だって、標準の大きさはこのサイズだけど、あなたが望むのならもっと大きくすることだってできるのよ?  胸以外ももちろん、例えば顔だって――どうして生まれつきメレア似の顔なのかわかんないんだけど、 別人を装うためにある程度変えることだってできるのよ? ふふっ、せっかくなら見てみる? ウフフフフ――」
 ライズは息を飲んだ、そして、そのままフェリンに取り込まれ、そのまま幸せな思いをすることとなった。 意識が気が付いたのは30秒後ぐらいだった。
「つまりそういうこと。創造主が何を思って私をこんな身体にしたのかわからないけれども、要はそういうことよ。 男の理想になり、そして妖艶な気を常に保ち続けることで、ありとあらゆる男の下心を引き出し―― まあ、稀に効かない男もいるけれども、それからその下心を増幅させ、 理性を破壊された男は本能の赴くままに――この私のための生ける屍としてその身をささげることとなるのよ。 ハンターたちに倒されたザールもクオラールも――まあ、何とか生きていると思って助けてあげたんだけど―― ふふっ、その時はさすがに心も隙だらけだったから、この私を感じさせてあげて、私の隷にしてあげたのよ――ウッフフフフ――」
 つまりは今ではそのザールもクオラールも彼女の仲間―― いや、この女にとっては隷――怖い女だ、逆らわないほうがよさそうである。
「とはいえ、ただのブ男は好みじゃないし、それが悪漢だなんて言ったら最悪よ」
 レサレフトでの悪漢の一件でも彼女の力でねじ伏せられたことを思い出したライズ、 手を出した女がまさか”七魔性聖”だったなんて目も当てられない悪夢であるとは想像に難くない。
「当然、情け容赦なくこの力を振りかざすのもジェラレンドと大して変わりないことになるから、さすがに控えているわね」
 うん、それこそ力を持つものの鏡だ! 素晴らしい! ライズはそう思って頷いた。
「あとはこのハーハラルの住人達も私の隷ね、この人たちはもともと私の隷として生を受けているのよ、 まあ――ヴィラネシアとセットで生まれ出たってところね」
 そう聞くだけでフェリンはやっぱりただのこの世界の住人ではないということがわかる。 いや、身体つきを変えることができる時点でもはや違う生き物なんだが。

 大臣ルーム――
「あの女がヴィラネシアだったとは!?」
 テザンドは驚きを隠せなかった。それに対してザナルガスが指摘。
「見抜けなかったのか? それとも、ヴィラネシアの色香に惑わされたか?」
「あの小娘め、謀りおったな!」
 しかし、それよりも連中が気になっていたことがあった。 それについて話を始めたのはテザンドだった。
「それよりもザナガルス、どうなっているんだ? 例の計画は進行しているハズだが?」
「わかっているが、どういうわけか効果が見込めぬのだ。 一部では効果が発現したことを確認しているが、それは海の上のほんのごく一部、それ以上は――効果が見えぬのだ」
「ふん、結局しくじったということか、まあ――貴様らは所詮はその程度だということだ――」
 と、ズイークというやつは言うが、テザンドが反論した。
「何を言うかズイーク! そもそもキサマのせいでこのような事態になっているのだろう! 忘れたのか!  我らが主の隷の一部である”カタスト・アルゴリズム”がナムキアソによって破壊されたことを!」
「あれはあの女がそれほどの能力を有していることは想定になかっただけのこと、私の責任ではない」
 さらにザナルガスもズイークに反論。
「何を言うか! あれを失ったおかげで我らの計画がだいぶ遅れているのだぞ!  そのことを考えてもなおそのような世迷言をほざくか!」
 すると、その我が主たるジェラレンドは怒り、メンバーの頭上から激しい雷を落とした!
「黙れ! 何を仲違いしておる!  もはや過ぎたこと、それに、ヴィラネシアの目的はこの我だ。 計画は進行しているようだが、どうやらうまくはいっていないようだ――」
「そっ、そんな! 効果がまだ十分ではないのでしょう、ですから――」
 ザナルガスはそういうが、ジェラレンドは話を切った。
「いや――それについてはもう諦めるしか無かろう、 お前たちはよくやってくれた、だがそれはやり過ぎだったようだ、 そのせいでこの世界の管理者とやらに手を打たれたと考えるほかあるまい」
「世界の管理者? 精霊共が何かをした、ということでしょうか?」
「そういうことではないが――まあよい。いずれにせよ、ヴィラネシアを何とかせねばならん。 ヴァルナジアに蓄えてあるものも投棄するしかあるまいな、テザンド――」
「そ、そんなことは! でしたら私にお任せください、必ずやあの女を――ヴィラネシアを片付けてみせましょう!」
「ふん……まあいい、お前に任せることにしよう」