「私はヴィラネシア……”妖艶なヴィラネシア”としてこの地に生を受けた。
この世界を脅かすものって言われているんだけど、私はそもそもそんなつもりで生きていないのよ。
ただ、友達と、フィラリナと一緒に仲良く暮らせればいいなと思っただけなのよ」
それなのに、ジェラレンドをはじめ、一部の”七魔性聖”という存在がこの世界をかき乱そうとしている。
「それに我慢が出来なくて、私とフィラリナはあいつらを食い止めることを考えたの。
だけど、フィラリナは力を発揮するたびに辛くなってくるし――」
フェリンはさらに話を続けた。
「実はそれだけじゃないの。
ジェラレンドが操っていた隷のウロボロス・ドライブのように、
ほかの一部の”七魔性聖”もそういうのをそれぞれ持っているわ」
それは――だとすると、この世界はやばいんじゃないのか?
「でも、それを食い止めたのよ、あなたのお母さんが! フィラリナが! ナムキアソを発動して!」
そういうことか――ライズは、てっきりナムキアソが自分の故郷を灼いたもんだと思っていた。
だが、フェリンから聞いた現実は違うようだ。
フェリンが言うには、ジェラレンドが隷を発動してライズの故郷を灼いたのだという。
それによってあたりは火の海――ライズの脳裏に焼き付いているのはその光景だった。
だが、ライズの母フィラリナはナムキアソを発動すると、ジェラレンドの隷を破壊した。
それによって火の海となった範囲はライズの故郷だけに留まったのだというが、
その代わり、フィラリナの生命は――
「ナムキアソにはジェラレンドをはじめとするいくつかの”七魔性聖”の隷をことごとく破壊するように暗示されているの、
だから――それに反応しないのはウロボロス・ドライブとかごく一部の限られた隷のみ、
つまり、あいつの手駒は限られているってこと、だからあいつにとってもナムキアソはよろしくない存在ってことなのよ。
あれが未だに暴走し続けている光景なんて、友人の私としてもあんまり気持ちのいいもんじゃないけど、
それでも、フィラリナが残してくれたものだと思って、あれを頼ってジェラレンドたちを倒したいのよ、私は」
フェリン――いや、ヴィラネシアは拳をぐっと握りしめていた。
話は一旦区切りをつけ、ライズとフェリンは再び例の一軒家へとやってきた。
「ふふっ、ここでの出来事、茶番だったわよね。
ここで倒したあいつなんだけどね、あいつはただの”七魔性聖”気取りの連中の一部よ。
でも、あいつには私はあんな風に映っていたんだね。
そうね、確かに悪い女を気取って結構あちこちに幅を利かせていたのも私自身なんだけどさ」
確かに――ヴィラネシアと今のフェリンとは性格がえらくかけ離れた人物だった、
悩殺的で男心をくすぐるようなところは共通しているが。今話をしているのはフェリンではなくヴィラネシアか。
ある種の二重人格というやつらしいが意識は共通しているらしい、ただ感性というか価値観というか、それだけが異なっている状態らしい。
「まあ、私はヴィラネシアだからね、例えフェリンであっても次期ヴィラネシアとなるべくして生まれているわけだし。
力を誇示してまで悪者に幅を利かせるのならこれぐらいはしないといけないなんて思っててね、その効果は絶大だったみたいだけど。
けど、フェリンって娘は本当は白馬の王子様に連れ去られ、そんな男と一緒になりたいだなんていうのが好きな、
その辺にいる女子とそう変わらないのよ。
もっとも、ここだけの話なんだけど、そもそも私自身がそういう女だったんだけどさ。
言ってしまえばヴィラネシアは”妖艶なヴィラネシア”なんて謳ってるけど、本当はただの女の子でいたい存在だったのよね――」
そうなのか、ライズは考えた。
「けど、どうやらフェリンの興味はどうやらアンタにいってるみたいね――
なんて言ったらフェリンに怒られそうだけどさ」
いや、意識は共通なんだろ、筒抜けなんじゃ?
「だからアンタにお願いがあるのよ、この私……いや、フェリンのこと、アンタに託したいのよ――」
そ、それは――ライズはテレていた、ライズとしてもそれには異存はなかった、
普通に彼女のことが好きすぎる、可愛いし優しいし――
「ふっ、まあいいわ、それは2人の間で決めなさいな。
それよりも私はとにかく、まずはテザンドやジェラレンドの企みを止めるつもり。
その後はもちろんほかの連中の企みも止めるつもりでいるわ。あなたはどうするの?」
ライズは態度を改めて話した。
「俺はまずフェリンに、ヴィラネシアにも謝りたい! ずっと、ずっと、憎い敵だと思ってたんだ!
でも、本当はヴィラネシアはいいやつだったんだ。
それに、フェリンだってとってもいい人だしさ、悪いことをするような人だと全く思えないよ。
だから、今まで誤解していたことに対して、謝りたい――」
だが、ヴィラネシアは面倒くさそうに答えた。
「そんなことしなくたっていいわよ、私だって”七魔性聖”の一員としてこの世界に存在しているんだからさ、
そのぐらい誤解されたって仕方がないし――」
そうは言うが――とはいえ、本人としてはそれぐらい自重していることの現れなんだろう、ライズはそう思うことにした。
ライズは再び改まった。
「俺もテザンドの企みを止めたい。そしてジェラレンドの野望も止めたいんだ!
だから、俺はフェリンと一緒に行きたい! だから、その、これからも一緒に――いいかな?」
それに対してフェリンは喜んでいた。
「本当にいいのね? じゃ、じゃあ――これからも今まで通り一緒にいてもいいのね!?」
というより、むしろライズからお願いしたいぐらいの気持ちだった。