ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第3章 真に邪悪なる存在

第25節 真実

 ここからハーハラルへ行くとは――かなり距離的に遠すぎる気がする。 それこそ、ワイアンドをしばらく放っておくことになるのだが――
 しかし、エルカトーネへ向かう途中、見覚えのある姿が!
「お、おいでなすったな! 待ってましたぜ、お嬢様!」
「待たせてごめんね、クオラール!」
 そう、そいつはまさかの陽炎のクオラールだった! ヴィラネシアとつながっているのか!? ライズは身構えた。
「ん? この男も一緒ですかい?」
「そうよ、一緒よ。とにかく、早いところ行っちゃって!」
「お安い御用でっさ! では、さっそく行きますぜ!」
 ライズとヴィラネシア――フェリンはクオラールに連れられると、そこにはよくわからない建物へと入り込むことになった。 その後、その建物はどういうわけか空へと飛びあがり、ハーハラルのほうに向かって飛んでいった。

 ハーハラルへ到着後、クオラールと一旦別れ、2人はハーハラルの神殿の中へと入っていくことになった。 ハーハラルにいる人たちは、みんなフェリンに向かって深くお辞儀をしていた。
「みんな、ヴィラネシアだってことを知っているってことか?」
「そうよ。そもそもハーハラルの住人は全員私の隷さんたちだからね。 今みんなにやらせているのは守護の儀式、一部の”七魔性聖”の行動を制限しているのよ」
「制限? そうなのか?」
「私はあなたが思っているほど悪い存在じゃない、 それを伝えたかったんだけど、どうしたらいいかわからなくって――」
 フェリンは思い悩んでいた。

 さらに神殿の下層のほうへとやってきた。そこにはライズも見慣れないような妙な機械がたくさんあった。
「これらはすべて医療用のベッドなのよ。 この機械の中には”生命維持装置”と呼ばれるものがあってね、何とかして命をつないでいる人もいるのよ」
 それってことはつまり、人助けをしているってことか?
「その中でも、一番深刻な方があの部屋の中にいるのよ――」
 さらに奥のほうに扉があり、その中にその方がいるという。
「さあ、行ってあげて――」
 行くって、俺が行くのか? でも、俺が行く理由は何故? ライズはそう訊くとフェリンは暗い表情で答えた。
「行けばわかるわ――」

 ライズは言われるがままにその場へと赴き、扉を開けた。 扉の中には2人のヴィラネシアの隷がいたが、そいつらも席を外した。
 そして、ライズはその重篤患者のもとへ駆け寄ると、そこには彼が予想だにしない光景が!
「うっそ……だろ……!? まさか、まさか母さんだってのか……!?」
 間違いないこの顔、母さんだ! まさかヴィラネシアは母さんを助けてくれたというのか!?  ”七魔性聖”だというのに!? ライズは驚いていた。
 しかし、彼の声でその重篤患者は目を見開いた!
「母さん! 俺だよ俺! ライズだよ!」
 彼女は優しく微笑んだ。ははっ、間違いないや、間違いなく俺の母さんだよ――ライズはなんだか安心したようだった。 あの時のあのままの姿で母さんは生きていたんだ、なんだか信じられなかった。
「ライズ……私の、ライズ……」
 母さんは名前を呼んでくれた。母さん、俺だよ! 大きくなったんだ! ライズは興奮していた。

 家族水入らずの時間の後、ライズは神殿の外へと出てきた。 そして、ベンチの上で座って待っていたフェリンの元へとやってきた。
「フェリン、俺は――」
「うん、ここに座りなよ、ライズ――」
 促されるままに彼はフェリンの隣に座った。
「大丈夫?」
 大丈夫って言われると、あんまり自身はなかった。 あの後、母さんは何も語ることもなく眠りについたのである、と言っても亡くなったわけではなかった。
「うん、隷さんたちの話では、あの命を生き永らえさせるのは厳しいって言ってたから――」
「いや――でも、むしろこれではっきりしたよ、ヴィラネシア―― つまりフェリンは、俺の母親を助けてくれたんだなって」
「ええ、フィラリナは私の同志であり大の親友、助けないなんて選択肢はどこにもないわ」
 フィラリナ――!? 親友!?
「ややこしいんだけど私たちの身体ってちょっと特殊でね、 私は”ヴィラネシア”っていう役割を与えられてこの世界に大昔の時代から生きているのよ」
 え、昔の人間!? ライズはさらに聞いた。
「厳密に言うと、”ヴィラネシア”という存在がその都度その都度生まれ変わって存在しているってこと。 つまり、私は何代目”ヴィラネシア”っていうことになるわけよ」
 代を重ねて存在しているということか。
「もちろん、私は古の時代の”ヴィラネシア”の意識を踏襲しているけど、 でも、今の”ヴィラネシア”はこの私”フェリン”の意識と一代前の”ヴィラネシア”の意識が混在している存在―― つまり、それが今の”ヴィラネシア”ってわけね」
 なんだかややこしい存在だな。
「ちなみに、”フェリン”の意識が生まれたのはまさにライズ、あなたが生まれた頃と同じ時期ね。 ついでを言うと、これはあなたのお母さん、つまりフィラリナも同じ特徴を持っているのよ」
 なんと! そうなのか!? だが、ということは――彼女の仲間ということは――
「ええそう、フィラリナもまた私と同じ”七魔性聖”ということになるわね」
 やっぱり! ライズは半ばパニックになっていた、自分の母親が――”七魔性聖”だなんて――
「で、でも! 俺の母さん――つまり、”フィラリナ”が”七魔性聖”だなんて話、聞いたことがないぞ!?」
 フェリンは頷いた。
「ええ、それはあくまで”七魔性聖”としてこの世界で恐れられるハズの存在になるような力を持っていたということに過ぎないからね。 つまり、彼女の能力や身体は私と同質――言うなれば、”七魔性聖”候補と言えば理解が早いかな?」
 しかし、それを真に受けたとしても、どうして母さんがあんな重篤なのかということ、 ”七魔性聖”候補にしてはあまり説得力がないような――
「それは……あなたにはとっても言いにくいんだけど、彼女が重篤…… 身体の機能不全を起こすことになったのは何を隠そうナムキアソを発動したからなのよ」
 ……なんだって!?