金のためとはいえ、こいつは誰でも殺す非道の暗殺者だ。
とはいえ、ライズもこの程度のやつに殺されるつもりはない!
ライズだってハンターだ、殺しのプロとしては劣るが、戦闘能力では負けていないハズだった。
「少しはやるようだが――その程度で俺は倒せんぞ!」
暗殺者は背後のほうへと後ずさると、そのままライズを挑発した。
「さあ、かかってこい」
上等! ライズは暗殺者に向かって突進した!
「喰らえやあ!」
しかし、それが罠だったとは――
「うん!? なんだこれは!」
原始的な罠、投網。上のほうから投網が降ってきて、ライズの身体に絡まった! しかもこの網は――
「こいつはエーテルネットってやつだ、しかもシルグランディア特製の代物なんだよな。
この網の効果で魔力を遮断することも造作もないこと――これで貴様はもう終わりだ。
だからまずはこの女、お前を先に始末してやろう――」
フェリンの魔法まで使い物にならなくのか! まさに絶体絶命! このままでは――
「そう、私を先に始末することにしたのね――」
「ああ、そういうことだ。そこの男、この女が死にゆくさまを見ていろ!
お前もこのような運命をたどるのだ!」
だが次の瞬間、フェリンの身体からとてつもない魔力の渦が発生し、
その場にあったすべてのエーテルネットが破れた!
「なっ、なんだこの力は! この女、何をしたんだ!?」
ライズも暗殺者も吹き飛ばされそうだった。
そしてその後、2人の目の前にはとんでもない光景が広がっていた!
「うっふふふ――その男よりも先にこの私を殺すですって? いいわよ、やってみなさいな、やれるものならね!」
ま、まさかそんな、そんなことって――ライズは愕然としていた。
ライズはその光景を見て、正直どうしてよいのかわからなかった。
そりゃあそうだ、彼があの時助けたメレア姫似の女の子フェリン、
それがまさか――彼女は今、”妖艶なヴィラネシア”の姿をしている!
今までのフェリンの服装はすべて透けたシースルーの生地へと変化し、ものすごくセクシーな姿が映えている――
それだけではなく、ライズがあの時買ってあげた頭に縛るゴムとシュシュ、
それが今、ヴィラネシアの長い髪をきれいにまとめ上げている! どうなっているんだ!
「さて、あなたの望みはこの私を殺すことでしょう?
どうやってこの私を殺すつもりなのかしら? 教えてごらんなさいな♪」
暗殺者もさすがにその光景には圧倒されたことだろう、今までの冷静さを欠いていた。
「そっ、そんな――普通の娘なら訳ないし、ハンターの女だって望むところだ。
王族の姫だってそれなりに積めばわけないのだが――でも、
それでもだ、それが”七魔性聖”だなんてのは聞いてないぞー!」
ライズとしても同感だった、そんな話は聞いていない――というか、これが冗談だったらなんて悪い冗談なんだろうか。
「ふふっ、それじゃあそっちから来ないというのなら私から行くわね――」
するとヴィラネシアは色っぽいしぐさで腕を上げ、そのまま暗殺者のほうへ向けて勢いよく手を振りかざした!
「ぐはっ! なんだこれは!」
「うふふっ、動けないでしょう? これであなたは私の意のままに動くことになったのよ。さて、まずは――」
ヴィラネシアは手を下あごへセクシーにあて、視線をそのまま側道の岩のほうに流した。
すると暗殺者はなんと、その岩のほうに向かって思いっきりぶつかった!
「ぐはぁっ!」
これはサイコキネシスと呼ばれるものだろうか、相手の身体を奪い、身体をあちこちにぶつけさせる魔術である。
「さて、もう一回★」
暗殺者はさらにもう一回岩に身体をぶつけられた。
「うふふっ、そろそろもういいかしら?」
トドメに暗殺者の身体を宙に浮かせ、そこからそのまま地上に向かって激突させた。
「ぐはぁっ!」
暗殺者はその場で拳を握りしめていた。
すると、ヴィラネシアはそいつの元へと近づいていた――
「くっ……ここまでか――さっさと殺るがいい――」
しかし、ヴィラネシアは――
「そんな詰めの甘さで暗殺者を名乗っていてもいいのかしら?」
そう訊くと、暗殺者は答えた。
「なんとでも言え――俺はただ、クライアントの指示に従ったまでだ――
作戦は失敗だが、もはやどうすることもできん――」
ボロボロの暗殺者、しかし、ヴィラネシアは呆れた様子で両手を広げると、今度はライズのもとへと駆け寄ってきた。
「お、おう、ありがとう――」
倒れている彼に手を差し伸べた彼女、またしてもヴィラネシアに助けられたようだ。
その時の彼女の顔は、あの妖艶なヴィラネシアとは思えないような優しそうな眼差しだった。
その顔は確かにフェリンのそれを思わせるような印象でもあったのだが、彼女本当にフェリンなのだろうか?
彼女はそのままフェリンの姿へと戻っていったがライズはどうしていいのかわからなかった。
フェリンは伝えたいことがあるというので、その足でハーハラルへと向かうことにした。
なお、暗殺者のことは放っておいた。