それから数時間が経ち、ライズは特にすることもなくゴロゴロしていていると、いつの間にか眠りこけていた。
帰ってきたフェリンは寝ているライズのそばに寄り添い、やさしく起こしてあげた。
「ライズー! 起きてー!」
「うーん、なんだ? どうしたんだ?」
「うふふっ、夕ご飯ができたわよ♪」
ライズ待望となることであろう、フェリンの手作りの夕飯ができた!
「フェリンの手作り!? マジで!?」
ライズは嬉しそうだった。
「うんうん! これ、うまいよ! 本当においしいよ、フェリン! 俺、これなら毎日食べたいよ!」
「ふふっ、よかった! じゃあ、私も食べよっと!」
「いやぁ、こうして複数人で夕食を囲むのも何年ぶりのことか――」
ワイアンドも楽しそうにでなごんでいた。
そして、話題はメレア姫の件に――
「そうですか、つまりメレア姫は――」
ワイアンドは憂いでいた。
「あの、改めて訊きたいんだけど、ワイアンドさん的にも、フェリンはそこまで信用のおける人間、ってことでいいのか?
俺はイマイチその辺だけが心配なんだけど」
心配そうに聞くライズだが、ワイアンドは頷いた。
「それはもちろんですとも。
なんたってメレア姫様が託した方ということであれば、それだけで十分ですよ。
そして、今やナジール様もお亡くなりになり、王位継承者は既にいない――
私を追い出したテザンドに睨みを利かせるのであれば彼女の存在は心強いものとなりましょうな」
ワイアンドは冷静だった、確かに中身が何であれ、
そっくりな人間が本物さながらに行動すれば影響力は大きい――そうとしか言えないか。
「とはいえ、テザンドがメレア様を亡き者にしようと企んでいるのは事実、
つまり、今も、たとえ姫様の偽者であろうと命を狙い続けていることは間違いないでしょう。
そう、あなたほどの方に言うことではないかもしれませんが、フェリン様、十分にお気を付けください!」
「はい、ワイアンド様! 気を付けますね!」
あなたほどの方に言うことではない? ちょくちょく気になることを言うなぁ。
とはいえ、ライズとしてはここにきてから最初から釈然としないセリフや出来事があった、今更である。
「それにしてもヴァルナジアが――いよいよということですか。
テザンドの後ろに巨大な悪が潜んでいます、それは恐らく間違いございません。
しかし、その悪は”七魔性聖”ではないかと考えております。
とある方によれば、それは”邪王ジェラレンド”であると聞いています」
ジェラレンド!? ライズは考えていた、どこかで聞いたような名前だなと。
確かに”七魔性聖”の一員――
「でも、ジェラレンドとテザンドがつながっているということは――」
ライズはそう言うと、ワイアンドは頷きつつ立ち上がった。
「いよいよ動き出したということか。
そうなると、すぐにヴァルナジアへ向けて出立せねばなるまい――」
ワイアンドは意を決し、再びヴァルナジアの地へと赴くことを決意していた。
しかし、それに対してフェリンが――
「待って! その前に やることがあるの!
だからワイアンド様は少しだけ待ってくれないかな?」
フェリンはそう言うと、ワイアンドは素直に聞き入れていた。
「えっ、やることってなんだよ、賢者様もそれでいいのか?」
「もちろんですとも、メレア姫によく似たこの方の意見を尊重しないわけにはいきますまい」
ライズにはなおのことわけがわからなかった。
ライズとフェリンは早々に集落を立ち去ることになった。
「本当になんなんだ!? 俺、まったく状況が把握できていないんだけど!」
ライズはそう言いつつフェリンについていった。場所は森の中である。
「そもそもフェリン、やることって何だ?」
「そろそろライズには言っておかないといけないと思ってね。
でも、その前にまずは片付けるべきことを片付けないといけないと思ってね――」
えっ、どういうこと? だがその時、フェリンは歩くのをいきなりやめると、何かをかわしたかのように身を避けた!
「ん? どうしたんだ!?」
「ライズ! 伏せて!」
えっ、伏せるって――よくわからないままライズはその場で伏せると――
「なんだ今のは!」
それはライズの目からもしっかりと確認できた、木々の間あたりから矢が飛んできた光景だった、まさか毒矢か!?
「いるのはわかっているのよ! 姿を見せなさい!」
そいつは目の前に姿を現した。
「そうか――やはりメレア姫ではなく、それに扮したそっくりな女か――」
そいつは恐らく暗殺者だった。
「貴様を殺すことで王族殺し分の報酬をいただくことになっている、悪く思わないでくれよな」
クライアントは誰だ! ライズはそう叫んだ、無論相手はおそらくプロの殺し屋……だが、
「クライアントはテザンドだ、どうせ知っているのだろう?
だが、俺が殺したことについては秘密にしたいのでな、
だからお前がその女を殺したことにして、ついでに女を殺したことを悔いて自殺したことにしてもらおうか」
はっきり言ったな、まあ……どうせ知っている、だからこそなのだろう。
「さて、恨むのなら俺じゃなく、クライアントか自分、もしくはこの世界の創造主様とやらにしてくれよな!」
暗殺者が襲い掛かってきた!