ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第3章 真に邪悪なる存在

第22節 いい女の逆襲

 あれから約10分程度経った、その間ライズは――
「ったくもう、どうしてもって――可愛いところがあるじゃないか。 てか、フェリンだもんな――俺、完全に心を食われているな。 まあいい、せっかくだから買ってやるかな!」
 フェリンはライズに、長い髪を縛るためのゴムを買いに探しに行った。 彼女はちょうどこの集落でそれっぽいいいやつを見つけたので、それが欲しいとライズに駄々をこねたのだった、 可愛い……ライズは彼女が完全に好きだった。
「これだな! お前さん、さっき可愛い彼女連れてたもんなぁ!  ひょっとして、プレゼントかー? 羨ましいやつだぜチクショー!」
 そう言われてライズはテレていた。
「さあ俺の渾身の作品を受け取れこの野郎!  あんなに可愛い娘なんだから大事にしねぇとただじゃ置かねえぞ!」
 ライズはさらにテレていた。

 だが、その次が問題だった。
「そう言えば、一応さっきの連中がいたところに立ち寄ってお礼をしておかないとな、いればの話だけど――」
 フェリンはライズにそうするように伝えていたのである、なんて礼儀正しいんだろう。
「おお、いたいた。なあ、ワイアンド様の件だけど、本当にありがとうな」
 ライズはそう言った、さっきの男だが、5人組だったように記憶していたが今は1人しかいなかった。 すると、さっきの男からは意図しない返答が。
「あん? ワイアンド様がどうしたって? てか、そもそもお前誰だ?」
「えっ、いや、あの――」
 ライズは返答に困った、どういうことだ?
「ん? ああ、なんだお前、あの女のツレだったのか。ワイアンド様なら奥の家にいるからさっさと行けよ」
 と、そっけない返答が返ってきた――いや、ちょっと待てよ、どうなっているんだ? ライズは疑問に思っていた。
「おい!」
「んだよ、まだなんかあんのかよ」
 相手の男は嫌そうに言った。
「その、俺のツレの女はどうしたんだよ!」
 ライズはそう訊くと――
「あの女なァ! なかなかいい女なもんでみんなで楽しくいただこうと拉致ってる最中に決まってんだろ!」
 なんだと!? 拉致だって!? ライズは怒った。
「本当はテメェをぶっ飛ばしてからヤろうと思ってたんだがテメェが勝手に出ていきやがったから手間が省けてだなァ!  つーわけでそろそろあの女を味見しに行こうか考えていたところなんだよなァ! グヘヘヘヘヘヘ!」
 大変だ――ライズは顔が青ざめた、が――
「ありがと♪ ワイアンド様なら奥の家にいるのね、じゃあ言われた通り、さっさと行くことにするわ♪」
 ということで、その場に現れたフェリンはその男が言った通り、ワイアンド様のもとへと行くことにした。
「なっ!? ちょっと待てや姉ちゃん! ほかのやつらはどうしたんだぁ!」
「他のやつらぁ? ああ、岩場で伸びているあいつらのことぉ?  そうね、少なくとも死んではいないと思うから安心していいよ、一週間以内に目覚めるかどうかは保証しないけど?」
「な、なんだとォ~!?」
 そういうと、男……悪漢は、岩場のほうへとすぐさま去っていった。 そう、フェリンはあいつらをコテンパンにのしていたのだ。 その様はあまりライズには見られたくなかったのだろうか、ライズには予め避難してもらっていたということらしい。
「あっ、ありがと~ライズ~♪ それが欲しかったのー♥」
 フェリンはライズの手からプレゼント――ゴムとシュシュを取ると、頭にセットした。
「どう? 似合うかしら?」
 ライズの視線はフェリンの脇と、そしてうなじ……またライズの視線を奪ったようだ。 こんな彼女がいてライズは嬉しいのだろうか、悪漢をコテンパンにするような強い彼女だが――

 ということで、悪漢に言われた通り奥へ行くと、それらしい家があった。 2人は家の主を呼び出すと、中へと促された。
「あんたがワイアンド!?」
「いかにも、私がワイアンドだ。 よもやこの集落に悪漢みたいのが住み着くとは……本当にすまないな、メレア姫に似た娘さんや――」
「いいえ。それよりも、ちょっと疲れちゃったから休みたいな。それにまだご飯も食べてないし」
 そう言えば夕べから何も食べていなかった2人。
「さようか。ではとりあえず、旅の疲れをとるのがよろしかろう。 話は夕飯時の席にでもいいかな?」

 ということでその場は落ち着いた。2人は個室へと促されると、そこに泊まることになった。
「ここでもまた同じ部屋――」
「いいじゃないの、ライズだって、本当は私と一緒に寝たいんでしょ?」
「そ、そんなわけないだろ(=そうしたいの意)!  第一、同じ部屋で寝るなんて落ち着かないし(←本音)―― それなのに、一緒に寝るだなんてどう考えても――(下の句:願ってもない相談だな!)」
 ヘンタイエロライズの心の声は駄々洩れだった。そんな中、フェリンにはやりたいことがあった。
「あっ、そうそう! せっかくだし、ちょっと出かけて来ようかなー?」
「えっ、出かけるって――さっきみたいな目にあったら…… いや、そうしたら痛い目を見るのはやっぱり悪漢のほうか――」
「ゴメンネ! ちょっと行ってくるね!」
 フェリンは早々に家を出た。ライズが振り返ると、そこに彼女の姿はなかった。
「あっ、えっ、早いな、もう行ったのか――」

 それからまもなくして、今度は部屋にワイアンドが訪ねてきた。
「ん? どうかした……いえ、どうかなさいましたか?」
 ライズは訊いたがワイアンドは首を振った。
「普段どおりで構いませんよ。 ところで――先ほどの娘さんはどちらに?」
 なんとも気さくな賢者様――いや、賢者というのはそういうものか。
「それが、なんか出かけてくるとか言って、さっさと行ってしまったんですよ。 とにかく、彼女を襲う悪漢が出ないことを祈るばかりだな――」
 もちろん、新たな被害者が増えないようにという意味でである―― あんなやりとりの後にいきなり何事もなく現れた彼女のインパクトは強い。
「そうですか、わかりました――」
 去ろうとするワイアンド、ライズは彼を引き留めて話をした。
「なあ、あの、フェリンのことだけどさ、本当にメレア姫に似ているんだよな?」
 瓜二つの顔であるのはライズ自身も確認済みだが、 他人の目から見て、賢者様の目から見てどうなんだろうか、気になったので訊くことにしたのだった。
「もちろんですとも、とってもよく似ていらっしゃる……最初に見たときは酷く驚いたものです。 しかし、メレア様きってのご指名――すなわち、彼女はまさに姫様ご本人より成り代わってでも行動してほしいと公認までいただいているのです。 ですから、ライズ様お彼女を信用してあげてくださいな」
「あっ、はい、それは、もちろん――」
 そう答えたライズ、だが――なんとも妙なワイアンドの発言に違和感を覚えていた、 メレア様きってのご指名? 公認? まるで、以前からフェリンとメレア姫のことを知っていたような口ぶりだな……ライズはそう訊くと、
「私はただ、思ったことを言ったまででございますよ、だから気にされないでください」
 と、なんとなくはぐらかされたような気がした。 とにかく、いずれにせよ、賢者様としてもそれほどまでに彼女を信用しているということなのだろう。
「そうそう、私も出かけてきますゆえ、少しの間、留守をお願いしてもよろしいですかな?」
 断るわけにもいかない感じがしたので引き受けることにしたライズだった。