ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第2章 妖艶なヴィラネシア

第11節 不気味な町

 2人はバスに揺られながらリキュラリウムから北上していった。 回りは誰も知り合いがいないし、とにかく暇なので、 フェリンはそのままライズの彼女気取りで彼の肩に寄りかかって寝た。 もちろん、ドスケベ変態エロライズの視線を感じる……彼女の頭上ごしに胸の谷間を覗いている…… 綺麗な太もももちらちらと見ている……彼にとってはさぞいい眺めであることだろう。
 とはいえ、フェリン自身もライズのことが好きだったりするので……彼女のその態度見ればだいたい見当つくと思うが。 それこそ、フェリンはあんな守られ方をしたのだ、一定の女性であればどう考えても心食われることだろう。 そんなナイトでエッチいイケメン、このイケメンなら多少エッチでも釣り合いが取れてる!  ライズの存在はフェリンの心をとらえていたのである。
 バスの中でフェリンは軽くライズを悩殺し、なんとか1日かけて目的地にたどり着いた。
「そういえばまだ考えてなかったな。ヴィラネシアに万が一遭遇した時、どうするかな――」
 可能性はゼロではない。 特にヴィネラシアといえば”妖艶のヴィネラシア”と呼ばれる通り、男の心を奪い取って自らの手足とさせる、 彼女の術中にはまったら死ぬまで彼女の隷として生き続ける運命を背負うという能力の持ち主なのだ。
「ふふっ、それなら対抗すればいいのよ。 ヴィネラシアがあなたの心を奪う前に、私があなたの心を奪ってあげればいいのよ。 だって、あなたは私のこのボディが大好きなんでしょ? それで私に夢中になれば、 たとえ相手がヴィネラシアだったとしても、なんとかやり過ごせるでしょ?」
 ライズは返答に困っていた、そりゃあ当然困ることだろう。

 そんな冗談、半ば本気を言いながら、トレモアの町へと入っていった。今日はここで泊まりそうである。
 今回泊まる部屋は、ライズ待望の2人部屋だった!
「なんでホテルの空きがないんだよ――」
 シングル部屋は全部塞がっていて、団体客用の部屋がいくつかしか残されていなかった。 とはいえ、ヴィネラシア情報があるというだけあって、これはトライトだけではなく、 他の地方のギルドでも我先にと更なる情報を得ようと躍起になっているわけだから、 つまりは既に先を越されているのである。
「本当は嬉しいクセにー♪」
「逆逆。気になって眠れるわけないだろ!」
「知ってる! 私のことが気になっているんだよね!」
「そういうことじゃない!」
 もはや恋人同士の喧嘩のようである。

 朝、トレモアの町を早々に出発、ライバルが多いから早く行かなきゃと思っていち早く町を出た2人。 そして、予めチャーターしておいた馬車を使って東のほうへと突き進んでいった。 だが――”ハーハラル”なんていう場所の情報は誰に聞いても知らないと言われた、それだけが心残りなのだが――
「馬車なんてあまり走っていないじゃないか?  バスのほうがスピード出るし、わざわざ馬車なんて――」
 と、ライズは言った。 確かに何も気にせずに東へ行くのであればバスが早いに決まっていた。ところが――
「ん? あの白い台地はなんだ!? もしかして、雪!?」
 フェリンは時季的に”ノース・エンド(北部限界)”と呼ばれる雪上地帯と非雪地帯の境目が早めに来ることと、 そして今年の雪は結構激しく、それによりノース・エンドが近いことも見越していた。 このようなほぼ整備されていない道ではバスでの走行は不可能だから、バス乗りのライバルたちは途中で大きなブレーキをかけられた。 そもそも”ハーハラル”なんて場所自体が不確かな情報、 この辺りにあると言われてはいるのだが、実はあんまり所在地がわかっていない。 しかし……だったらそんな”ハーハラル”なんて情報自体がどこから……?
 一方で2人は、馬車馬も雪原走行用に飼育された”アライル”と呼ばれる動物による力を借りて馬車を使い、颯爽と駆け抜けていった。
「”ハーハラル”って雪原の町なのか!?」
「途中で横道にそれるのよ! そして、しばらくするとハーハラルに着くわ!  雪はあるけれども、夏はギリギリある地域だから、そこまで降るわけでもないわ!」
 お互い、馬車のスピードが速く、風の音も強いので少し大声気味にそう話していた。 ただ、今年は大雪のため、ハーハラルもだいぶ雪が積もっているらしい。

 ということで、ヴィルスガント山岳地帯の山のふもとの町、ハーハラルへと到着した。 ここまで来て今更言うことになるが、実はハーハラルはフェリンの故郷でもある、もう家はないそうだが。
 しかし、ハーハラルは町というよりは聖殿都市という印象であった。
「なんだか、ちょっと――なんていうか、その――」
 彼女の故郷と言ったからなのか、ライズは遠慮していた。 いいわよ言っちゃっても――彼女はそう言って促した。
「いや、その――なんていうか、変な街だよな」
 それはフェリンもわかっていた、変というよりは不気味なのだ。 まず、近くに似たようなクリステンという町があり、そっちは聖殿都市、 そしてこの町も同じような印象だけど、聖殿というよりは古代遺跡の都市といったところである。
 2つ目の印象として、人々の活気が、他の町のような活気が一切ないこと。 みんながみんな、この町の独自の宗教を信仰しており、 ひたすら祈りをささげているといった感じの様相であるため、とにかく不気味でしかないのである。
「宗教は?」
「一応、”ヴァナスティア教”の派生宗教よ。 ヴァナスティア派生といえば近くのクリステンもそうだけど、そことはまた別の派生宗教なのよ」
 とはいえ、それでもほかの人には不気味以外の何物でもないことだろう、その光景は。
「でも、ここでキミは生まれ、そしてヴィラネシアもおそらくここで生を受けた――」
 フェリンは軽く頷いた。
「なんか、ヴィラネシアと関係がありそうなところってある?」
 フェリンは聞くかと思ったので、
「いいわ、明日案内してあげる」
 そう言ってライズを促した。その日は夜も遅いので次の日にその場に行くことにした。 ホテルは例によって2人部屋、ライズのお楽しみタイムのメインはもちろんフェリンである。