ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第1章 ヴァルナジアのお姫様

第7節 ハンターたちの日常

 次の日、フェリンはライズが寝ている向かいの部屋へとやってきていた。 その部屋は物置として使われていたようだけど、それでも立派な部屋のひとつで、ベッドまで用意させていた。
「おはよ。お元気?」
 フェリンはライズが寝ていた部屋に顔をのぞかせ、そう言った。
「朝早いんだな」
「まあ、そうね――早くだってなるわよ」
 えっ? 何かあったのか、ライズにそう聞かれるとフェリン答えた。
「こんなところで落ち着いて寝れないってことよ」
 しかし、ひとたび寝てしまえばそのまま完全に熟睡していたのは間違いない。

 それから2人は軽く朝食を済ませると早々にお城を脱出し、トライトのハンターズギルドまでやってきていた。 フェリンは外へ出るときは、いつも通りのフレアなミニスカートとオフショルのトップスというファッションである。
「ようっ! 聞いたぞお前! お姫様助けてお城で褒賞されたんだってな! 羨ましいぜコンチクショウ!」
 といったのは、あの時ライズと一緒にいたイケメンでないほうの男・ガレイズだった。
「いや、別に……そんなことはないよ。お姫様を助けてミッションコンプリートだ、それ以上でもそれ以下でもない」
 ライズはそう言い放った、というか本当の話でもある。
「まあ、それはそうと、そっちの女はクライアントか?」
 クライアント? 私? ちょっとちょっと、この顔忘れたの?  という感じだが、あの時はっきりと見えていたわけでもなかったハズなので無理もない話だった。 それに、顔が公表もされていない国のVIPたる存在が、こんなところにいるはずもない―― そういう先入観から、メレア姫の顔とそっくりな彼女の顔のことについては完全にスルーされていた。
「私もハンターなのよ。ライズとは幼馴染で、トライトを案内してもらっているってワケ」
 すると――
「マジか! ライズ、こんなにカワイイ幼馴染がいるなんて羨ましいやつだなァ!」
 うっふふふ、そうよ、私とライズはデキているのよ。 将来はライズのお嫁さんになるって決めてたんだから……なんちゃって。 フェリンの気分はそんなテンションだった。

 フェリンの設定はそんな感じである。 ライズとは幼馴染で、しかもハンター……ハンターまで設定だとか言ったらハンターじゃないことになるじゃん。 ライズには何者なのか言及されたけれども、とりあえず旅人であることを伝えると、その場は決着した。 それ以上のことを言及されても彼女はただの流離人でしかないのでなんとも言えなかった。
 そして受付。
「よう、ライズ。聞いたか?」
 聞いたって何を? ライズは訊き返していた。
「”七魔性聖”の件だ。 ザールが倒されてからそれほど日が経っていないのだが、 早くも”外道法のザマドス”と”妖艶なヴィラネシア”の2人の情報が入った。 面までは割れていないのだが、もしもそれに関して有益な情報を持ってきたら即座に報酬を出すという、 お偉いさんの決定によるヤバイ待遇だ!」
 なんですって!? フェリンは非常に驚いていた。
「マジか!? それはマジでヤバイな。てか、一気に2人の情報ってなんか裏がありそうだな」
 受付の男は改まっていった。
「どちらもあまりこっちでは聞くこともなかった名だけれども、 特にザマドスについてはこのあたりでも実害がすでに出ていることもあって、 なるべく早い解決を望む声が多いみたいだ」
 ヴィラネシアのほうは?
「ヴィラネシアのほうなんだが、実はすでに前々から被害が発生しているという見方が濃厚だったんだ」
「え? どういうことだ?」
「誘拐事件の直前のことを覚えているか? あれは賊による行為がかなりの件数あがっていたが、 ヴィラネシアといえば妖艶という名だけあって、その時期に男をたぶらかしていろいろとさせていたらしいんだ。 まあ、それも次第になくなっていったわけなんだが、それでも倒されたってわけじゃないしな。 だからとりあえず、できるだけ早いうちになんとかしておこうということで、上層部では決定されたらしいんだ」
 それは本当に急を要する案件だったようだ。

 2人は適当に仕事を受け、なんとかこなしていた。
「あまり重たい仕事を引き受けないのね」
 フェリンはライズに聞いた。
「ああ。それやってると、今後のミッションに差し障るからな」
 今後?
「まずはメレア姫のワイアンド様案件、そして2人の”七魔性聖”の件だ。 ミッションの優先度の付け方は人それぞれで決めるわけだが、 俺としてはできるだけこの2つのような大きなヤマを経験したいから、 まあ――いつもはだいたいこんな感じで仕事を片付けているんだよ」
 へぇ、そうなんだ、フェリンはそう思った。それにしてもやっぱり”七魔性聖”――
「ヴィラネシアは急がなくても大丈夫でしょ?  だって、今はそれっぽい実害も発生していないんだし――前は少しあったみたいだけれども」
 フェリンはそう提案した。理由はライズも考えている通りだった。
「確かにな。それより実害が出ているザマドスと、姫様の件のほうが優先順位高だな」