ラスト・プレリュード ~運命の黄昏 忘れられし物語~

第1章 ヴァルナジアのお姫様

第4節 囚われの女

 その一方で、とある女がそのハンター2人が運び込まれた洞窟の中の牢屋に3週間前ぐらい前からつかまっていた。
「ちょっと! 放しなさいよ! 私の言うことを聞きなさいよ!」
「デヘヘヘヘヘヘ……いい女だし、スゲー遊びたいのは山々なんだが―― 俺たちのヒミツを知っちまったらそういうわけにもいかなくてな~」
「別にあんたたちのヒミツになんか興味なんかないわよ。 私の興味があるのはイケメンだけ。あんたたちが悪いことしてたって構いやしないわ」
「へへへ……だからといってそうもいかなくてだなー。 それに、お前は非常に危険な女だと聞いたからには簡単に檻から出すこともできねえんだよ、 だから諦めるこった、デヘヘヘヘ……」
 女はおびえるどころか、非常にイラついていた。

 それから3か月ほどが経った今、しばらくしたのちに女のもとに誰かがやってきた、 ここの悪大将か何かのようで、とにかくえらそうなヤツだった。
「ふーむ、見れば見るほどそそるほどいい女だが、殺さねばならんとは惜しいな――」
「何よ、殺すんだったら何故さっさと殺さないのよ!?」
「まあ、こちらもそれなりの事情があってだな、そう簡単に期待には応えてやれんのだ」
 女は別に殺されるのを望んでいるわけではなかった。
「さてと、名残惜しいがそろそろお別れだ――」
 そういうと、そいつは女を檻から出し、手枷を思いっきり引っ張った。女は足枷の鎖のせいでそのまま転倒した。
「フハハハハハハ! 殺す前にせめて少しでも遊んでやるよ!」
 悪趣味なヤツね――まあまあイケメンだけど、悪趣味具合と釣り合いは到底とれてないから不合格だわ、女はそう思っていた。

 女を連れ出し、時にはその女に喘ぎ声をあげさせて弄ぶこいつ、本当に嫌なヤツだった。
 そして、そのうち洞窟の外に出ると、そこには広がった景色が。
「どうだ! いい眺めだろう! お前もここで死ぬのだから悔いはあるまい!」
 女は崖を見下ろすと、海が広がっていた。 そして、その崖下には海面からゴツゴツとした岩々がむき出しに――
「さて、もういいだろう――さっさと飛び降りろ!」
 そいつは大きな声でそう怒鳴りつけた。岩にぶつかって死ねということらしい。

 そうは言いながら、さっさと飛び降りることは期待していない悪の親玉、 それを見越してか、女が飛び降りるさまを見てみようとギャラリーが沸き出てきた。
「ねーちゃん逝けー! 飛び降りろー!」
「飛び降りろっ! 飛び降りろっ!」
「はよ飛び降りろや! 飛び降りなきゃオ○シちまうぜー!?」
 なんて下品な連中なのかしら、女は後悔していた、ほんの少しだけ。

 そんな下品な歓声で盛り上がっている中、追加のギャラリーが現れた。そいつらは――
「ん? なんか盛り上がっているようだけど、こっちが出口のようだな?」
「なんだ、磯のニオイがするな。海が近いのか?」
 下品な連中とは全く違う印象の2人だった。
「なんか、みんなあっち向いているな。一体これは?」
 すると、片方の男が女を見て叫んだ。
「うん? あの女、ヤバい状況なんじゃないか?」
「ギャラリーが楽しんでいる理由はあれか、ある意味わからんでもないが」
 男受けしそうな感じの服装をしている女が崖っぷちで何かをしている光景だった。 すでに盛り上がっているギャラリーは2人の声に気が付いていなかったようだ。
「えっ、ちょっと待て、ここってエンシア坊の崖の上じゃないか!?」
「エンシア坊!? そんなところまで来ていたのか俺たち――」
 エンシア坊、女のこの状態を見ればわかる通りだけど、ここから落ちて生き残れる可能性は低い、 そう、ここは自殺の名勝なんだそうだ。
「てことは――まさか、あの女はピンチ!?」

 すると、片方の男、イケメンのほうが女のもとへと素早く寄ってきた。 それにはさすがにギャラリーも異変に気が付いたようだ。
「ん? なんだ、お前は!?」
「お前ら、何のつもりだ!」
 イケメンは女を守りながらそう言った。女は”やばい、超うれしいんですけど”と思っていた。
 取り残されたイケメンでないほうの男は右手で頭を抱えていた。
「ライズっ! ったく、無茶しやがって……俺はどうすることもできんからなっ!」
 そいつは洞窟の出口から這い出ると、洞窟の上のほうに登って身をかがめ、ギャラリーの様子をうかがっていた。 すると、悪の親玉がそのイケメンの男に向かって言い放った。
「ふん、まあいい……少なくとも侵入者のようだしな。さあ、キサマもその女と運命を共にするがいい!」
 すると、ふたたびギャラリーが――
「うらやましーやつだぜぇー! いい女と運命を共にするなんてよォー!」
「飛び降りろっ! 飛び降りろっ! いいからさっさと飛び降りろっ!」
「はよ飛び降りろや! 飛び降りなきゃ俺の女にしちまうぜー!?」
 女は再びイラっとした。
「さあ! 早く逝け!」
 悪の親玉は、今度は2人に銃を突きつけながらそう言った。
「そうか、わかった――」
 そういうと、イケメンはなんと!  女をしっかりと抱きかかえた――えっ、ヤバイ、ぐっときたんですけど――女はときめいていた。
 そして次の瞬間――イケメンは女を抱えながら崖から飛び降りた!
「マジか!? ったく、あとは自分で何とかしろよな!」
 イケメンじゃないほう――ガレイズはそのままギャラリーに気づかれることもなく、その場を去っていった。