話は2か月後に戻る。
あのお姫様の誘拐事件は暗礁に乗り上げてしまった。
とにかく、手掛かりがなさすぎるのが原因である。
そうこうしているうちにギルドには別の大きなヤマが舞い込んできて、
一切手掛かりのない誘拐事件の話については一旦放置され、
ハンターたちはその別の大きなヤマのほうのミッションに駆り出されることになったのである。
「結局、”恒例行事”までにお姫様を見つけることはかなわなかったな」
残念ながらお姫様の件については諦めてもらうしかなかった、
国家機密級の案件ではあるとは言え、こうも手がかりが何もないとなると流石に――
ということで話は変わるが、トライトのハンターズ・ギルドでは半年に1回”恒例行事”というお題目で、
何かしらの大きなヤマに対し、ギルドメンバーが一丸となってこなすミッションがあった。
これはトライトのハンターズギルド特有の行事かもしれない。
ここでの”恒例行事”というのは警察側の棚上げ案件……所謂未解決事件というものである。
それで言うと此度のメレア姫誘拐もまた棚上げ案件になるわけだが、それ以外にも棚上げになっている案件は多い。
無論、メレア姫の捜索については優先事項であることに変わりはないのだが、
そちらはハンターにも協力を要請しても一向に成果がつかめないため、
ハンターズ・ギルドとしても他のミッションと掛け持ちしながらの行動となっている。
一方で今回の棚上げ案件についてはハンターズ・ギルドに”降りてくる”ことはある程度予想ができていた。
というのも、それについても毎度のことだがハンターの中でも警察関係者と親しい者がいるためである。
特にライズはファザットと仲がいいのだが、実はそれ自体は秘密である、
万が一情報がリークしようものなら問題になるため、誰もが親しい者がいても秘密であり、
それで万が一重要な情報を聞けたとしてもオフレコでの話ということである、
情報源はあくまで”関係筋”または”信頼できる情報源”である。
ということで今回の”恒例行事”だが、所謂”闇ルート”による不法取引である。
実は、この案件自身は警察から何度か要請する動きこそあったものの、実際に”降りてきた”のは今回が初めてだった。
つまり、それだけハンターのほうでも調べが進んでいる案件ではあるのだが、
”降りてこない”限りは本格的な調査ができないため、これでようやく調査が進められるということである。
ということで、取引現場として怪しい場所についてはなんとなく見当はついている、ライズもそのうちの一人である。
中でも、ライズ的にはとっておきとも呼べる現場があり、仲間と一緒にその場へとやってきていた。
「ライズ、そこか?」
「ああ、そこだ。以前、この近くで子供が補導されたの覚えているだろ?」
「ああ、覚えているぜ。補導された原因はここにあるってわけか。
でも、それがなんだってこんなお城の倉庫保管区域がターゲットなんだ?」
そう、まさしく裏取引が行われているらしい現場は、まさかのヴァルナジア城の敷地内だとライズはにらんでいた。
当然、そんなまさかと思うやつはいるだろう、一緒に来たガレイズもそのうちの一人だった。
「夜中は衛兵の監視も限られていてな、まさかお城でそんなことが行われているとは思いもしないからの事なんだろうが……。
それに、ここはどうやら荷物を保管することはあっても、荷物によっては中身までチェックされないものもあるらしい」
「なんだよそれ、セキュリティチェックが甘いんじゃないのかソレ」
その情報の出どころは一切の秘密だ、何故なら”関係筋”からのリークだからである。
リーク内容を具体的に言うと、チェックしたいのはやまやまだがそこまでするための人手が足りていないという事らしい。
夜警が限られているのもまたそう言った理由だという。
倉庫の保管区域でお城の衛兵とすれ違うと2人は軽く挨拶をした。
2人がここにいるのはあくまで見張りの増員という名目なので、具体的に何とは言えない。
「それにしても警備もガバガバだな。この城、本当に大丈夫か?」
おそらく大丈夫ではないだろうなとライズは言った。
「第一お姫様が誘拐されるほどだ、いろいろと課題を残している気がする」
ライズは考えつつ言うとガレイズは悩んでいた。
「それもそうなんだが、俺が思ったのは、内通者がいるんじゃないのかってのも考えたんだ」
確かにガレイズが言う通りなのかもしれない。
警備が手薄なことを逆手にとって……それなら誘拐もしやすそうだ。ただ、
「いずれにしろ、要求なしというのがどうにもひっかかる。
誘拐ってことは、やっぱり何かを要求するもんだろ?
だから誘拐して要求なしって……犯人に何の得があるんだろう――」
ライズはそう言った、そう、それがわからないのだ。
「確かに、お姫様が誘拐されてから2か月、その間何もなしって異常だよな――」