運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

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 ロイドはララミィを見つけた。
「ったく、厄介な術をかけてくれるもんだから案外簡単に見つかってよかったな」
 ロイドは呆れたように言うが、ララミィはとても嬉しそうだった。
「フローナル♪ やっぱりお主はとてもいい男じゃあ♪ やっぱりわらわが恋しいかえ?」
 だから勘弁してくれ……ロイドは悩んでいた。
「フローナルさん、案外ララミィさんのこと好きなんじゃありません?」
 と、シェリア……何を言うんだ! ロイドは焦っていた。
「良いのじゃぞ、お主とアムレイナさえよければわらわは二番でも三番でもな♥」
 だから……ロイドはますます悩んでいた。

 2人は事情を説明した。
「なるほどのう、ここはそういう世界なのか。 つまりは世界はなくなってしもうたがとりあえず一命はとりとめておるということじゃな?」
 ロイドは頷くと、ララミィは得意げに答えた。
「そういうことなら簡単なもんじゃ! 次の記憶を探しに進めばよいということじゃな!  ならばこちらに来るがよい! 思い当たる節があるでの!」
 なんともトントン拍子に進むもんだが――世界の記憶となると数多にあるはずなのでそういうもんか――ロイドは考えた。
「そうじゃお主、本当は第1級精霊とやらという存在だったとな?  やはりわらわの見る目は正しかった! そなたは初めて見た時から只者ではないと思っとったのじゃ!  あのフィレイナ姉様さえそなたをお兄様と慕うほどじゃ、やはりそれだけの存在だったということじゃな!」
 お、おう……ロイドはそう言われて悩んでいた。

 と、言うことで……何が起こるかわかりそうなものだが――
「まあカワイイ♪ ほら、おいで―♪」
「うわぁー! フィレイナ姉様の魂までおるのかぁー! わらわは幸せじゃぁ……」
 と、彼女は早速甘えていた。
「あらぁ? あなたまでフィレイナ言うのね? まあいいわ、いつでも甘えておいで♪」
「ああっ、お姉様ぁ……」
 と、そんな光景が容易に想像できたロイド、どうしたもんだか悩んでいた。

 そんなこんなで次々と仲間の記憶を取り戻していったロイドたち。
「うわ! マジか! フィレイナさんまでいるのか!?」
 アルドラスは驚くと、フィレイナは――
「ちょっ!? どうなってんのよ! あんたまでフィレイナ言うの!?  あんたたちそのフィレイナからどんだけ影響受けてんのよ! ってか、しかもその女って私そっくりって!?  んなわけないでしょ!? どー考えてもおかしいわよねぇ!?  なんで恋愛とは対極に位置にいるような女の系図が未来永劫存在し続けているわけ!?  こんなのもう……奇跡を通り越してただの異常よ! というよりただの世界のバグよ!」
 なんか余裕で聞いたことあるな……一行はそんなセリフにも嬉しさを感じていた。
「それより、世界を構築するシステムまで組んでますって―― もう 次元の異なる何かとしか言いようがないじゃないですか――」
 ディルナは唖然としていた。シルグランディア的に目の付け所としてそちらが優先される模様。流石っす。

 だが、そんな中でたった1人だけまだ記憶を取り戻せていない仲間がいる、それは――
「アグメイアさん……」
 と、シェリアは心配していた、そう、彼女である。だが、ロイドは――
「彼女のことは心配しなくていい、先に進めばきっと見つかるはずだ」
 それは……本当!? シェリアは訴えるような眼で聞いた。
「もしかしたらこれまで辿ってきた記憶の中に見落としがあるかもしれません!  だから念のために――」
 フェルメリアも心配しながら訊くがロイドは首を振った。
「いいんだこれで、俺達は前に進むべきなんだ――」
 その自信は何処から……カルディアスは訊いた。
「そうだな、それについては第1級精霊ロイドの成り立ちについてちゃんと知っておく必要がありそうだな。 そもそもロイドっていう男は無茶ばっかりしていてな、とある精霊にはいつも心配ばかりされていた。 その精霊ってのはロイドの妻になる女なんだがその女もまた無茶な女でな、 ロイドが行くって決めたら何があっても一緒に行くって言って聞かないんだ――」
 その女性というのはつまり――
「だが、ある時問題が起きた、闇女神フェリシア問題ってやつだ。 それはこの世界に闇の帳を降ろし、 フェリシアを絶対神とする闇の世界”フェリシア・ヘイム”を築き上げるという大事件だ。 フェルメリアの言うようにフェリシアは男という男を無条件でひきつける能力があるというのは、 彼女のコンプレックスが闇のささやきによってそそのかされて実現し、 そして闇がなくなった”レイディアント・フェリシア”の時代になってもフェリシアの恨みは残り続けている…… そもそも彼女が闇にそそのかされることになったのは精霊界が起こした問題に端を発するからな」
 フェルメリアは納得しつつ説明した。
「なるほど――つまりはこういうことですか、 フェリシアの影響は精霊界に住まう男すらをも虜にする能力を持っていますので、 つまるところ精霊界のシステムもすべてはフェリシアの想いのままになります。 そうなると、本来であればロイドさんもフェリシアに取り込まれてしまうハズですが―― 彼女のおかげで助かったということですか?」
 ロイドは頷いた。
「まさにその通り……というか、俺はその時期もずっと外の世界からの敵を倒し続けていた、 それゆえに闇の眷属……つまりフェリシアをそそのかした連中やフェリシア自身も俺の存在には気が付いていなかったようだ。 というのは……ロイドの妻がその身を挺して自分の夫の存在を隠し通したからだな。 ロイドがそれに気が付いたのは闇が明けた”レイディアント・フェリシア”の時代になってからだった。 それからというもの、ロイドは酷く後悔した―― そしてロイドと同じく自分の妻によって助けられたあいつと一緒にずっと後悔していたよ。 でも……それはすぐに間違いだって気が付かされたんだ、それは――」
 フェルメリアが嬉しそうに言った。
「聞いたことがあります!  ロイドさんもヴェルトサードさんも奥様のことを溺愛していた、 だけどそんな奥様もまた自分の夫のことを溺愛していたと。 だから奥様は自分の夫が自らが信じた道を常に歩み続けるように願っていたんですよね!」
 そう言われてロイドは照れていた。
「まあ、当たらずしも遠からず……俺の場合はむしろライア―― 自分の妻によく怒られていたな、昔の仲間たちに顔向けできるように…… 自分の妹であるネシェラに顔向けできるように生き続けろってな。 言うまでもないと思うがネシェラはまさにフィレイナ……そう、シルグランディアだからな、 彼女のことをよく知るみんなならわかると思うが―― 早い話、兄貴なんだからしっかりしろっていうのがライアの口癖でもあったな。 だから……」
 ララミィは考えた。
「なるほどのう、つまりはアグメイアはそのライアという女の生まれ変わりということか、 それでそなたの心はアグメイアに傾いておったということじゃな?  そしてアグメイアはつまりライア……つまりそのような彼女だからこそ、 ロイドは先に進まなければならないと考えておる……ゆえにアグメイアは既に先の道で待っておるということか――」
「ということはつまり先に進めば絶対に彼女に巡り合えるということですね! なんだか素敵な話ですね!」
 シェリアも乗っかった。
「そうなんだ、だから俺は彼女のためにも進まなければならない、 そしてこの先に進めば彼女に会える――そんな気がするんだ!」
 そう言うロイドに対してシルグランディアは嬉しそうにしていた。
「なんとも泣かせる話ねえ、 それに、お兄様からそんな話を聞かされたら私も男を作らないといけなくなるじゃないのよ。」
 ロイドは頷いた。
「わけわかんねえこと言うんじゃねえよ。 大体、お前だって男作っているだろ?  そしてお前の言う異常事態の通り、シルグランディア女はそろいもそろって男作ってガキまで作っちまっている、 それはつまり異常なんかじゃなく、ごく普通の自然のことなんじゃないか?」
 だがしかし――
「いいえ! それだけは聞き捨てならないわ! ったく……私だってちょっと魔が差しただけなんだしさぁ……」
 やっぱりこの人は安定感抜群だ。