運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

Execute Memory-Auth in progress, please wait...

__

 フローナルはグリフォン・ハンド越しにトリュオンを持ち、そのまま真っ青な空間を突き進んでいた。
「祠があるっつったのに何にも出てこねえな。 でも――どうして俺なんだ? 俺がやっぱりロイドだからってことなんだろうが――」
 フローナルは悩んでいた。すると――
「そこの第1級精霊! そこで止まる!」
 なんだなんだ、なんだか聞き覚えのある声で自分を止めてきたものがいた。
「止まれって? なんでだ?」
「まあちょっと待ちなさいよ、今デフラグ中なんだから仕方がないじゃないのよ――」
 どういう意味だ? フローナルは悩んでいた。
「ったく、この世界はもう……とにかく、やたらと時間がかかるのよ、ちょっとだけそこで待ってなさいよ。」
 すると、フローナルはその声の主に対して訊いた。
「お前……もしかしてフィレイナか?」
 そう、どう考えても彼女の声である、だがしかし――
「はぁ? 誰よそれ、あんたの彼女か何か?」
 そう言われるとフローナルはこけそうになっていた。
「ま、まさか、あの女が俺の彼女なわけねえだろ、冗談よせよ――」
 すると声の主は何やら楽しそうに言った。
「あら♪ もしかして照れてんのかしら♪ 素直に言いなさいよ♪ もう♪」
 んなわけ――フローナルは呆れていた、 この声の主もどうやら彼女と同じ性格なのかもしれない、フローナルは頭をよぎると――
「わかった、お前、シルグランディアだろ、その思念体か何かか?」
 すると――
「あらアタリ♪ もしかして私に気があるのか知らねえ♪」
 と、なんだか嬉しそうなシルグランディア、フローナルは呆れながら言った。
「恋愛興味なし女が何言ってんだよ」
 だが、シルグランディアは嬉しそうに言った。
「まあそうなんだけどさ、でもイケメンは大歓迎よ、お兄様♪」
 よかった、こいつは自分の知っているやつだ……フローナルは安心していた。

 それにしても長い……いつまで待たせるんだろうか、フローナルは訊くと――
「んなこと私に訊いたってわかるわけないでしょ、私だってやたらと待たされてイライラしているところなんだから……」
 それは悪かった――フローナルは悪びれた態度で言った。
「まあまあ、わかればいいのよ。 それにしてもさ、すっごい揺れだったみたいね――」
 揺れ? 揺れと言えば――あれか。
「ああ、なんか、世界が消えるってのはああいうものなのかなってな……」
 フローナルは率直にそう言うがシルグランディアは否定した。
「あ、んん、そう言うことじゃなくってさ――まあいいや、ここでその話をしたってしょうがないもんね。」
 どういう意味だ? フローナルは悩んでいた。
「まあいいや、とりあえず終わったみたいだから一旦また消えるね。」
 終わった? 消える? どういうことだ? フローナルは訊くと――
「いいから、消えるったら消えんのよ、だからしっかりとトリュオン握っててよ。」
 えっ!? あ、ああ――フローナルは言われた通りしっかりとトリュオンをつかんだグリフォン・ハンドを握っていた、すると――
「よしよし、それじゃあリブートするわよ――」

 そして次の瞬間――あたり一面再び真っ黒な空間に放り出されてしまったフローナル、何が起こったって言うんだ!?
「まさか、今度こそ本当に世界が消えちまったってのか!?」
 すると――
「慌てないの!」
 目の前には透過しているフィレイナ……いや、シルグランディアが姿を現すとフローナルをそう言ってしかりつけていた。
「なっ!? こ、こいつは一体何がどうなってんだ!?」
「だから、私に聞いたって仕方がないつってんでしょ! こういうシステムなの!  もんくがあるなら作った人に言いなさいよ! I○MとかFu○i○s○とか!」
 いやいや、なんで複数? というか、妙に伏字にされているのは一体……フローナルは悩んでいた。
「さっきの青空間もあるシステムの再現らしいけどさ、それにしても時間かかりすぎだっての!」
 なんか妙にブチギレていらっしゃる……フローナルは刺激しないほうがいいなと考えていた。
「ったく! さあ行くわよ! いつまでもこんなところにいたくないわ!」
 わ、わかりました――フローナルは冷や汗をかきつつその場をとりあえず立ち去ることにした。

 彼女に連れられて進んだ先、そこは何処か見覚えのあるような場所だった。 だが、その場所はなんだか白と黒のモノクロカラーだけで構成された森だけであり、 なんだか活気がなさそうな空間が広がっているだけだった。
「ふう、やれやれ……とにかく最小限の復旧だけはできたけど、 そもそも古いシステム上で動いていたせいか、 世界もだいぶ破損してしまった状態でのリカバリーだったみたいね……まあ、それは覚悟していたけど。」
 何を言っているか理解できないところもあったが、言わんとしていることは分かったつもりのフローナル、 それは目の前の光景を見てわかる通り、世界は大きく引き裂かれるように破損していたからだった、特に――
「まさか……ここは精霊界だというのか!? ってことはまさか、目の前にあるこの瓦礫みたいなものは――」
 シルグランディアは答えた。
「そう……これは母なる大樹ユグドラよ。 辛うじて生きているみたいだけどこの状況下で生きていても御覧の通り、 これ以上はどうすることもできないわね――」
 なんてことだ、母なる大樹ユグドラがこんな状況では……フローナルは落胆していた。
「でも、諦めるのはまだ早いわね! 何故って? そりゃあ、私の目が黒いうちはそう決断するのは早計ってもんよ。」
 なんだって……? フローナルは訊いた。
「生命を司るユグドラだぞ、これ以上は何ができるってんだ?」
 しかし――
「だったら私のことは何だと思っているのかしら?  万物の作り手と呼ばれる真の創造精シルグランディアよ? お忘れかしら?」
 そうだ、そうだった、この女はそう言う存在だった、フローナルは反省していた。
「よしよし、そこんとこわかってりゃ十分よ。 だけど、私もあくまで意思だけの存在、そもそも精霊界から降りて結構経っちゃってるからねぇ――」
 じゃあダメじゃんか――フローナルは悩んでいた。
「だから諦めるのはまだ早いっつってんでしょ。 いいこと? この世界を復旧させるにはとにかく高位の精霊たちの力が必要、それはいいわね?」
 それはもちろんだ、世界の管理者たる精霊がいなければ世界を維持することは不可能、 ゆえにそれは必須要件である。
「まずはそいつらを復旧させるのよ、そうしないことには始まらないからね。」
 どうやって?
「それにはユグドラのログを辿ればいいのよ。」
 ユグドラのログ?
「そう、この世界で彼らの生きた証を探し出すのよ。 そしてその情報をもとに再構成すれば精霊たちは復旧する、やれることはそれしかないわね!」
 わかった、それなら簡単な話だな、フローナルは思った。
「なるほどな、何もなくなってしまった世界の再生は困難を極めるが、 それでも世界が残っているのであれば再生は易しい……なんともよくできた話だな」
「そうよ、やることはとっても簡単……さあお兄様、早速行ってきてよ。」
「おう! 俺に任せておけ!」
 フローナルは思いを込めてユグドラの中へと飛び込んでいった!
「ふふっ、そうよ、お兄様はそうでなくちゃね。」