運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第5章 世界の終わりに

第118節 最期の日

 人家の中へと入った一行、そこには――
「なんだここは!? コンピュータだらけの部屋!?」
 フローナルをはじめ、一行はその光景に驚いていた。
「これは――お主らの世界で使っているようなそれと似ておるようだがなんか妙な感覚がするぞ!」
 ララミィはそう言った、確かに……捉う人に言わせればなんともザワっとするような光景である、それもそのはず――
「ディルナ、何かわかるか?」
 と、カルディアスに振るが、ディルナは嫌がってた。
「や、やですよ、だって、モニタの画面、全部ブルスクですよ……?」
 そう、ブルスク、つまりブルースクリーン……そんな光景だらけのコンピュータを前にすると、 一定の人であればトラウマを想起させられる光景かもしれない―― そう言ったことも含め、とにかくその場は異様な光景なのである。
「うーん、どうしてこんな場所でこんな光景を見させられるのか……」
 カルディアスは悩んでいた。するとそこへ――
「何をしても無駄なことだがそれを教えるのもまた余興―― それはこの世界の未来だ……」
 なんだって!? その男の声に一行はすぐさま反応し、身構えていた、あの怪しい男である。
「どういうことだ!?」
 カルディアスは聞き返すが――
「知らん、知ったところで無駄なことだ、この世界は消え去る――」
 なんだって!? すると、フローナルは――
「お前、どこかで見た覚えがあるな――」
 と訊くと、男はフードを脱いだ、すると――
「なっ……!? お前、まさか――」
 フローナルの記憶の中からとある男の存在が想起されていた、そいつの名は――
「な、何故生きているんだ!? お前は大昔に斃されたはずだ!  どうしてここにいるんだ、クリストファー!」
 と、フローナルは叫ぶが、怪しい男は――
「私を知っているというのか?  私は世界を脅かす者、私の姿は貴様の深層意識によって反映されている姿に過ぎぬ。 だが、それを知ることも、そして知ったからと言って何がどうということはない、すべては無駄なことなのだからな――」
 無駄だって!?
「左様、すべては無駄なのだ、もちろん私がこうして語ることも含めてな。 どうせこの世界は消え去るのだ、それを前にすればすべてが等しく無駄なことなのだ――」
 カルディアスが言い返した。
「ということはつまり――お前がこの世界の消滅を企む元凶ということか!?」
 しかし、それに対してフローナルが答えた。
「こいつは――この世界を破滅に陥れようとしているただの便乗犯だ……」
 えっ、便乗犯ということは――
「なるほど、貴様……エターニスの精霊か、話が早い。 確かに、貴様らにしてみればそういう存在であると言える、 ゆえに世界の消滅を企む元凶というのは正確ではない――」
 が、しかし――
「フェレストレイア宙域やトラジアータ宙域の星の一部を”ダーク・マター”で消し去ったのもお前だな!?」
 フローナルはそう訊くとクリストファーは答えた。
「何を示してそう言っているかは理解できぬが言わんとしていることはわかっているつもりだ……そう、貴様の言うとおりだ。 だが、それはこの世界が消滅へ向かっていることの根拠を確かめるべく行ったことに過ぎん、 この世の多くの世界が無に帰しているさまを確かめるためにな――」
 つまり、フィレイナが言っていたランドグリスから先にあったハズの星団が消え去る現象を確認するために、 例の惑星UNP00002のようなことをやったのがこいつの仕業だということらしい。
「そんなことを確認してどうする気なの!」
 アグメイアは強く訴えるとクリストファーは答えた。
「私は世界を脅かす者、つまり私の役割は世界を脅かすこと――。 ゆえに世界が脅かされるというのであればなんでもよいということだ――」
 すると、フローナルはそいつに向かって即座に切り込んだ! それにはクリストファーも驚いていた。
「貴様、ただのエターニスの精霊ではあるまいな……?」
 それに対し、フローナルは……
「ああ、どうやらそうらしいな、どういうわけかお前のその姿を見ていると妙にうずくんだ。 だが――どうもお前の言うことにも否定できないのが妙な話だ、そいつだけがちぃっとばっかし気になるんだよなぁ?」
 それに対し、クリストファーは瞬時に距離を離して答えた。
「そう、それは貴様も知っているからだ、この世界が消滅することを。 そして、それは私の手による行為ではないことを。 そう、私は何も知らない、この世界が何故消滅するのか、そしてどうして消滅ということが可能なのかも知らない。 世界を脅かす者としては悩むべき事柄……だが、世界は消滅する、悩んだとてすべては無駄なこと――」
 すると、クリストファーはフードで顔を隠すと、その場で浮き上がった――
「流石のエターニスの精霊と言えど、こうなってしまっては手も足も出まい。 そう――もうじきタイムリミットを迎えるのだ、未来はすでにそこまで迫っているのだ――」
 と、そいつは太陽のほうを指さすと――
「ま、まさか!」
 なんと! 太陽は紫の霧のようなものにいきなり覆われてしまった!
「あれは! 惑星UNP00002の時の!?」
 シェリアはそう叫んでいた。
「ほう……なるほど、次は母なる大樹ユグドラか――」
 ユグドラってまさか――
「おい! もしかして、あれってフェルドゥーナ星じゃねえか!?」
 と、アルドラスは叫んだ、まさか、フェルドゥーナ星まで消滅しようとしている!?
 だがしかし――
「お、おい! 惑星が次々と消えていこうとしているぞ!?」
 そう、次々と霧のようなものが包み込んでおり――
「では、さらばだ――」
 そう、今度はこの星もまた消えようとしており、あたりは霧に包まれていた……。
「な、何だこれは!?」
 カルディアスは驚いていると、その時――
「な、なんじゃあ!? 地震か!?」
 惑星はひどい揺れに見舞われており、もはやパニック状態だった。
「いや、この振動……まるで、まるで世界全体が揺れているような感覚だ――」
 フローナルがそう言い残したのもつかの間、この世界からすべての記憶が消え去ってしまった……。