運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第5章 世界の終わりに

第112節 伝説の匠へと近づきし者

「ディメンジョン・ワープ開始!」
 ディルナはメテオ・ナイツのオペレーションをしていた、それもそのはず……
「すごい! やったな!」
 と、カルディアスは感心していた、それもそのはず……
「お姉様が唯一課題にしていたディメンジョン・ワープのブラック・ホール超過機能、 なんとか実装にこぎつけました!」
 そう、ワープ航行をもってしてもブラック・ホールを横断することができないという問題があった…… いや、普通に考えれば超えられるようなものじゃあないと思うのですが。 それにより、メテオ・ナイツは大回りを余儀なくされ、時間がかかってしまうことになるのだが……
「お姉様が途中まで書き残してくれた計算式があったからこそ実現できたんですよ!」
 ディルナは上を見て楽しそうにそう言った。
「損傷率は18%、新自動修復システムで修復可能な範囲ですね!」
 と、自動修復システムのほうも改良済みだった。
「昨日よりもより良いものをか……これがシルグランディアの――いや、彼女らの職人魂ということか」
 カルディアスは感心していた。
「艦長! 改良されたディメンジョン・ワープを駆使しながらですと、 フェルドゥーナへの到着は1000日程度だったところ、120日程度まで短縮されるようです!」
 880日も短縮されたのか!? カルディアスは驚いていた。それもそのはず、
「現状、航路上に途中に1個デカいブラック・ホールがあるからね、 従来だとあれを回避するだけで1年ぐらいかかっていたから、そのぐらいにはなるんじゃないかな?」
 と、ディルナは言った。
「それもそうだな、そもそもフェレストレイア宙域に来るまで寄り道しながらとはいえ、 それでも5年もかかっていたのだからそれを考えると1年もかからずに到着できるようになったと考えると妥当…… ひとえにシルグランディア……いや、フィレイナさんのおかげということだな」
 だが――
「ん? ここのルートは直線的ではないようだが?」
 カルディアスはルート計算していたオペレータにそう指摘した、それもそのはず――
「残念ながら、ここはまさにそのデカいブラック・ホールの宙域で、それを回避したルートということですね。 確かにディメンジョン・ワープなら超過は可能になっているようですが、ワープ距離がどうしても足りず、 結果的に一旦ワープ空間から飛び出される形を取るとなると、回避ルートを取らざるを得ないのです……」
 オペレータはそう言った、距離……カルディアスは悩んでいるが、ディルナは――
「デカいブラック・ホールの直径は!?」
 そう訊いていた。

 3日後……再びディルナがオペレーションをしていた。
「デカいブラック・ホールを超えられるのか!?」
 カルディアスは訊くとディルナは答えた。
「単純な話で、ディメンジョン・ワープに用いるエネルギーを大きくすることでワープ距離を延ばすことに成功したんですよ」
 だが、そうなると――
「それではメテオ・ナイツのエンジンに大きな負荷をかけることになるが……大丈夫か?」
 ディルナは得意げに答えた。
「もちろん♪ それで先日、エンジンのエネルギー使用効率と消費効率をプログラミングし直したんじゃないですか♪」
 そういえばそれをするって言っていたようだが、まさかこのために?
「エネルギーを最大チャージした状態で実行すれば理論上はデカいブラック・ホールを超えられるハズですね!」
 エネルギーチャージといえば、そう言えば――カルディアスは気になっていた。
「先日のエルクザードの際にフィレイナさんがワープを実行してからすぐさまバスターを仕掛けていたな、 つまりディメンジョン・ワープの連続使用といったところだが、あれはどういうことだったのだ?」
 ディルナは考えていた。
「あれ、本当にすごいですよね、エネルギーを最大限にチャージしてからワープ、 そして残したエネルギーを使用してバスターを放ったんですよ。 確かに、例えばチャージしたエネルギーのうち30をワープに使い、残りの70をバスターに使えば実現は可能ですが……」
 だが、カルディアスは腑に落ちなかった。
「一度チャージしたエネルギーは事故防止のために中断することなく使い切るのが鉄則…… ゆえに宇宙艦の標準仕様としてもそのように作られているハズ、 だからそのようなことは実装上できるハズはないのだが――」
「確かに、普通ではそのようなことはできませんね。 というのも、それは宇宙艦の制御が基本的にリスク回避をベースにした考え方で作られているからであり、 連邦法でもそれが定められていることもあってかみんなそれが当たり前だと思っているからです。 そして宇宙艦の制御については基本的には自動で行うものとなっているのですが、 つまるところ、自動オペレーションの実装自体が連邦法の要件を満たすように設計されているため、 オペレーションが自動化していれば、 オペレーターは自動制御によって出力されるであろうエラーの出力だけを気にしていればよく、 特殊な操作など必要がないのですよね」
 と、ディルナはそう言うとカルディアスは気が付いた。
「まさか――!」
「はい! あの時お姉様は特権コマンドを使って手動制御に切り替えたんです!」
 な、なんだって!? それには全員が非常に驚いていた。