運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第5章 世界の終わりに

第107節 フェレストレイアの女 その2

 ほとんどの男たちが正気を取り戻せた中――
「フローナルはどうですか?」
 カルディアスは訊くとアグメイアは首を振った。
「ダメですね、彼は――この星の女に心を食われたままですね、 フィレイナが亡くなったショックもあるのかもしれません――」
 そうか――カルディアスは残念そうにしていた。
「彼がこのまま戻らないのであれば止むを得んな――」
 そこへアグメイアは言った。
「でも、彼のためにできる限りのことはしてみますから!  だから私に任せてください!」
 と、アグメイアは言うが――

 アグメイアはその場から去り、そして――
「そう、フローナルのことは私に任せなさいな。 あの男はこの星の女に心を食われたまま、戻ることはない―― そう、あの男は――」
 妖しい笑みを浮かべていた……
「フェレストレイア女王であるこの私に心を食われたのだからね……ウフフフフ――」

 アグメイアが試したこと、それは、自分の誘惑魔法での治療だった。 アグメイアはしっかりとフローナルのことを抱きかかえ、彼の心の支えになろうとしていた。
「さあ、フローナル、どう?」
 すると……フローナルはすぐに意識を取り戻した……
「う……ん……ここは……?」
 気が付いた! アグメイアは嬉しそうにしていた。 だが、そうなると、アグメイアとしては考えられることは一つだけだった。
「気が付いたのね! フローナル!」
 彼は頭を掻いていた。
「そうか、あんたが助けてくれたんだな、礼を言うしかないな――」
 だがしかし、そんな彼に再び魔の手が――
「ええそうよ、あなたを魔物の手から助け出したのはこの私よ。 あの魔物はね、私の”姉”なのよ――」
 姉!? フローナルは驚いていた。
「血が繋がっているってことね。 あなたは私の姉の妖の香にやられていたってことなのよ―― とはいっても完全な支配にまでは至っていない――それはもちろんわかっているけど――」
 それは――フローナルもちょっと抵抗したのはかすかに覚えていた、けど――
「それは”姉”があなたの想い人ではないからよね。 そう……私にはわかる、あなたが思い慕っている女が誰なのか――」
 えっ、それは――
「そう、あなたの心の中にいる女はこの私のこと――そうでしょ?  さあ、正直に答えてごらんなさい――」
 部屋中に彼女の妖の香が充満している――そんな空気の中、フローナルは――
「ああ、そうだ――これだ、これが俺が求めていたもの……もうお前を放さない――」
 こうして、フローナルはアグメイアに心を食われたのだった――

 そして……2人の仲はさらに親密に……。 フローナルはもはや夢中であり、アグメイアは何気にこの男が最初のエモノであり、 自分としては添い遂げるのも依存はないほどの男……彼に抱かれて完全に悦に浸っていた、 フローナルの旅はここで終えてしまうのだろうか――。
「まさか、生まれながらにしてこの私の下僕として生きているなんてなんてラッキーなのかしら……」
「そう、俺は……アグメイア――キミが好きだ、俺はキミに会うためにここにやってきた―― キミに会えて幸せだ――」
 こうして、フローナルの心はアグメイアに完全に食われてしまったのである。