運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第5章 世界の終わりに

第106節 魔性の香

 フローナルは魔物を追い払いつつ、そして男たちの救出に成功した。 男たちの誘惑魔法の影響こそ残っているだろうが――
「力が大きいばかりに扱いが雑ってのは訊いたことがあるからな、 とりあえず、宮殿の女性たちやシェリアに何とかしてもらえれば何とかなりそうだな――」
 と、そこでひと際やばそうな雰囲気の女が現れ――
「うん? なんだ?」
 フローナルは剣を構えていた。
「ウフフフフ、ようこそ下僕…… 女王の目の前までやってくるとは手厚く歓迎してやろう――ウフフフフ――」
 この女がボス格か……”魔物”らしく少々片言気味の言葉遣い、 妖しく激しく立ち上る妖の香――とりあえず懲らしめておこうか、フローナルは考えた。

 だが――フローナルがなかなか帰ってこない。 心配になったアグメイアは魔物の巣に入り込み、様子を見に行くとそこには……
「綺麗だ……お前は一番の女だ――」
 なんと! フローナルはその女を愛でている!
「ウフフフフ……さあ、私のことを抱くがいい……」
「もちろんだ、俺はお前を話さない――」
 だが、そこへアグメイアが鞭を振り上げ――
「この! あっちに行きなさい!」
 その女を激しく叩いた!
「ひっ、ひいいいい!」
 女は逃げ出した!
「うぅっ……、俺は、俺は……」
 フローナルの目が虚ろになっている、これは――
「何故? どういうことなの?  彼に誘惑魔法など通用しないハズ、それなのに……どういうこと?」
 アグメイアは悩んでいた。

 そんなこんなでフェレストレイア宮殿に戻った一行。 フローナルは再びベッドの中である。
「そんなまさか――フェレストレイアの”魔物”に心を食われてしまうだなんて――」
「どうしたんじゃフローナル! お前はここで人生を終えるような男ではないハズじゃろう!」
 シェリアとララミィがそれぞれ心配そうに言った。
「フローナルさん……なんとかなりませんか!?」
 フェルメリアはそう訊くとアグメイアは首を振った。
「彼は他の男たちよりも妖の香を取り込んでしまっている、少々時間がかかりそうね――」
 そんな……何人かは落胆していた。
「なるほど、それはいいんだか悪いんだかってか――」
「でも、フローナルも所詮男だったってことが証明されたようだな――」
 別の男性クルー2人がそう話していた。

 メテオ・ナイツの出発は延期になってしまった。 フェレストレイアの女性たちのおかげで何人かの男たちは正気を取り戻し始めているが、 フローナルは特に重症だった。
「なんとも不思議――プリズム族の妖の香すら受け付けない彼…… あのララミィの……恐らく古のラミア族に連なる者の妖の香でも受け付けるわけでもない彼―― どうしてここへ来て、彼は妖の香を受け付けるのかしら? しかも、よりにもよって――」
 アグメイアは考えていた、目の前にはフローナルがベッドの中で気を失っている――
「そう、よりにもよって私のお姉様に――」
 あの女はアグメイアの姉だった。

 魔物かどうかは妖魔の血の濃さで大体決まっているという。 同じ血の濃さでも体質的なもので理性があったり無かったりすることもある。 それこそ姉妹はもちろん親子でも、母が魔物で娘は理性ありというケースもあればその逆もある。 妖魔の血の濃さで大体決まっているということもあり、 男をあまり求めない系のフィレイナなんかはもはや対象外と言わんばかりの女で、 四姉妹ともあの通り理性があるなど傾向は大体決まっているのである。
「そうね、こうなったら……一つ、試してみる価値がありそうね――」
 アグメイアは意を決し――