運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第5章 世界の終わりに

第105節 魔物

 そして――あの男が復帰した、フローナルである。 フェルメリアに連れられ、カルディアスの元へとやってきた。
「その――いろいろと悪かったな――」
 カルディアスは首を振った。
「いいんだ、むしろ、よくぞ無事だった――」
 だが――フローナルは悩んでいた。
「重ね重ねになるが、フィレイナのことは本当に残念だった……」
 しかし、カルディアスは前向きに頷いた。
「いいや、むしろ危機にはこうして立ち向かうべきと、 危機に向かう戦士としてあるべき姿を教えられた気がする。 私は戦士ではないが、それでも、世界の危機に向かう者としての遺志は受け継いでいくつもりだ」
 確かにその通りだな、フローナルは頷いた。

 そして――彼らはドッグへと向かうと……
「さあ、そろそろ行くことにするか――」
 カルディアスは言うと、その場にメフィリアがやってきた。
「女王様!」
 フェルメリアは言うとメフィリアは頷いた。
「せめて見送りだけでもと思うてな。 フィレイナの件でも随分と世話になった、 もはやフェレストレイアの者がこれ以上そなたらに関わることもないじゃろう――」
 そうか、テレイズをつけたのもフィレイナのことを心配してか――カルディアスは考えた。
「じゃが、近くに立ち寄ったらまたここへ来られるとよい、 いつでも歓迎するでな――」
 そう言われ、フローナルは頷いた。
「ああ、随分と世話になっちまったな。 だが、いつでも来させてもらうぜ、俺の”妹”がいる星だからな――」
 それもそうだった、カルディアスは考えた。 だが、その時――ディルナが船から出て来ると――
「え? もう出発するの?」
 と訊いてきた。
「ん? ああ、何か不都合か?」
 ララミィとシェリアも出てきて言った。
「それがのう、男共は誰一人として帰ってこんのじゃ」
「他の女性クルーたちの話では一部の男性陣を除いて誰も戻ってきていないそうです」
 なんとも困った話になったもんだ。
「アルドラスは? さっき、元気よく戻って行ったハズだが――」
 カルディアスはそう訊くが、ララミィが――
「あやつは戻ってきておらんぞ、どうしたもんか――」
 と言った。だが、そんな中で一人の女性が慌てながらそこに現れた。
「大変です! メテオ・ナイツのクルーと思しき男たちが”魔物”に襲われたようです!」
 なんだって!? すると、フローナルは慌てて飛び出していった!
「おっ、おい! フローナル! くそっ! お前たちは先に乗ってろ!」
 カルディアスもそう言いつつ、慌てて飛び出していった。

 フェレストレイア宮殿の1階の出口、出るのはいいが、 どこへ行けばいいもんか悩んでいたフローナル。 するとそこへ――
「案内を頼める?」
 メフィリア……いや、アグメイアが先ほどの女性にそう訊いていた。
「お任せください! さあ、こちらです!」
 フローナルとカルディアスは彼女と共に森の中へと入って行った。

 2人は警戒していた、相手はどんな存在なのだろうか――って、この女性から聞けばわかりそうだな。
「どんな魔物ですか?」
 カルディアスが訊くと、それにはアグメイアが答えた。
「恐らく、私らと同じ姿をした者――」
 ん? それはどういう意味だ? カルディアスは首をかしげていると、フローナルは気が付いた――。
「ちっ、しくじったな――言われてみれば確かに、 フェレストレイアもといプリズム族の女ってのは妖魔の血が強いばかりに理性がないままで生まれてくる女児もいたんだっけな――」
 えっ、それというのは――アグメイアが答えた。
「ええそう、つまりは本能のままに生きているだけの存在、目の前に男がいるとなれば見境なく襲ってくる…… 最近は宮殿にあなた方が出入りしているから、男の匂いを嗅ぎつけ襲撃しようと企んでいたようね――」
 ヤバイ、ということは――捕まった男たちは妖の香にやられ、 フェレストレイアの礎になろうとしているということか……

 いよいよ魔物の巣、カルディアスは取り込まれまいと距離を置いて待機しているが、フローナルはかまわず進んでいった。
「フローナル!」
 カルディアスは心配そうに言うが、フローナルは――
「やっぱり、妖の香の効果は通じないようね――」
 フローナルは頷いた。
「前々から不思議だったんだよな。 だが、その力がようやくここで生かされそうだ――」
 えっ……アグメイアは訊いた。
「同族を最悪手にかけることになりかねない、なら――俺がやったほうがまだ痛まないんじゃないのか?」
 それはそうだけど――アグメイアは困惑していた。
「いいから、ここは俺に任せておけ――」
 そう言いつつ、フローナルは特攻した。
「フローナル……」