運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第5章 世界の終わりに

第104節 残された者たちの戦い

 フィレイナのことについてはフローナルの耳にも入っていた、 彼女が亡くなってから次の日に、まるで彼女が息を吹き返してくれたかのように目覚めたのである。
「あいつめ……だから無茶をするんじゃねえって言ってんのに――なんで逝きやがったんだ……」
 フローナルは悔しそうにしていた。

 フィレイナが亡くなったことについてはとにかく影響が大きく、 メテオ・ナイツもなかなか出艦できずにいた。 だが、それから3か月たった今、いつまでもうかうかしてはいられなかった。
「行くのね……」
 アグメイアはそう訊くとカルディアスは頷いた。
「いつまでも悲しんでいるわけにもいかない。 それこそ、世界の滅亡に対して立ち向かうのが我々の務め―― フィレイナさんだったら多分そう言うだろうな、いつまでもクヨクヨしているんだったら何かしろって――」
 確かに、その通りである。

 恐らく、彼女がリリユカ四姉妹だろうか、盛大な葬儀が終わってからようやく家族水入らずとなったようだ。 だが――その光景はフィレイナの日常がよくわかりそうな感じの楽しそうな光景だった。
 そんな光景に、一同はむしろ励まされていた。
「泣いているといえば泣いているようだけど、 むしろそれとは反対にすっごい楽しそうな声が聞こえてきますね――」
 ディルナはそう言うとアグメイアは答えた。
「それがすごい不思議なのよ。 フィレイアもそうなんだけど、仲間たちが亡くなっていく、明日は我が身―― 自分だっていつ死んでもおかしくはない状態に身を置いているのだから、 だったらせめていつも楽しく暮らしていきましょうっていうのが彼女のモットーなのよ」
 そしてその教育方針は娘たちに受け継がれているわけか。
「お母様! あとは私たちに任せて! お母様の遺志は私たちとメテオ・ナイツの人たちが継いでいくから!」
 リフェーラが言うとリアンナが言った。
「てか、ほぼメテオ・ナイツの人たちじゃないかしら?  私らだって、年齢的には長老クラス――お母様に近いんだからね……」
 確かにその通りである。
「私たちに出番はないということですね。 せめて、せめてメテオ・ナイツの人たちのために祈りましょう――」
 彼女がユーリシアか、顔立ちはフィレイナによく似ているがイメージがなんか違う感じである。
「そうね……私たちにできることはせいぜいそのぐらい、 お母様が大暴れしていた分私たちはこうして慎ましくしていることぐらいしかないわね――」
 そしてカリナ……とても落ち着いたようなお方であり、 かつてソード・マスターと呼ばれたほどの貫禄は僅かながら感じないでもないようなお人だった。 彼女らは一線を退いて以降は前に出てくることはないのか、母親と違って……。
「アグメイア、そろそろいいかしら?」
 カリナは訊くとアグメイアは頷いた。
「ええ、フィレイナのこと、任せたわ――」
 カリナは頷くと、リフェーラが彼女が入った棺を――
「よっこらしょっと! さあ、行くわよ!」
 肩の上にのせて抱え上げた!
「落としたり傾けたりしないでよ!」
「この私がそんなヘマするわけないでしょ! さあ、行くわよ!」
 リアンナが注意するとリフェーラがそう言い返していた……相も変わらずの姉妹である。 すると、カリナは――
「あなたは残るの?」
 アグメイアが訊くとカリナは頷いた。
「ええ、私たちで話し合った末にね。 だから私がお母様の代わりにやるだけのことをやるつもりよ――」
 と、カリナは剣を取り出した、フィレイナが使っていた二振りの剣――
「この剣を持つ役はアグメイア、あなたに譲るわ。 フェレストレイアの女王として、あなたが思うままに生きるのよ。」
 と、その時の彼女の手をカルディアスは見逃さなかった。
「手が震えている……」
 カリナは頷いた。
「バルザンド帝国の攻撃からみんなを守った時の後遺症よ、 あれからうまく剣が握れなくなっちゃったけど、 それでも私にしかできないことがあれば続けていくつもりだからね――」
 彼女もまたフィレイナと同じく無茶の塊だったようだ。 それだけではなく、リフェーラもリアンナも、そして戦いというものを知らないハズのユーリシアでさえも、 敵からの攻撃を受けて何かしらの後遺症が残っているらしい――なんなんこの四姉妹。 無茶が過ぎるだろ。

 フェレストレイアやフィレイナのことについてはフェルドゥーナにも伝わることとなり、 そちらでも大変ショッキングなことであるということで強烈なインパクトを残している。 それはそうだ、フェルドゥーナでもシルグランディアと言われたら言わずともがなである。