例の女の子はフィレイナが面倒を見ていた。
「ダーセルの連中はどうするのですか?」
当時はダーセルの艦隊を退けはしたが、まだ倒したわけではない――。
「やっぱり、お姉ちゃんも許さないですよね?」
「ええ、もちろんよ。
だから……ちょいと考えがあってね……まあまあ見ててよ。」
それから3日後――フィレイナとアリフローラ、そしてもう一人の臣下が通信設備を前にしていた。
っして、フィレイナはとある組織と通信を始めていた、それは――
「やあ、トラジアータの諸君、どんな感じ?」
と、相手はまさかのトラジアータだが、実は――
「ああ――そちらからの提案だが受け入れることにしたよ。
そう、つまり――ダーセル連邦とはオサラバだって事だな」
そう、トラジアータは当時まではダーセルの一部だったのだ。
しかし、トラジアータはダーセルの中でも割と立場が弱いほうで、無論トラジアータとしても面白くはない。
そこに目を付けたフィレイナはトラジアータに提案を持ち掛け、トラジアータはダーセルに反旗を翻すこととなる。
その際にトラジアータはダーセルの内情を暴露していた。
「時に……そちらは銀河連邦という組織とパイプがあるということだが――」
「ええ、フェレストレイアの元となった星フェルドゥーナが中核を担っている組織よ。私たちの祖先もあそこの出身なのよ。」
「ふむ……それで信用しているというわけか――。
この際だから我々もそっちに賭けてみようという話となったのだ。
銀河連邦なるものがどれほどのものかはわからぬが、
どうやらこのあたりに放っているという漂流物と何か関係があるらしい……」
「え? 漂流物? フェルドゥーナから?」
「そう……100億年もの間、何かを流しているらしい。
そちらが使っている言葉も我が星に流れてきたそれらの漂流物に含まれるメッセージと近いものを感じる――」
そう、彼らがフェルドゥーナやフェレストレイアに友好的なのはティルフレイジアとシルグランディアの甲斐があってこそだった。
「漂流物の試し打ちにしては度が過ぎている……かなりの数を宇宙に飛ばしているようで、もしかしたら緊急信号の類なのかもしれん。
連中がこのあたりまで探査の手を伸ばしているというのならちょうどいい、
自分たちの手で回収させて何事なのかを説明させるのもいいかもしれんな……」
「でも、あいつらやっとこの領域まで来たのよ?
そう考えるとちょっとそれは難しいんじゃないかしら?」
「なーに、協力せんとは言っておらんだろう、それなりにフォローするさ」
こうして……ダーセル連邦は崩壊した。
ダーセル連邦の中核を担う”ダルゼリア国”の崩壊によって連邦は解体されたのだ。
それはひとえにフェレストレイアとトラジアータ、そして銀河連邦による連合軍の功績あってこそだった。
それにより、フェレストレイアとトラジアータも銀河連邦の一員へと加わり、連邦はさらに勢力を拡大するに至ったのである。
それから数年後、フェレストレイア宮殿の一角にて――
そこは完全にフィレイナたちの居住スペースとして利用できる場所である。
「ただいま――」
フィレイナは家に戻ると――
「あっ! お母様!」
自分の娘が滞在していた。
「リフェーラじゃない、どうかした?」
「どうしたもこうしたも……子供作ったのなら教えてよ!」
「子供? 作った? 誰が?」
「お母様よ! あそこにいる娘! いつ産んだの!?」
えっ……フィレイナは悩みつつその娘を見ると――
「ああ、あの娘ね。
あの娘はアリフローラ、ダーセルとの戦争で身寄りが亡くなって私が面倒を見ることにしたのよ。
あんたたちも成人してあちこち行くようになったわけだしね。」
えっ、そうなのか……リフェーラは訊いた。
「そうなの!? 私、てっきり――ユーリシアからそう訊いたから……」
フィレイナは悩んでいた。
「そういえばこの間、ここに来てたわね。
もしかしたら誤解したままかもしれないわね――」
誤解か……リフェーラは考えると、フィレイナは改めて言った。
「とにかく、私の産んだ子供はあんたたち4人だけよ。
リフェーラ、リアンナ、ユーリシア、カリナ、あんたたちの4人だけね。」
人呼んで”リリユカ四姉妹”――おい、意外と子沢山じゃねえか……。
リフェーラはアリフローラと一緒にいると、そこへリアンナが現れた。
「あら、リフェーラじゃん、どうかした?」
「リアンナ! この娘は孤児なのよ!」
「でしょうね、どう見ても私たちと血が繋がっているような顔はしてないからね。」
リアンナは性格も母親そっくりだった。
「アリフローラ、こっちはリフェーラって言うのよ。
私なんかよりはちょっと気が強くてそそっかしいところとかあるけどその分無茶苦茶頼りになるお姉様だから安心してね。」
「ちょっと! 誰がそそっかしいですって!?」
「じゃあ……抜けてるって言ったほうがいい? だからその分可愛げがあんのよ。」
「だったらあんただって抜けてるところあんじゃん! 可愛げがあるわよねえ!」
「ええ、知ってる。だからって男作れるかって話とは別だけど。」
「私だって恋愛とは縁がない女よ!」
何を言い争っているんだ……だが、アリフローラはそんな2人を見ながら楽しそうに笑っており、
リフェーラもリアンナも笑っていた。