メテオ・ナイツに戻り、フィレイナは医療用のカプセルへと直ちに入れられることとなった。
そんな彼女のことを大勢が見守っていた、なんだかんだで愛されてるな。
「お姉様……」
「お姉様、なんとかご無事で――」
女性陣はこんな感じだが、その一方で男性陣からも――
「美人なのに怖い人だけど……」
「面白い人ではあるよな――」
「ああ……美人なのに向こうから気さくに話しかけてくださるんだ、
ちゃんとやってるのかーとか、女の子に見惚れてんじゃないわよーとか……」
「元気になると……いいよな――」
と、一定の評価を受けている彼女、面倒見の良い女性というのは伊達ではないということか。
数時間後、テレイズとカルディアスたちは別室で話をしていた。
「カプセルに入るのは嫌だって言うけど、結構何度もお世話になっているのよね――」
テレイズはそう言うと、カルディアスは悩んでいた。
「フローナルが言っていたな、無茶をしなければ彼女じゃない気がするとな、
まさにそういうことか――」
テレイズは頷いた。
「ええ……だけど、そのおかげで私たちは結構助けられているのも事実……
でも、彼女の場合は無茶をしなければならないとかそう言うのじゃなく、
無茶を無茶だと認識してやってないからってことに過ぎないのよ――」
そこへシェリアが――
「お姉様は伝説のプリズム・ロードに近しい方ですね――」
プリズム・ロードというのはまさにプリズム族の生ける伝説的な存在であるのだが、
そもそもプリズム族といえば癒しの精霊様とも呼ばれる通り、
こと命に関しての行いについては特に気高い――とはこれまでも語られている通りではあるのだが――
「だからってみんなの命を守るために自分の命を危険にさらさなくたって――」
と、ディルナは肩を落としながら言う。それについてテレイズは言った。
「自分は700年も生きているし、今更何をするにしても悔いなく生きてきたからいいんだって。
私はそんなこと言わないでって言うんだけど、彼女は言うのよ――
自分よりもはるかに短い生涯を終える子がいる――しかも長寿を全うすることなく終える子がいるのが不憫でならない。
だから今度はその命を私が守るべきなんだって……どうせいずれかは果てる命なんだから、
このまま何もせずにじっとしているぐらいなら、できればそういう子たちのために命を使いたいなって――」
それはむしろ伝説のプリズム・ロードそのものではないのだろうか。
「それをナチュラルにこなしてしまうとは――
確かに、あのままでは我々は全滅していた――彼女がいなければ助かることはなかった。
しかし……力だけでなく、知恵でも高性能のコンピュータを凌駕する能力の持ち主だった――
力と知恵とそしてまさに優しさを備えた伝説の英雄といっても過言ではないな――」
カルディアスはそう言うとフェルメリアやアルドラスも賛同した。
「フィレイナお姉様に叶うお方はこの世にいません。
彼女こそが真の勇者そのものですね――」
「ったく、世の中とんでもない女がいたもんだ……
そんな人と一緒に仕事ができただなんて――」
さらにシェリアとディルナも――
「伝説のプリズム・ロード……プリズム族の生き方をお姉様が示してくださったこと、私は忘れたりしません!」
「伝説の英雄ってだけじゃないよ! 伝説のクリエイターでもあるからね!」
そしてララミィも――
「わらわがいただいた血……わらわの行いもまたプリズム族の生き方を示す者として恥ずかしくないようにせねばなるまい……」
それぞれフィレイナの生き様について語っていた。
フェレストレイア星に着く頃には目を覚ましていたフィレイアだったがもはやベッドから出られることはなく、
絶対安静を余儀なくされていた。
「やれやれ、この程度でざまぁないわね……でも、確かに最後の魔法は自分でもやり過ぎたって自覚しているわね――」
もう、部屋というか、神殿ごと全部破壊してやるっていう勢いだったもんな……。
「でも、あれのおかげで神殿のシステムがロストしたのも事実……帰り道は楽だったわよ、
あなたを運び出す上では特にね――」
テレイズはそう言うとフィレイナは楽しそうに答えた。
「伊達に700年生きてないからね、あれぐらい当然よ。
でなければお前一体700年何してたんだって言われるのがオチよ。」
言われるわけないだろ。それに当然とは思えない。
そして――
「ねえ、ちょっとお願いがあるんだけど、いいかしら?」
フィレイナは訊くとテレイズは頷いた。
「……わかったわ、これでいい?」
テレイズは窓を開けた……気持ちの良い風が入り込んでくる、
外の景色は緑の木々が生い茂るなんとも健康的な光景――
「まだ寒くなるには早いかしら、ちょうどよかったわね。
ところで……フェルドゥーナ歴だといつぐらいになるのかしら?」
「今日? 3月11日って聞いたわね? それが何か?」
テレイズに言われてフィレイナは頷いた。
「訊いてみたかっただけ。
だって……私らって元は向こうの生物なんだからさ、一応ね。」
それもそうか。そしてフィレイナは――
「さて、しばらくおいしい空気でも吸ってようかしらね――」
と、フィレイナは大きく息を吸い込んでいた――
その様子に、テレイズは……そっと部屋を出た――