運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第4章 未来をつなぐ者たち

第90節 カルティラ神殿

 そして……遺跡の入り口が発見された。 その遺跡というのはもちろんカルティラ神殿なのだが――
「ここがカルティラ神殿であっているのか?」
 カルディアスはララミィに訊いたが――
「先祖たちは地中に沈めたとはいうが、それ以上のことはわらわにもわからぬのじゃ、 それが建造物なのか、それとも天然の洞窟のような場所なのか――」
 それなら無理もないか。ただ――
「この奥からとてつもないエネルギー量の何かがあるわね――」
 と、フィレイナはコミュニケーターを取り出して言った。
「そんなにはっきりとわかるものなのか?」
 カルディアスは訊くとフィレイナは頷いた。
「この距離からすると……案外近くにあるわね。 ただ……それがオーパーツによるものなのかどうかは不明ってところね。」
 あ、そういうことか……カルディアスは悩んでいた。
「それなら行ってみましょう!」
 フェルメリアはそう言うと、アルドラスも続いた。
「だな! 行ってみるしかねえってことだぜ!」
 お前はわかりやすい奴でいいな。

 遺跡の入り口はしばらく真っ暗な洞窟がまっすぐ伸びているだけだった。 途中で階段があり、下のほうへと向かっているような感じだった。
 すると、次第に……
「なんか、下のほうが明るいですね?」
 ディルナはそう言うとシェリアが言った。
「行ってみましょう!」

 が……明るいところへと出ると装いが一変し、 そこはまるで神殿の内装というのとは次元が異なり、 どう見てもコンピュータの中にでも入りこんだかのような超未来型の建物の中という感じでしかなく、 あちこちで何らかの信号線のようなパイプが光っていたりなんかして、 もはや理解に苦しむような光景でしかなかった……。
「一体なんなんだここは!?」
 カルディアスは驚いていた。
「もはやわらわの理解を超える空間じゃ、 エルクザートの文明のそれというよりはお主らの文明のそれに近いものを感じるぞ。 そしてそれが30億年前にはあったということになりそうじゃな――」
 ララミィはそう言うとフィレイナも言った。
「そうね、30億年前のご先祖様の文明もこのレベルにまで達していた世界だったと考えるのが妥当ってわけね――」
 カルティレス=アスロディス……一体何者だったのだろうか。

 どんなところにも魔物はつきものだが、 恐らくセキュリティなのだろうか、機械の敵もいるようで、攻撃手段が苛烈だった。
「なんだあの球体は!」
 アルドラスは必至にガードしているが――
「ぐはぁっ!」
 もはや意思を持っているかの如く、アルドラスめがけて飛んできた!
「スキありです! てやあっ!」
 そこへフェルメリアが球体の背後へとすかさず回ると――
「エアリアル・ダンス!」
 風の精霊の力で強烈な風圧波を発し、前方の敵すべてを吹き飛ばす剣の舞!
「強っ!」
 ディルナをはじめ、彼女の圧倒的な力を前にして何人かが驚いていた。
「フェリシアも闇女神抜きにすれば相当の手練れだったって訊いたことがありましたが、 その力も彼女に継承されているってわけですね――」
 シェリアはそう言った、そうなのか?
「確かに……詳細まではわからんが、 フェルドゥーナではフェリシアの都を守る聖獣として聖獣フェリシアがいるし、 それに、フェリシアの都で祀られている英雄の女性像―― そう考えると英雄の女性像の元になったフェリシアは相当の使い手だったことは間違いなさそうだが……」
 そう言われてみればなるほどである。

 しばらく進むと、そこには無数の死体が――
「こいつら! バルザンド帝国の兵士か!?」
 アルドラスはすぐさま気が付いた。 そしてその近くには何らかの機械兵器がスクラップ化しており、完全にロストしているようだ。
「どうやら多大なる犠牲を払って激戦を制した後のようだな……」
 カルディアスはその光景に唖然としながら言った。
「見てみよ……」
 さらにララミィが、道から外れた所に放り出されている者を指さしてそう言うと……
「酷い……」
 シェリアは目を潤ませていた。
「バチが当たったのよ! まったく、エルクザートをこんなんにしちゃって!  なのに……絶対に一番偉いやつがこいつらを盾にして突っ切っているわよね!」
 それはますます酷い。
「なら、話は簡単です! そんな人にはキツイお仕置きが必要です!」
 フェルメリアはそう言うと、全員で頷いていた。

 さらに一行は先に進んでいた。ところが――
「お姉様! 大丈夫ですか!?」
 と、ディルナ、フィレイナは汗をびっしょりと流しており、息を切らしていた。
「ええ、大丈夫よ、敵がちょっと強いというか…… 自然の魔物ならまだしも未来型のセキュリティ相手だからちょっとね……」
 年寄りには少々きつかったようだ。
「いったん休みます?」
 ディルナは心配そうに尋ねると、フィレイナは頷いた。
「平気よ、ありがとう、ディルナ。 ちょっと、戦い方を変えたら楽になったからとりあえずこのまま行くわね。」
 と、なんとかゆっくりと動いて先に進み始めた、本当に大丈夫か……?
「無理はしたらいけないぞ……?」
 カルディアスも彼女の様子を見て心配しているが、フィレイナは首を振った。
「ここまで来てそれは言いっこなしよ。」
 確かに……既に手遅れか。