運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第4章 未来をつなぐ者たち

第88節 新たなる戦いの叙事詩

 エルクザート……フェルメリアたちはかの地に降り立った。 周囲は不毛の荒野が広がるなんとも殺風景な土地だった。
「ここが我が祖が降り立った地なのか……。 にしても強制テラ・フォーミングとやらはなんとも酷いもんじゃ、 町はおろか、建物の瓦礫一つも残っとらんぞ……」
 ララミィは丘の上から荒野を見渡していた。
「ララミィさん――」
 シェリアは心配そうに訊くが、ララミィは――
「案ずるな、わらわはこの程度で凹むようなタマではない。 世界の崩壊が迫っておるのじゃろう?  クヨクヨするのはすべてが終わってからじゃ!」
 強いのですね――シェリアはそう訊くとララミィは首を振って答えた。
「わらわは一族を束ねる長じゃからのう、必要なことじゃ。 それに……ここで立ち止まっていたら亡くなった者たちに示しが付かぬ…… ララミィよ、泣く暇があったら立ち上がり進め―― そう言われているような気がするのじゃ。 だから――わらわは何があっても進まねばならぬのじゃ!」
 亡くなった者たちのためにも――シェリアは考えた。
「そうですね! みなさんが守りたかったものを守りに行きましょう!」
「うむ! それこそが我らの責務というものじゃ!」

 フィレイナは目を瞑って立っていた、吹き荒れる風によって彼女の服ははためいており、その姿はまさに神秘的な美女…… とは素直に言えないのが残念な御仁なのだが、フィレイナということを度外視すればまるで夢にまで見たような美女―― と言ってもいいだろう、彼女はそう言う女性である。
「どうしたの?」
 テレイズは訊いた。
「ええ、いよいよね――」
 フィレイナはそう言うが、どうしたんだろう? テレイズはさらに訊いた。
「一つ、頼まれてくれるかしら?」
 なんだろう?
「フローナルのことだけど……」
 えっ? このタイミングでどういうこと? テレイズは焦っていた。
「ううん、やっぱり何でもない。」
 どうしたんだろう――テレイズは悩んでいた。
「遠慮しないでいいのよ?」
 フィレイナは頷いた。
「そう……じゃあ一つだけ。武器の使い方……覚えてるわよね?」
 違う話題になったようだ。
「え……ええ、それがどうかした?」
 フィレイナは頷いた。
「それだけよ。なんたってこんな土地だからね、いざって時に剣が振りかざせないようじゃあ困るでしょ?」
 それはそうなんだが――
「でも――私が実戦することは禁止されているけど――」
「だからいざという時なのよ。 何があっても困らないように準備だけはしておきなさい、わかった?」
 テレイズは頷いた。
「わ、わかったわ。フィレイナの方こそ、気を付けてね――」
「ええ、私に任せておきなさい。」

 カルディアスは新しい銃の使い勝手を試しながら戦闘部隊に指示を出していた。
「艦長!」
「ああ。とにかく、バルザンド帝国の残党に気を付けながら捜索してくれ。 連中は発見次第拘束だが、戦闘になった場合は――」
「止む無し、ですね――」
「……ああ、それでいいことにしよう。 だが、できることならなるべく取り押さえてくれ――」
「取り押さえても収容する船がないっすよ――」
 それもそうだ――カルディアスは悩んでいた。 メテオ・ナイツは探査艦、連中を運ぶ場合は――
「最悪、全員射殺ってことで――」
「……したくはないが、それしかないのかもしれないな――」
 もはや苦肉の策である。
「既に連中の船をぶっ壊していますからねぇ……」
 と、ディルナ――それもそうだ。彼女もまた、新しい武器の使い勝手を試していた。
「フィレイナさんは何とも精巧なものを作るものだな、 これがまさしくシルグランディアの手がけた作品というわけか――」
「ですね! 本当にすごいや!  私もやってやれないことはないけど――でも、 こんな発想をして実現化させるだなんてことはもはやお姉様にしかできないことだと思います!」
「そ、そうか……私には構造を見せられても何が何だかさっぱりだよ。 せいぜい部品を分解したり組み立てたりするところまでが精一杯だ……」
 やっぱりフィレイナはやばいらしい。 とにかく、各人に新たな武器が割り当てられたらしい。