運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第4章 未来をつなぐ者たち

第85節 未来のために

 フェルメリアの無双っぷりを垣間見たカルディアスら、これなら大丈夫だろうと判断していた。 それにより、彼らが次に向かったのはあそこである。
「エルクザート……やつらは何のために”トリュオン”を――」
 と、ララミィ――そう、次の目的はそれである。 だが、艦内のムードはむしろお祭りモードだった、それは――
「何をしておるんじゃ?」
 彼女は訊くとディルナが答えた。
「そんな気分じゃないのにごめんね、フローナルもあんななのに……。 私たちの星ではもうじき年を越すっていうことで新しい年を迎えるために祝うのよ」
 デーモン・カリスにはそういう行事には馴染みがなかったが、 ララミィは説明を受けて興味を示していた。
「なるほど! 新しい時代はいい行いになるようにと祝うのじゃな!  それならばわらわもそなたたちに合わせねばならんのう!」
 自分たちにとってもいい年になるように―― 確かに、そう言われると自分ばかり沈んでいる場合ではないのかもしれない。 けど、いいのだろうか?
「わらわだけが生き残ったことにはきっと意味があるのじゃ!  じゃからそれについて感謝し、そして我らの未来のために祝うのが道理なのじゃろう!」
 自分は一族を束ねる長なのだからそれについての責任がある、 そして自分だけが生き残ったということは自分たちの未来のために頑張らなければいけない義務がある―― 彼女はそう考えているのだそうだ。
「強いんだね――」
 ディルナはそう訊くとララミィは首を振った。
「強がっているだけじゃ。 それに……わらわはむしろそれを教えられたもんでの、 じゃからそう考えるよりほかなかったというのが正しいのかもしれんのう」
 フローナル……ディルナは考えた。
「私たち、みんなから未来を託されたんですね!  そう考えると――確かに、みんなのためにもくよくよしてられませんね!」
 ララミィは得意げに頷いた。
「うむ! まさにその通りじゃ!」
 すると、まさにそれを体現した女が目の前で山のように飯を平らげていた。
「わらわも負けてはおれんのう!」
「私も負けないぞー!」
 いや、だからってそこで競わんだっていいでしょ。

 カルディアスとフィレイナ、そしてテレイズが話をしていた。
「そういえばそちらの新年を迎える時期はあっているのか?」
「あと3か月程度先ってところね。 今はむしろ収穫祭の時期、まさに実り多き時期の真っ最中よ。」
 カルディアスの問いにフィレイナはそう答えた。
「そうか……フェルドゥーナの文化に合わせてもらってすまなかったな」
「いいのよ、郷に入っては郷に従えっていうでしょ?  それに楽しかったからむしろこっちのほうこそ楽しかったわ」
 カルディアスは聞くとテレイズはそう返した。
「フェルドゥーナ星の暦は”ヴァナスティア”基準?」
 テレイズはそう訊くとカルディアスは頷いた。
「詳しいな、まさにその通り……これは大昔から変わっていない――」
 そう言いつつカルディアスは窓のスクリーンを開き、艦の外の光景を出していた。
「本当にこの世界は滅びてしまうのだろうか――」
 憂い気に言うカルディアス、フィレイナは答えた。
「フェレストレイアでも世界の滅びについては散々議論されていたことなんだけどね、 結局のところ、間違いなく滅びる――という結論に達したのよ。 それがまさかこんな形で実現していくもんだと思ってもみなかったけど――」
 カルディアスはため息をついていた。
「が、だからと言って誰に掛け合っても信じるわけない、 だから今まで言わずにいたということか――」
 テレイズは頷いた。
「ええ。ただ、それがどうしてなのかはわからない―― どうして今になって急にこんな自体になり得るのか……」
 そう言われ、カルディアスは目を瞑って考えた。
「”何もなくなってしまった世界の再生は困難を極めるが、 それでも世界が残っているののなら再生は易しい”―― これまで世界の滅びというもの自体は何度か経験しているようだが、 世界がなくなるということ自体は未経験だということか――」
 フィレイナは頷いた。
「”エターニスの理論”ってやつね。 確かに、なんでもいいからとりあえず形が残っているのと、材料も設計図もないのとじゃあ雲泥の差よね。」
 カルディアスは考えていた。
「そう言われてみると、意外と理にかなった理論なのだな。 我々としては世界が滅びようとなくなろうとさほど違いがないように見えるのだが――」
「今の文化でこうして生活しているうえではね。 世界が何らかの形で残れば―― 同じ星のもとに生まれることはないかもしれないけど、 それでも何らかの希望は見いだせるかもしれない…… 私たちにできることは多分そのぐらいのことなのかもしれないわね――」
 テレイズはそう言うとカルディアスは悩んでいる一方、フィレイナは――
「そうね、私たちの最後の仕事ってところね――」
 そう言いつつ、アリフローラのコミュニケータをじっと眺めていた。