運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第4章 未来をつなぐ者たち

第84節 カルディアスの親心

 カルディアスはある光景をじっと眺めていた。 そこへアルドラスが――
「俺のこと呼んだっすか?」
 と訊いてくると、カルディアスは言った。
「お前、フローナルと同期だったか?」
 アルドラスは答えた。
「配属は違うんですけどね……」
 すると、カルディアスの目線がどこに向いていたのか、アルドラスはすぐに察知した、 その光景はあの女性陣、フェルメリア、フィレイナ、シェリアとララミィ、 そしてテレイズとディルナまで一緒にいた。
「彼女のことなんだが――」
 そして、その女性陣の中でもフェルメリアを見ていた――。
「フローナルなあ……シェリアさんとも仲がいいっていうのにフェルリン様まで…… しかもまさかの同郷で知り合いで案外仲がいいなんて、羨ましい……」
 そ、そんなもんか……カルディアスはそう思いつつも、アルドラスのほうに向きなおった。
「彼女のことだが……フローナルの代わりに頑張ろうと躍起になっている―― 彼女もまたフローナルとは同郷……つまりエターニスの精霊だ、 何かしらはうまくやってくれるとは思うのだが――」
 そう言われてアルドラスは考えた。
「つまり、艦長としては不安なんですね?」
 カルディアスは首を振った。
「私は……いいんだ、ただ、フローナルとしてはどうなんだろうなと思ってな――」
「余程フローナルの肩を持ってるんっすね」
 それはそうだ、だって、カルディアスとしてはやはり最初にヴァナスティアから言われたエターニスの精霊の件…… 自分が認めたフローナルだからこそというところはあった、だが……それが彼女だということになると、少々話が変わってくるのだろう。
「どうなんすかね? 俺、フェルメリアさんについても正直、女神フェルリン様っていう認識でしかないんですよ。 だからいいとか悪いとか全然判断できねえんですが――まあ、彼女の姿勢次第じゃねえですかね?  俺もこの仕事を始めた時はそんな感じでした、彼女を見てやってくれればいいと思いますよ?」
 というと、アルドラスは照れたような感じで続けた。
「言っても、やっぱり女神フェルリン様は女神フェルリン様っすからねぇ!  俺としては純粋に彼女が一緒だったら嬉しいっていうこと以外の何物でもないっすねえー♪」
 アイドルか……。まあ……彼女がどこまでやれるのか、 とりあえず彼女の言うことを信じてみるか、カルディアスは彼女を見ながらそう思った。
「フローナル、彼女の決断だ、お前の代わりに彼女を使うことにするぞ」

 翌日――
「艦長様! お呼びでしょうか!?」
 カルディアスは彼女を呼び出した。
「ああ、まずは今後の予定について話しておかないといけないと思ってな――」

 彼女はカルディアスの話を聞いていた。 そんな彼女に相変わらず男たちは見惚れていた。
「世界が滅びてしまうかも、ということですか……」
 なんだかあっさり信じそうだな、カルディアスはそう思った、大丈夫かこの娘――
「確かに、周りから生命の反応……”マナ”が次々と消えている状況がわかる気がします、 本当に世界は消滅してしまうのでしょうか――」
 彼女は憂いでいた、やはりエターニスの精霊というのは本物か……カルディアスはそう考えた。
「だけどそうは行きません! 私はフローナルさんの意思を継ぐことにしました!  彼に代わって私が頑張ることにしたんです!」
 そう言う彼女の実力を見てみるか……カルディアスは考えた。

 フェルメリアは惑星UFP065277へと降り立った。 惑星ラブラブらーにゃと同時にフェルドゥーナより指令があった惑星である。 ラブラブらーにゃは救助要請のため優先されたのだが、今回は――
「うわっ、風が強いですっ!」
 大気はあるが風が吹き荒れる惑星、 一緒に降下転送したカルディアスは慌てていた……彼女の服装的に風が巻き込まれると確実にスカートが……
「……え?」
 めくりあがらなかった、そっちの意味ではセーフ! ……って、なんか妙な感じである。
「艦長! 女神フェルリン様のスカートは鉄壁反重力スカートなんすよ!」
 と、中のクルーが揶揄うように伝えてきた。
「何を言ってるんだお前たちは! ったく……彼女が嫌がるだろうに――」
 が、しかし、フェルメリアは――
「そんなことないですよ♪ みなさん、応援してくださるので私はうれしいです♪  それに、私のスカートは本当に鉄壁反重力スカートなので見えることはありません!  ご心配いただいてありがとうございます♪」
 なるほど、エターニスの精霊、こういう価値観か……カルディアスは悩んでいた。 それに本当に鉄壁反重力スカート……エターニス発のアイドルというのはある意味たくましいものだなとカルディアスは悩んでいた。 ただ……カルディアスには彼女ぐらいの歳の娘がいる、だから心配は心配である。 そう、他の男が彼女に下心、スケベ心を抱いている者が多い中、カルディアスが彼女に抱いている者は親心だった。 こういったところも彼女がフェリシアゆえに異性を引き付けてしまう特性によるものである。
「フェルメリア! 無理はしなくていいからな! ダメだと思ったらすぐに引き返すのだぞ!」
 カルディアスもまた完全に彼女に心を奪われていたということである……。
「艦長ー! いくら何でも心配しすぎっすよー!」
「そうですよー! 女神フェルリン様の美しさを前にして敵などいねえんですから!」
「そうっすよ! 女神フェルリン様最強説っすよ!」

 と、男たちが言うのだが、確かに彼女は強かった……。
「はぁっ! やぁーっ! たぁーっ!」
 もはやイメージとは異なるほどの鋭さと、イメージ通りの麗しい剣裁き…… そんな華麗な立ち振る舞いで彼女は敵を翻弄し、美しく異邦の魔物を葬り去っていた……。 そしてその際もやはり鉄壁反重力スカート……
「艦長さん! こちらで遺跡を見つけました! 今、情報を送ります!」
 と、早速コミュニケータで――すごい! スペック高いぞ彼女! カルディアスは感動していた。
「解析完了です! それでは、内部に侵入します!」
 お願いします! 親バカモードのカルディアスはすべてを彼女に委ねることにした。
「魔物発見! 直ちに排除します!」
 彼女はすごい……。
「見つけました! コンテナです! 安全を確保しましたので収容願います!」
 彼女はすごいぞ……
「要救助者が1名います! 救護班をお願いできますか!?」
 彼女は絶対にすごいぞ!