フィレイナはリフレッシュルームへと赴こうとしていた。その途中――
「あら? フェルメリアじゃない?」
彼女はフローナルの部屋の前の展望通廊で外をずっと眺めていた。
彼女の声に反応して振り向いた。
「あっ、フィレイナさん!」
フィレイナは嬉しそうに彼女に寄った。
「やっぱり可愛いわね! 一緒にもっと話でもしない?」
フェルメリアは嬉しそうに答えた。
「そういうフィレイナさんこそ綺麗な人ですね! お話ししましょうよ♪」
フィレイナとフェルメリアは仲良く話をしていた。
そこへシェリアがやってきたが、フェルメリアはなんだか申し訳なさそうな顔をしていた。
「ど、どうしたの!?」
フィレイナは彼女の様子を見て心配していると、シェリアは嬉しそうに言った。
「フェルメリアさん♪ 私は気にしてないから大丈夫ですよ♪」
えっ……フェルメリアは恐る恐る話を聞いた。
「だって、操られていたんですよね!
それなら、仕方がないと思いますし、何より……私たちの力を悪用する人がいることが許せません!」
そういえばそういう種族性だったっけ……フィレイナはそう思った。
すると、フェルメリアは――
「だけど、私……いいのかな……」
とても不安そうな彼女だが、シェリアは優しく駆け寄った。
「いいと思いますよ♪
それに、自分の能力で多くの男の人たちを飲み込んでしまう力……
私たちの掟では禁じられているとはいえ、私もできることならやってみたいなって思ってますしね♪」
なっ、なんと! フィレイナは興味を示した。
「あら♪ シェリアってなんだかんだで女やってんじゃないの♪
……ちょっと言い方失礼だったかもだけど――」
「そんな失礼なんてことないです! フローナルさんにも似たようなこと言われてますからね!」
あの男、マジか……フィレイナは悩んでいた。
「私は……そもそも”プリズム・ロード”となるために修行中の身なんです、
だから本来ならそんなこと考えたらいけないんです。
だけど……流石にフェルドゥーナ星のような文明の生きた星で”女神様”を名乗るわけにはいきませんが、
大昔のフェレストレイア星みたいな無秩序な星を秩序ある星に変えて平和な世界を作ってみるのも面白いかなって思いました!」
なるほど、これは――フィレイアは考えた、
プリズム族として掟から解き放たれるだけのことはある娘だなと考えていた。
プリズム女は意外にも男を巡って醜い喧嘩をしないのも特徴である。
それは一つに自分たちが妖魔の女であるための自信と誇り、
さらには最大の理由としてそもそも種族のオスというものを知らない環境で育っているために、
未知の者に対する警戒心のほうが先に出てしまうが故のことである。
彼女の警戒心についてはまさにカルディアスとの馴れ初めの件がすべてを物語っていると思ってもらえればいいだろう。
そして、無秩序な世界があれば平和を願って自らの身を投げうつことも厭わない……
”女神様”となって世界に秩序をもたらす存在となるのか、命のために――
まさに癒しの精霊たる彼女らの命に対する考え方が出ているところである。
同じ女という種族でも、こういう考え方も女もいるのか――フィレイアは考えた……って、
そもそもあんたという女が一番特殊な女だと思うんだが、それは?
あの後、フェルメリアとシェリアはすっかりと打ち解けていて、とても仲良く話をしていた。
「フェリシア様は私たちにとっても女神様に等しい存在なんですよ♪
だからフェルメリア様も私たちにしてみれば女神様になりますね!
フェルメリア女神様♪」
そ、そんな……フェルメリア女神様は顔を真っ赤にしていた。
「そ、それを言ったらシェリア様こそ、女神様に相応しいお方ではないですか……」
「確かにプリズム・ロードに選ばれるということはそう言うことかもしれませんが、
それでも本物になっている女神フェルメリア様と同じだなんておこがましいですよ♪」
「私のほうこそ本物だなんてとんでもないです!
絶対にシェリア様とフィレイナ様のほうが女神様に相応しいと思います♪」
え、私!? フィレイアは急に矛先が自分に向いたことで焦っていた。
「確かに! 私たちなんかよりもフィレイア様のほうがよっぽど女神様っぽいですよね!」
それは――フィレイナは言った。
「いやいやいや! 確かに私は勝利の女神だけど、流石に美神を語るにはおこがましいにもほどが……」
「フィレイナ様は美神ですよ♪」
「そうです♪ フィレイナ様はあだ名す者を美しく浄化する麗しの女神様ですよ♪」
「やーだもう! 2人とも! 私そんなんじゃないってば!」
「またまた♪ ご謙遜されなくたって♪」
「そうですよ♪ フェレストレイアでも美の女神様として通ってますからね♪」
「違うって! 通ってないって!」
なんだか楽しそうな会話である。
「面白そうじゃのう! わらわも混ぜてほしいのじゃ!」
そこへララミィも加わった。