そして、先に落ちてきたフローナル。
建物はおよそ5階、そこから各階層の床をすべて突き抜けて1階まで落ちてきたのだ。
エルゲリアスはアーマーから放り出されており、地面の上で完全に伸びていた。
「くっそ……また随分と無茶しちまったみてえだな――」
そこへ上から――
「シェリア! フェルメリア!」
と、上から2人の女性が!
気を失っているシェリアのほうにフェルメリアが向かっている!
そして彼女をキャッチすることに成功すると、そのまま――
「ごめんなさい! フローナルさん!」
フローナルの元へ! 彼は慌てて持っていたつ剣を手放すと――
「さあ、来い!」
エーテルで練ったネットを展開し、2人を待ち構えていた!
「うあっ……!」
と、先にシェリアが落ちてくると、それに続いて……
「フローナルさん!」
えっ……なんと、ネットどころかフローナルの腕の中に――
「はぁ、はぁ……よかった、何とか間に合って――」
……そ、そうか……それはよかった――フローナルは再び顔を真っ赤にしていた。
「な、なあ、フェルメリア――」
フローナルはドキドキしながら訊くと、
フェルメリアはフローナルの顔を見つめながら何か言いたそうにしていた。
だが……今はそんなことをしている場合ではない――
「ヤバイ! 建物が崩れるぞ!」
そう、複数の床が抜けていったことによる衝撃に堪え切れず、建物全体が倒壊しようとしている!
「フローナルさん!」
よし、出よう! そう言いつつシェリアを拾おうと前に出たフローナルだったが――
「うっ……しまった!」
彼の足が……振るえている……もう限界か――
「フローナルさん!」
すると、フローナルは――
「くそっ! まだ腕だけは動く! こうなったら!」
フローナルはなんとかエルゲリアスが乗っている強化アーマーに乗り――
「ぐあっ……くそっ――」
ちょうどその場へと落ちてきた瓦礫を受け止めた!
それと同時に近くにいたエルゲリアスはがれきの下敷きに……。
「フローナルさん!」
「言ってないでさっさと行くんだ!」
少しずつ崩落しており……
「いやあっ!」
さらにどんどん崩落!
「フェルメリア! いいから早くいけ! シェリアと一緒に早く行け!」
そんな……フェルメリアはうるませていた――。
「フローナルさん……」
「もう長くは持たねえ! 早く行くんだ!」
そんな……フェルメリアはさらに涙を浮かべていた……。
「忘れるなよフェルメリア!
お前ならアイドルだろうが勇者だろうが女王様だろうが聖女神だろうが闇女神だろうがなんだってできるはずだ!
だから……絶対に生きろ! 例え俺の身に何が起きても、例えお前が何者になろうとも、俺は常にお前の下僕だ!
必要ならいつでも俺を跪かせろ! お前の手足にしろ! そしてお前が何者なのか確認させてほしい!
それはお前が……お前こそが”フェルメリア”という最高の女だからだ!」
そう言われ、フェルメリアは涙を流していた。
そして涙を拭きとると、今度は――フローナルの隣まで行き――
「フローナルさん……ありがとう! そうです、私は女です!
だって、私が女であることを教えてくれたのはフローナルさんですからね♪
すべてフローナルのおかげなんです! 本当に本当にありがとうございます!」
といいつつ、彼女はなんと、フローナルをしっかりと抱きしめつつ口づけを……!
「フェルメリア……」
「フローナルさんこそ……絶対に死なないで――」
そして、彼女は涙をその場に残し、シェリアを抱えるとそのまま出口へと急いだ……。
一方のフローナルは何とも嬉しそうだった――。
「闇女神フェルメリア様のキスの味は最高だ! 俺はこの味に支配された!
闇女神フェルメリア様の命をずっと支え続けるぜ!」
それを訊いたフェルメリア、一瞬止まるとそのまま涙を拭いつつ、辛そうな面持ちで建物を後にした……。
そして――
「なっ……なんだって!? フローナルが……!?」
事の次第をカルディアスに伝えた彼女……。
「フローナルさん……」
シェリアはその場で落胆し、涙を流していた……。
「フローナルよ! 何をしておるんじゃあああああっ!」
ララミィの悲痛な叫びもこだましていた……。
そしてその後――崩れた建屋の中からエルゲリアスの遺体が発見された。
「バルザンド帝国もこれで本当に終わりだな――」
カルディアスは憂い気に言うと、次に現れたのが――
「フローナル! フローナルってば!」
フィレイナが慌てて駆け寄った。
「なんであんたが無茶してんのよ! 話が違うでしょーが!
どう考えても私が先! 私より先に逝くのは許さない! わかってんのそこんとこ!」
彼女の目からは大量の涙が――
「フローナル……」
「くっそ……こんなクソみたいな惑星でうつつ抜かしている間に……」
ディルナとアルドラスも悔しそうにしていた。すると……
「待って! みんな! フローナルは生きてるわ!」
えっ!? テレイズが彼の生存を確認していた、だが――
「むしろこの状態で生きているのも奇跡に等しいか……」
カルディアスは悔しそうだった、そう……彼の意識は戻ることはなかった……。
「フローナルさん……」
フェルメリアもまた、彼のその姿を見て涙を流していた……。