運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第4章 未来をつなぐ者たち

第79節 この一撃にすべてを

 フローナルはゆっくりと歩いていた……敵はこの先に……すると――
「くっ! なんだこのアバズレめ! どこにこんな力を隠し持っていたのだ!?」
 強化アーマーに乗り込んでいるエルゲリアスが目の前に!  フェルメリアから逃げてきたようだ……。
「うおっと! あぶねえ!」
 フローナルは間一髪避けた!
「くそっ、あれはなんなんだ!」
 だが、そこへフェルメリアの姿が――
「ん……? あっ! フローナルさん!」
 彼女は急に立ち止まるとおしとやかに両手をそろえつつ、 なんとも嬉しそうにしていた……。
「フェルメリア……? いや、お前……あれ……!? お前って女神……」
 と、フローナルの顔が真っ赤になってきて――
「あ! すみませんっ! そういえば敵を追っている途中でしたので失礼いたします!」
 フェルメリアはそのまま走り去っていった!
「な!? て、敵ってお前が……」
 互いに何があったのか……恐らくフローナルを誘惑した際のことを覚えているみたいだ…… 反対にフェルメリアはなんだか嬉しそうな様子だが―― ララミィは彼女に揺られながら考えていた。
「よ、よくはわからんが行くしかねえか……」
 フローナルはゆっくりと歩き始め、そして少しずつ走り出した。
「ただ……フェルメリアって結構強えんだよな……」

 確かに、彼女は強かった……。
「一撃一撃の剣撃が重く、アーマーが軋んでおる…… まさか、アバズレの女に作り変えた分の魔力か!?  いや……これはそれだけの芸当で得られるものではないハズ―― ここままではマズイ、かくなるうえは――」
 と、そこへいきなり跳び上がった!
「待ちなさい! 絶対に逃がしません!」
 そして彼女もまた跳び上がった! たどり着いたのは隣の建屋の中……
「おっと、そこまでだ! この女の命、どうなってもいいのか!」
 この女の命! そういえば!
「なっ!? しまった!」
 そう、シェリアだ……。 彼女は柱に貼り付けられており、その横には強化アーマーに乗っているエルゲリアスの拳についている銃口が――
「おい! 卑怯じゃぞ! 正々堂々と戦わんかい!」
 ララミィがその様を見て激昂していた。
「ククク……戦に卑怯も何もあるまい…… 切り札は最後に取っておくものだ……フハハハハ! フハハハハ!」
 フェルメリアは構えていた。
「道連れにするのであれば私だけにしなさい!  彼女は関係ありません! さあ、放しなさい!」
「残念だがそうはいかんのだ、私はこう見えて寂しがりなのでな―― どうせ地獄へ落ちるのであれば一緒のほうがよかろう!」
 フェルメリアは首を振った。
「黙れ! 彼女がお前みたいな臭い者と一緒に行くものか!  ふざけるな! さあ、彼女を解放しなさい!」
 なんとも麗しいお姿……
「わらわも臭いのは嫌じゃ! フェルメリアもそう言うておる! ゆえに地獄に行くのはお前1人じゃ!」
 と、ララミィが言うが、フェルメリアは……
「みんなが助かるのなら私は構わない!  それが例えこの身がずたずたに引き裂かれようと…… 私の心が悪に染まり正義の剣でうち滅ぼされることになったとしても!」
 こっ、この女、なんて高潔な……ララミィは感動し、フェルメリアに顔をうずめて泣いていた。
「お主みたいな女はまるで見たことがないぞ!  なんたる……! なんたる気高き心の持ち主なんじゃあ! うわあああん!」
 今度はウソ泣きではなくマジ泣き……そんな彼女に優しいまなざしを向けているフェルメリア。 だが、その時――
「なっ、何!? なんだ!?」
 建屋が妙な揺れを――
「なっ、何を!?」
 フェルメリアは動揺していた……
「何のことだ!?」
 エルゲリアスも動揺していた。そしてその時――
「地獄に落ちるのはお前だけで十分だぁ! ぐうぉぉぉおおおおお!」
 なっ、なんと! フローナルが天井を突き破ってエルゲリアスの元へと一直線!
「何だと!?」

 フローナルの一撃はまさに天空から地獄へ叩き落さんばかりの激しい一撃!  エルゲリアスに襲い掛かる!
「ぐわはっ! くっ、おのれ……おのれぇい! ならば死ねえ!」
 と、シェリアに向けて発砲! が、しかし――
「ぐぅっ……!」
 剣に押しつぶされているせいか微妙にトリガーに指が届かない!  さらに地面には大きな亀裂が!
「堕ちろおおおおおお!」
 重量オーバー! 床はアーマーの重さと衝撃に堪え切れず、そのまま抜けてしまった!
「うおおおおおお!」
「こっ、小癪なああああああ!」
 だが、床が抜けたことで近くにいたシェリアも――
「行けない! 彼女が!」
 と、フェルメリアもまたララミィをそこに置いて下へと飛んでいった!
「フェルメリアー!」
 だが……
「くっ、ここも崩れるか……みんな! 生きるのじゃ! 頼む!」
 ララミィはその場から叫んだ後、隣の建屋へと飛び移り、難なく脱した……。