そして……女神様のいる部屋に今度はララミィがやってきた……
「あれが女神フェルリン様というやつじゃな……
見るからにアバズレみたいな女じゃ……わらわもあまり他人のことを言えんがのう――」
扉の端っこから部屋の中の様子を眺めていた。
「なるほど、色香を使って施設中の人形を操っておるようじゃ。
想像以上の妖の香じゃ、何か道具を使わんとあそこまで出ることはないと思うのじゃが、
あそこまでとなると、人形からもより強力な妖の香が発せられるハズ、
つまりは外にいる男たちも、あの星の船も犯されておるじゃろうな――」
ララミィは考えていた。
「ということは、まずはあやつの誘惑魔法の増幅道具を止めねばな……」
と、ララミィは再び陰に隠れて考えていた。
「わらわももう少し本気を出さんとな……」
そう言いつつ、彼女は不気味な笑顔をしていた……
彼女の目はまさに邪悪な目……彼女の顔の右半分はまるで邪悪な魔人と言えそうなほどの様相だった……。
それで見えたものは――
「ククッ、わらわには見える……お前の醜悪な心がな!
さあ――その醜悪な心の中に抱えているものを見せてみよ!」
まさに悪魔! ララミィは女神フェルリン様の心を見ていた! どっちが悪なんだ……という感じである。
すると、彼女は表情を戻し――
「ふむ、なんと……妙な影が見えたな、それにあの者――」
ララミィは考えていた、どうしたもんだか――。
そしてララミィは意を決し――
「誰!?」
入り口付近で物音がしたので女神フェルリン様はそっちに注目した!
だが、ララミィは――
「えっ……? うっ……うっ……」
目には大量の涙をにじませ――
「うわあああん! うわあああああん!」
いきなり泣き出した!
「なんだ!? 何事だ!?」
そこへ奥の部屋からエルゲリアスが現れ、焦って事態を確認していた。
「なんだ、ガキか……しかしうるさくてかなわん! さっさと追い払え!」
そして彼女にそう命令した。
「はっ! 承知いたしました!」
だが――
「うわあああん! うわあああああん!」
泣いている……どうしよう……女神フェルリン様は悩んでいた。
「何をしている! さっさと追い払わんか!」
そう急かされ、女神フェルリン様は――
「じゃ……邪魔よ! あ、あっちに行きなさい!」
と、突き放しているようだがあからさまに動揺している……これは……
「うわあああん! うわあああああん!」
ダメだ……女神フェルリン様はさらに悩み……
「躊躇うな! ガキなど殺してしまえ! さっさと殺れ!」
そう言われた女神フェルリン様、そうだ、ガキなど殺してしまえばいい! 彼女はムチを振り上げると――
「うわあああん! うわあああああん!」
思いっきりムチを振り下ろ……
「だ、ダメ! そんなことできない!
申し訳ございませんエルゲリアス様!
こんな子供、すぐに放り出してきます!」
と、ララミィを抱えてその場から出ていった――。
その様子にエルゲリアスは――
「……泣く子と上司には勝てんとはよく言ったもんだが……もはや止むをえまい……」
ララミィのビジュアル最強説。
女神様はララミィを抱えていた。
とにかく泣き続ける彼女に困惑し続けており、そしていよいよ外へ……
3階の大きな窓から彼女の身を放り出そうと――
「なっ、泣くのをやめなさい! ここから放り出すわよ!」
それでも彼女は泣くのをやめない。
「いい加減になさい! 放り出すって言ってるでしょ!」
しかしそれでも彼女は泣くのをやめない。すると、女神様は――
「うっ、くっ……」
ゆっくりと彼女を3階から突き落とそうと、ゆっくりと――
「うっ、うっ……」
窓へとゆっくりと――
「ううっ……」
ゆっくりと――
「……ううっ……」
彼女の身を外に出――
「ダメ! そんなことできない! 私には……できない!」
彼女はそのまま諦めると、その場にうずくまり泣いてしまった!
するとそこへ、このタイミングを待っていたかのようにウソ泣きしていたララミィ、
にっこりとしつつ、再び邪悪な目で彼女の心をとらえた!
「クククッ、わかっておる……お前にはわらわを殺すことなぞできぬのじゃ!
さあ、見せてみい……お前の心はこのわらわが食いつぶしてやろうぞ……
クハハハハハハ! クハハハハハハ!」
もはや彼女は魔王である……デーモンの名を冠する一族を統べる王なのでまさにその通りなのだが。
するとそのまま女神様は気を失い――
「さぁて♪ ゆっくりと貴様の心を食してやろうとするかのう♪ 内面はとても綺麗な心じゃ♪
じゃが、お主の中では何かが邪魔をしておる……それを食らい潰してくれようぞ!」
と、早速ララミィの魔の手が彼女に襲い掛かる! が――
「ぎゃあ! 痛ぁっ! な、なんじゃこれは!?」
と、その手には何やら機械のようなものが……
「なんじゃこのカラクリは……まさか――」
さらに――その機械を足元に落とし――
「ふん、こんなもの……」
おもむろに雷の魔法を浴びせた!
「こうしてくれるわ!」
そしたら、女神様のほうにも異変が!
「ああっ! あああああっ!」
「何っ!?」
どうしたんだ!? ララミィは焦っていた――。
そして再び邪悪な目で彼女の心を覗き込むと――
「……影が消えた……なんとも穏やかで、クリーンな心の持ち主じゃ。
醜悪な心と言ったがその非礼を詫びよう……お主の心はとても不思議なぐらい綺麗な心じゃ……。
お主のような心の持ち主にはこれまで一度もお目にかかったことはないぞ、それぐらい素晴らしい心を持っておるの。
そうか、今のカラクリが彼女の心をすべて支配していたようじゃな――」