運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第3章 カルティラの黙示録

第67節 アイドルの星

 フェルリンちゃん推しのヲタクが女神フェルリン様のお姿を映した秘蔵のポスターを持っているというので見せてもらった女性陣……。
「やっぱりフェルリンちゃんって綺麗だねえ! 本当に男の子なのー!?」
「確かに、これは美人ねえ!」
「ほほう、これはなかなかの器量良しじゃのう!」
「やっばいわね……これはちょっとなでなでしてあげなくちゃいけないわねぇ!」
「え……プリズム族じゃないんですか!? え、男の子でしたっけ!?」
 さて、どれが誰のセリフか……わかると思うので割愛。
「そしてこれが女神フェルリン様グッズの中でも貴重な4分の1スケールのフィギュアだ! 俺は毎日これで抜いt……」
 女性陣一度に退場。
「……バカ」
 フローナルも一言残して去った。
「待っ……待ってくれ!  極めつけはこれ! 等身大のふぃぎゅ――」
 ヲタクはなんだか空しくなっていた。
「いいんだよ! 俺には女神フェルリン様がいるんだ! 女神フェルリン様は俺の嫁! 俺は女神様の下僕!」
 彼は女神フェルリン様のフィギュアを大事に抱いて泣いていた。

 ということで、惑星ラブラブらーにゃへと接近、降下転送にて降り立つことにした。 ラブラブらーにゃは無人惑星をテラ・フォーミングによって移植、 そして惑星フェルドゥーナで人気を博している女性アイドルグループの”ラブラブらーにゃ♪”の名前がつけられたという経緯のある惑星である。 なお、惑星名については一般公募により決定したんだそうな……余程人気があったことがうかがえる。
 銀河連邦による事業とのタッグとあらばアイドルを輩出する事務所としては逃す手はない……2つ返事での決定だったらしい。 フローナルが参加したイベントというのもこの惑星の命名によるアイドルの”ラブラブらーにゃ♪”とのコラボ企画だったらしく、 それ以後もなんだかいろんなことを手広くやっているのだという。
 ただし、惑星ラブラブらーにゃの開発はまだまだ発展途上、 正式な名前となっているわけではなく、連邦のデータベースにも”惑星UFP252839”としか登録されていない。 が、”ラブラブらーにゃ♪”推しの人たちの間ではどこから情報が洩れているのか、 惑星UFP252839はラブラブらーにゃであるという認識が一般的となっているらしい。
 さて、そのラブラブらーにゃにて、どのような用事で降り立ったのかというと――
「さあ、作戦開始だ!」
 と、カルディアスの指示で次々とクルーたちが降下される……なんとも穏やかな状況ではない。
「で、俺らは何をすればいい?」
 フローナルは訊いた。
「ひとまず、工場の状況を把握してほしい!  救出対象は見つけ次第、救出してくれ!」
 わかった――フローナルはそう言われ、現場へと向かった。
「私もフローナルさんと一緒に行きます!」
「ああ、そうしてくれ!」
 と、シェリアも一緒に向かった。
「ふむ……人命救助ですか――」
「帝国もせこい真似してくれんじゃん……」
 ララミィとフィレイナは2人の後姿を見て悩んでいた。

 何があったのかというと、あのバルザンド帝国が惑星ラブラブらーにゃに降り立ち、 惑星を占拠すると銀河連邦に宣戦布告してきたのだという。 初めのうちはどうしたもんだかと悩んでいたフェルドゥーナ側だったが魔物騒動とバルザンド帝国艦の消滅が重なり、 それどころではなくなってしまった。
 そして、バルザンド帝国がまさに弱体している今を突いてラブラブらーにゃ奪還作戦を展開、 連中に抑えられているという工場へと向かうことにした。
「なんの工場だ?」
 フローナルが訊くと1人の戦闘員クルーが答えた。
「貿易工場ですね、ラブラブらーにゃの対惑星間貿易のすべてをこの工場で一手に引き受けているのです」
 ということはつまり、この惑星のすべてを抑えられていると言っても過言ではない――。 すると……
「あのコンテナは?」
 そこには大きなコンテナが……しかし、それと同時に何とも異様な雰囲気を醸し出しているそこから妙な感じを覚えたフローナル。
「開けてみますか?」
「ああ、頼む……」
 フローナルは頷いた。

 フローナルは剣を構えてコンテナの前に立ちはだかった……。 そして、他の戦闘員やシェリアはコンテナの脇に構えていた。
「……開けるぞ――」
 フローナルはコンテナのレバーに手をかけ、息をのんだ…… 他の隊員にも緊張感が走る――
 そして……作戦開始! コンテナの扉は開かれた!
「動くな!」
 戦闘員は一斉にコンテナの中に向かって銃を構えた!  だが、そこにあったのは――
「ん、まさかこれは――」
「な、何っ!?」
「えっ、えぇ!?」
 隊員、フローナル、シェリアは中に入っているものをみて驚いた、それは――
「まっ、まさかこれは! 女神フェルリン様等身大フィギュアじゃねえか!?」
 う、うそ……何人かは目が点になっていた、しかも……
「すげぇ! 女神フェルリン様だ!」
「このようなところにフェルリン様がいらっしゃるとは!」
「全部で何体……いや、何柱いらっしゃるんだ!」
「フェルリン様!」
「俺の嫁様! 女神様!」
 フローナルは悩んでいた。
「なっ、なんだこいつは……本物? なわけないよな――」
「すごい……本当に可愛いですね――」
 フローナルは拍子抜けしていた……
「なんか妙な感じを覚えたんだが――」
「いえ、これは確かに妙な感じを覚えても仕方がないと思います――」
 いや、いいんかい。
「しかも! しかもマイクロでミニなスカートを履いてらっしゃるじゃねーか!」
「怪しからんがいい眺め! 鉄壁反重力スカート不能な素晴らしい夢の国を拝める絶景じゃねえか!」
 をい! 何を言ってるんだお前は!
「い……1柱欲しい……」
「フェルリン様……俺がここから救って差し上げ――」
「ダメだ! 気持ちはよくわかるがこいつ……否! このお方たちは証拠物件だ!」
 涙を呑むな。