運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第3章 カルティラの黙示録

第65節 最強の女の真骨頂

 そして……
「敵艦載機からの攻撃が被弾!  最新鋭の分解弾です! シールド出力40%……36%……28%まで低下!」
 と、その時……
「敵メイン艦から陽子砲の反応あり! 15秒後に被弾します!」
 すると……フィレイナは何も言わずに腕を組んだ……
「フィレイナさん! このままではマズイですよ! 指示をお願いします!」
 だが……彼女は沈黙を守っていた――
「敵メイン艦から陽子砲発射! 到達まであと8! 7! 6! 5! 4!」
 3……2……1――陽子砲が目前にまで接近!
「ふふっ、悪いわねぇ……」
 と、1をカウントされたと同時に彼女は不敵な笑みを浮かべつつレバーを一気に引いた!
「このタイミングでディメンジョン・ワープか!?  だが、陽子砲が目の前まで来ていては被弾は免れられ――」
 いや! そういえばディメンジョン・ワープだ!
「この”ディメンジョン・ワープ”、ワープ開始時の計算完了時点で軌道上にあったものはこの艦とは当たり判定の対象となるのよ。 言い換えると、計算完了時点で艦の軌道上に無ければ、ワープ開始時に万が一軌道上に流れ込んできても、 計算完了時点で軌道上にさえなければ当たり判定は無視されるっていう仕組みなのよね。」
 カルディアスはその言葉を思い出した、そう……陽子砲が発射されるまでには既に計算が完了しているから当たることはない……
「ワープ先は!?」
 そうだ、ワープというからには移動している……どこに!? カルディアスはふとモニタを見上げると、そこは――
「な、まさか――」
 そしてフィレイナは……
「ワープ完了、続いてディメンション・バスターの発動準備開始!  目標! バルザンド帝国戦闘艦! 計算……100%完了!」
 と、操作を正確にしている彼女――
「すっ、すごい集中力だ――精密なオペレーティングが必要な一連の行動を通しで――」
 クルーたちは息をのんだ……。
「行くわよ……これが、あんたたちに対する”審判の光”だ!」
 ディメンション・バスター発動!  そう、ワープ先はもちろん敵戦闘艦後方……背後から直接叩き潰す作戦だ!
「シールド出力をすべてフロントに回して!」
「しょ、承知いたしました!」
 そして……敵艦は大爆発! ものすごい衝撃がメテオ・ナイツに襲い掛かる!

 一連の行動を行った後の彼女、その場に突っ伏して気を失っていた、汗びっしょりだ――
「お姉様! 大丈夫ですか!?」
 シェリアやディルナ、ララミィを初めとする女性陣が一度に駆け寄っていた…… あんた、なにがどうあっても女性陣から支持集めているのね……。
「ごめん、流石に疲れたわ……こんなんご無沙汰だから、オペミスしなくってよかった……」
 その緊張感も半端なかっただろうな…… それなのに寸分も狂いなくこなすとは、そこは流石はシルグランディアということか……。
「私も見習わないと!」
 と、ディルナは意気込んでいた、頑張れ……。

 残党である敵艦載機、いくつか残ってはいるものの、彼らはどうしようもないことだろう。
「対分解弾シールド展開! こんなものまであるんですね!」
 オペレータは感動していた。
「裏の裏、裏の裏の裏、裏の裏の裏の裏…… 有事で考えられる不確定要素は確実に詰めておかないとこういう輩には対抗できないからね。 それから、取りついて侵入される可能性も考えてトラクター・ビームの牽引率を-6400%に設定しといてね。」
「なるほど! 承知いたしました!」
 すると、その時――
「なんだ、どうした!?」
 オペレータがカルディアスに言った。
「フェルドゥーナからの入電です!」
 このタイミングで!?

 ウィドラスは語った。
「ノディラス氏から事情は訊いた。 そちらから通信の技術提供を受けてなんとか通信することには成功しているが、 こちらも相当の被害を受けている、魔物もそうだが、帝国軍がな――」
 バルザンド帝国が!? カルディアスは焦って訊くが、ウィドラスは――
「いや、連中に関しては既に解決している、心配はない」
 どういうことだ!? ウィドラスは続けた。
「ああ、実は帝国軍に攻勢に打って出ようと検討したんだがな、 それでいざ出ようとしたら、連中の艦が謎の消滅をしてしまってな、 もはやこの世の終わりを見ているようだった……そう、 まるで闇に取り込まれたかのように、紫の瘴気のようなものが発すると――」
 えっ、まさかそれって――
「あそこまでやられてはバルザンド帝国ももはやなすすべもなかろう。 しかし……もはや世界の滅亡説というのもあながちなくもない話なのかもしれんな――」

 一方、カルディアスもこれまでの話を報告した。
「そうか、そっちも消滅する光景を見たのだな、よりによって惑星か――」
 さらに……
「しかも無条件強制テラ・フォーミング……最近では違法と定める組織が多い中、まだやっていたのか――」
 カルディアスは訊いた。
「どうしますか? エルクザートの”トリュオン”……」
 と、一応ララミィのことを気にしつつ話しているが、彼女は――
「わらわはどちらでも構わんぞ。 話を聞くに、連中は”トリュオン”を見つけられたとしてもあの星から脱する手段がない…… そう言う風に聞こえるでな――だから一旦は”トリュオン”のことを捨て置けとも聞こえる」
 ノディラスは頷いた。
「未開惑星の者とはいえ、なんとも高い判断力を持った者がいたものだ、まさにその通り…… 未開惑星だからというのは間違いかもしれんな。 それに”トリュオン”を用いた方策でもあればそっちに期待するという手もある、 わざわざ狙っているほどなのだからな」
 え……カルディアスは訊いた。
「バルザンド帝国に世界の滅びから脱することを委ねるという意味ですか!?」
 ウィドラスは頷いた。
「滅びから脱せられるのであれば手段はなんでもよいのだ。 連中のことだからこちらに益がないにしてもせめてヒントだけでも構わん。 とにかく最善の策を尽くすべき……ということだな」
 最善の策……
「おおっと、そうだ、今は惑星UFP086904……エルクザート付近にいると言っていたな?  実は頼まれてほしいことがあるのだが――」