運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第3章 カルティラの黙示録

第59節 タオスピレアの進撃

 里のほうに戻ると、そこでは――。
「撃てぇい!」
 なんと、それは銃だ! まさしく銃士隊なる者たちが住人たちを蹂躙している!
「なんだあれは! 魔法剣士云々とか関係ないじゃないか!」
 アルドラスは憤っていた、だが――
「違う! あれだ!」
 すると、次々と魔法の剣を振るった戦士たちが原住民たちを襲う!
「実弾で遠隔攻撃、そして接近では魔法攻撃…… 普通は接近物理で遠隔魔法だから完全にその逆ってわけね――」
 つまりは意表を突いた作戦……
「だったら意表には意表をついた作戦でやってやろうじゃないのよ。」
 と、フィレイアは戦場に躍り出た! すると――
「あの女だ! 撃て撃て! さっさと始末せぇい!」
 あいつは……団長ディルファーってやつだ、ちょうどいい―― フィレイアはそいつの前にやってきた……
「所詮は古いタイプの代物ね、そんなもので殺ろうと思っているのかしら? バカバカしいわね――」
 と、まさに銃の矢面という表現はどうなのかと思うところだが、 フィレイナは敵の前に立った――
「お姉様! あの飛び道具は危険じゃ!」
 ララミィは心配していた――するとディルファーは……
「何を言っているかさっぱりわからぬが――そのようなこけおどしが通用すると思ってか!  やはり貴様は悪魔の仲間! これではっきりしたな! さあ、地獄に落ちるがいい!」
 フィレイナに向けて発砲!
「お姉様ぁー!」
 ララミィの悲痛な叫び! が、しかし――
「ぐはぁっ……!? なっ、何故だ……!? どういうことだ……!?」
 なんと、ディルファーに被弾! 彼の身体には無数のトゲが突きたっていた!  そしてディルファーはその場で倒れた……
「だっ……団長がやられた!? ど、どうやって!? いや!  それはやはりこの女が悪魔だからこそ! 構わん! 怯むな! 撃て撃て!」
 と、次々に発砲! が、しかし――
「おい、魔法に疎い俺でもなんとなくわかるが、フィレイナさんがやってるのって――」
 アルドラスが訊くとフローナルは頷いた。
「ああ、何処からどう見てもごく普通の”ミサイル・ガード”だな」
 そう、いつぞやの遠隔攻撃耐性ミサイル・ガードは魔法でバリアとして展開することは一般的であり、 それこそ、彼らの装備の中でもフィレイナが張るような強力なバリアとまではいかないまでも、 それでもミサイル・ガードを展開する”ユニット”の携行をする者もいる。
 無論、フィレイナの張るような強力なバリアであれば、それこそ銃による攻撃など通用しないわけだが――
「でも、反対に相手に跳ね返しているような……?  ミサイル・ガードって抵抗力を高めるだけの魔法、跳ね返すほどの力ってありました?」
 シェリアは訊いた、だが――ディルナは気が付いた。
「違う……お姉様は跳ね返しているんじゃない、 そもそも相手が使っているのは銃、つまり――」
 フローナルは頷いた。
「ああ、俺も何が起きたのか一瞬わからなかったが、 そういえばそもそも銃での攻撃ってのは跳ね返る可能性があったことを忘れていたな――」
 そう、つまりは”跳弾”というやつである。 それこそ相手は至近距離の標的を狙っているがゆえに跳弾の被弾率も高い。 標的への着弾時に弾が変形してしまうこともあるが、 最も気を付けなければならないのがその際に弾が破壊し、 大量の破片が飛び散る可能性があることである。 それこそ特に――
「古いタイプの代物ということは、 文明レベル的に弾の製造技術もそこまでいっていないということが考えられます、 つまり――」
 と、ディルナが言うと……
「そうか! 弾がぶっ壊れやすいってことか!  フィレイナさんのミサイル・ガードにぶつかった際に大量の破片をまき散らされるっわけか!」
 アルドラスは気が付いた。
「ぐはぁっ!」
「うぐっ……!」
「なっ、なんだと……!」
 次々と死亡者が――
「ほら、撃ってみなさいな……」
 他の敵たちはビビって撃つのをやめていた――
「こっ、この女……やはりバケモノ!」
「ばっ、バケモノだ……!」
 すると、フィレイナは嬉しそうに言った。
「ふふっ、初めて知った? そうよ、バケモノよ、よく言われんのよ私。 ま、あんたたちの場合は持っている得物の使い方もろくに把握しておらず、 たかだかバカの一つ覚えで調子こいていた……それが敗因だと思って諦めるべきね――」
 すると――
「くっ、ならば――」
 と、今度は魔法を――
「やれやれ、そんなに死に急がんでもいいでしょ――」
 と、なんと、フィレイアは自分が携行しているハンドガンの早撃ち!
「ったく、使えるのは自分たちだけじゃないんだからそんぐらい想定しときなさいよ。 死んでから後悔しても遅いんだからね。」
 いや、あの……なんか超淡々とした様子で全滅させてしまうの、なんかやばくないですか。 しかも――
「今の……初弾所要時間0.28秒……いーや遅っ!  クイックドロウ向きのハズなのに腕落ちすぎでしょ!?  いよいよ死ぬのかしら私――」
 と、フィレイナはコミュニケータを見て悩んでいた、敵全滅させておいて言うことがそれですか……。
 参考までに、どこぞの某13スナイパーが0.15秒らしいがそちらはあくまで専門家、 そう考えると十分早い気がするが――
「……遠隔攻撃部隊はいなくなった、とりあえず残党を片っ端から片付けるか――」
 フローナルも冷めた様子で剣を引き抜くと、他の4人も彼と共に突撃、敵を片付けていった。
「流石にフェイズ・ガンは使えないけど銃が使える文明レベルでよかった♪」
 ディルナは調子よく銃を撃ち込んでいた。だが、銃の精度の高さは――誤魔化せばいいか。