フィレイナの血を食らうララミィ……
すると、彼女の背中から急に天使の翼の幻影ようなものが現れた!
それについて、彼女の”おつき”なる者が言った。
「翼が現れたのは力を得たことを意味する。
本来であれば邪悪な翼が生えるのだがララミィ様は心優しきお方、
聖なる者の血と合わさることでこのような神々しい翼が現れるのだ――」
そうなのか?
少し前にアルドラスを足やムチでボッコボコにしていたけど……まあ、アルドラスなら許容するだろうからいいか別に。
「だんだん血が抜けていく感触があるわね――量で言えば300まで行ったとこ?」
と、フィレイナ……250じゃなかったっけ?
「最低って言ってたからね。ほーら、たくさんお飲みなさいな……」
ちょっと! 大丈夫か!?
「ふふっ、いただいたぞ!
400と言ったから、これまで流した量を考えてだいたいいいところいただくことにしたんじゃぞ♪」
と、彼女は顔を上げて答えた。
どうやら終わったようで、フィレイナの流血も止まっていた……。
「あとは安静に――」
と、ララミィは優しく言うが、しかし……
「血がなくなったって思うとなんかお腹すいたわね! いよっっし! もう少し食べよっと!」
この人、いつものことだがもはや尋常じゃない量食べるんだ……フローナルは呆然としていた。
「おっ、お姉様! どうか安静に!」
「そうしたいところだけどどうしても食べ足りなくってね。ダメ?」
「そっ、それは……でも、お姉様が食べたいというのなら仕方がない――」
止めろよ! フローナルはますます悩んでいた。すると――
「……え!?」
フローナルの背後から妖しい気配が――
「こっ、これはまさか――」
フローナルは背後を振り向くと――
「言うたであろう、わらわが癒しの精霊となった暁にはまずはお主を幸せにしてやる、だから楽しみにしておれとな♪
それに……この力は不思議なことにお前を取り込むには十分な者を持っておるようじゃ♪
まさか、想い人とはフィレイア姉様のことか?」
と、彼女はまさに女帝の貫禄と言わんばかりにベンチの真ん中に色っぽく足を組んで鎮座していた……
いや、そんなまさか――
「ふふっ、そんなこと聞くまでもない……実際に試してみればいいのじゃからな♥」
と、なんと! 彼女の全身からものすごい量の色香がフローナルに襲い掛かった!
「わらわを抱け、そして愛でるのじゃ♪
今度こそわらわの美貌の虜として永遠の時を刻むのじゃ♥
目の前にあるのはごちそうじゃ……たっぷりと味わうのじゃ♥」
何故だ……今度は抗えない! 彼女が……愛おしい……とてつもなく、とてつもなく――フローナルは引き込まれた……。
「フフッ、素直じゃのう♥」
フローナルは愛おしそうにララミィを大事そうに抱きかかえた……が、しかし――
「ああ……なんかこう……その……悪くはないが、なんていえばいいんだ、その――まあいいか……」
表現に困っている様子、フィレイアはすぐに察した。
「ふーん……やっぱりフローナルお兄様ってわけか、妙にそんな感じがしたのよね。
ふふっ、てことはやっぱり私はフローナルお兄様の妹ってわけね♪」
いや、何を察してそう言う結論になったんだ……なんとなくわからんでもない気がするが。
それに対し、ララミィは考えた。
「そうか! ならば今後もフローナルお兄様に甘えてもいいのじゃな! フローナルお兄さま♪」
とりあえず危機は去ったということにしておくか……フローナルはとりあえず安心した。
でも、そんなに甘えたいか!?
「だってぇ♪ 全方位イケメンのお兄様ですもの♥
そりゃあ、女であれば誰だって甘えたいに決まってますわ♥」
と、フィレイナまでくっついてきた……お腹すいたんだろうが、さっさと食え。フローナルの悩みは尽きない。
フィレイナは襲撃された際の話をした。
「ふむ、ということはやはりタオスピレアの連中か……」
ララミィはそう言うとさらに続けた。
「ここ最近、時折ここの様子を見に来ては何やらしておるようじゃ、この里も持たぬかもしれんのう……」
そんな……シェリアは悩んでいた。
「なんとかしてあげられませんか、お姉様――」
フィレイナも悩んでいた。
「してあげたいのは山々だけどね、だけどそれを言うと――」
ララミィは頷いた。
「ああ、気持ちはありがたい。
じゃが……これは我らの問題じゃ……流石によそ者であるそなたたちの力を借りるわけにはいかん……」
というと、フローナルは言った。
「じゃあ、こうすればどうだ?
俺はどうしてもあいつらが気に入らん……だから俺らは勝手にやるだけのこと、
いいんじゃないか?」
ララミィは首を振った。
「そんなことをしたらお主は世界を敵に回す! 仮にも同族じゃろう?
それに刃を向けるとあらば居場所がなくなってしまうぞ!?」
同族じゃないんだが……どう説明したもんだか……フローナルは悩んでいた、
そもそも精霊族の類をこの惑星で見つけられたためしがない。
「そこまで無理をせずともよい、我らは強い民じゃ、だから心配せずともよいのじゃ。
そうじゃな、お礼と言ってはなんだが、そなたたちが希望している遺跡への案内をしようぞ」
ということで、一行はトリシロン遺跡へと向かうこととなった。