運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第3章 カルティラの黙示録

第56節 血と心優しき者

 一方のフィレイナとディルナは――
「艦長! 聞こえますか!」
 そう、メテオ・ナイツへの通信を試みていた。
「おお、ディルナか、どうした?」
「はい! まずはガイドラインの熟読が完了しました!」
 すると……カルディアスは何かに気が付いた。
「ん? こんな朝早くに町からだいぶ外れたところにいるようだが――」
 フィレイナが説明した。
「町では厄介ごとに巻き込まれてしまってね、 と言っても未開惑星保護条約に引っかかる内容じゃないんだけどさ――」
 フィレイナはさらに説明すると――
「なるほど、つまりは領主に癖があるがゆえということか――」
「ええ、そういうことね。 ま、こういう惑星にはありがちなことよ――」
「確かに、国同士で戦争しているということは何処でもありえるケースだな。 ただ、その際に使用する兵器は――」
「メインは魔法でサブが剣……ま、古典ファンタジーではよくあるやつってわけね。」
「フェルドゥーナ星では大昔の伝説でしか訊いたことがない話だがな」

 そして、話を終えた2人は戻ろうとすると――
「ん……!? ディルナ! 危ない!」
 えっ……ディルナは驚くと、気が付いたらフィレイナが背後に立ちはだかった!
「ぐっ……!」
 なんと! フィレイナの右肩には氷の刃が!
「おっと、しくじってしまったか――俺の腕も落ちたもんだ――」
 そいつは魔導士だ! 間違いない、タオスピレアの刺客だ!
「ふん、どんな女かと思えば他愛のない…… 偵察に来ただけのつもりだが、この俺が自ら始末してやろう! ありがたく思うのだな!」
 と言いつつ、今度は巨大な炎の球を発射! が、しかし……
「遅えよ、この三下が――」
 フィレイナはものすごいスピードでそいつの身体を左手の剣で真っ二つ!
「ぐあっ……ば、ばかな――」
「そうよ、バカはあんたよ。」
 トドメの一言もキツイ……。

 フィレイアはここの住人たちに抱えられディルナと共に戻ってきた。
「おい! どうしたんだ!?」
 フローナルは焦っていた。
「あらお兄様、見ての通りよ……。 無防備な態勢で肩を刺されちゃってね、ちょっとしたらすぐ治るからそんなに心配しなくたって大丈夫よ――」
 だが……それ以上にララミィが涙を浮かべ――
「何を言っているのです!? 相手は誰ですか!? タオスピレアの連中ですか!?」
 と、とにかく心配しているが、フィレイアは――
「ふふっ、大丈夫よ、これでも歴戦の戦士としてやってきているんだから、このぐらいの怪我なんか平気よ。 でも――こんなに可愛い子が私のことを心配してくれるだなんて嬉しいわね――」
 と、フィレイナはシェリアの手を借りつつも、とにかくワンピースを脱いでいた…… 中はきちんとインナーを装備しているのだが、やはり歴戦の戦士を語るように、 頑丈な素材で彼女の身体を保護しているようだった。 だが、肩には氷が貫通していた痕が……
「ったく、痛ったいわね……ふざけんじゃないわよ――」
 そこへシェリアは必至に回復魔法を……
「あら、こんなに可愛い子からの魔法なんて超嬉しいわね、 この分だとものの数時間で治っちゃうんじゃないかしら?」
 いや、おとなしくしてろよ……フローナルは悩んでいた。 今更だが、彼には悩み事が多いようだ。
「ったく……なっかなか血が止まらないわね、無性に腹が立つわ……」
 あっ、血……さっきも話していたな、フローナルは考えていた。 あんまり気が進まないが……フローナルは話した。
「デーモン・カリスは他者の血によってパワーアップする種族なんだそうだ」
 えっ、そうなの? フィレイアは聞こうとするが、それにはララミィが――
「そ、その話はいい! この状態のお姉様の前でせんでもよい!」
 と、止めようとするが、フィレイナは興味を示しており、フローナルに催促した。すると――
「へえ、ということはつまり、私の血を飲めば私の力が得られるってワケね。 確かに私とシェリアは同質……だからララミィが癒しの精霊様になりたいんだったらちょうどいいってワケね。 で、どんだけ飲めば行けるもんなの?」
 なんで乗り気……ララミィは唖然としていた。
「癒しの精霊様は憧れなんでしょ? どうせだったら飲めばいいじゃない。 せっかくならいただいちゃいなさいよ、私らにはできない能力を使ってね――」
 そして、フィレイナはララミィの頭を優しくなで――
「それに……あなたみたいなこんなに優しい子に血を与えるんだったらお姉さんも本望よ…… しかもあなたみたいな子のほうが私なんかよりも癒しの精霊にとっても相応しいしね。 だから、さあ、遠慮しないで――」
 と、ララミィはそう言われてさらに涙を浮かばせて――
「ん? いやいやいや、ちょっと待ってよ……なんか私、死ぬ流れになっていない?」
 確かに……この流れはそうだな。
「いやいやいや! まだ死なねーよ! 肩刺されて血流した程度じゃあ死なねえし!  見なさいよほら! まだこんなにピンピンしてんでしょ!」
 だな、700年も生きているクセに元気が過ぎる……。
「本当にいいんですか? 最低でも250mlぐらいは必要ですけど……」
「250! まあなんてカワイイのかしら! 献血のときは毎回400やってるんだからそんなの大した量じゃないわよ!  さあさ、早いところいただいちゃって――」
 確かに、やってそうなガタイしているしな――フローナルはそう思った。 だってこの人――フローナルが187cmなのに同じぐらいの身長があるんだぞ(実際には1cmさらに高い188cm)。 もちろん身長だけで決まるわけではないが、少なくとも身長相応の体格であるということである。
「わかりました! そこまでおっしゃるのならお言葉に甘えてお姉様の血をいただきます!」
 そして……ララミィはフィレイナの肩に食らいついた……
「頼む、いいこと教えてやったんだから俺のことを襲ったりしないでくれよ――」
 フローナルはそう思っていた……切に切に切に。いや、どー考えてもフラグですよねこれは……。