運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第3章 カルティラの黙示録

第52節 同士討ち

 一方のフィレイナたちはラオディク邸でしばらくお世話になっていたが――
「そろそろ夜が更けていくわね、お兄様たちと合流しないと――」
 フィレイナが言うとディルファーが言った。
「ダルザークの所へ向かったという方ですね、 一応行動を探らせてもらっていますが、何者かと話をしているということを聞いていますね――」
 流石だな、時の人となる相手の情報はきちんと調べているのか。だが――
「何!? それは本当か!?」
「はい! 間違いございません!」
 どうしたんだろうか、フィレイナは訊いた、何とも穏やかな感じではなさそうだ――
「お仲間の方ですが、どうやら先ほど話した悪魔の餌食になってしまっているようです――」
 なんだって!? シェリアは訊いた。
「どういうことなんですか!?」
 団長は話した。
「先ほども話した通り、”悪しき血を継ぎし民”……恐るべき力を用いて人々を狂わせるすべを持っています。 中でも、一番注意しなければならないのが”ララミィ・ラヴリン”と呼ばれる悪魔の女です!」
 なんと!
「あの者が持つ魔性はとても恐るべきもの…… 見た目こそ年端のいかぬ小娘のようなもの……申し訳ないことを言うのですが、 ちょうどあなたぐらいをもう少し幼くしたような印象の女です」
 それはシェリアを差して言っていた、まさにプリズム族か――
「そして時折このタオスピレアを襲撃してはその美貌を振るい、 多くの男の心をかっさらい、そして同士討ちを行うというのです……」
 って、やってることがまさにプリズム族……それはちょっとまずいかも、 特に……
「確か自らを”リリス・ロリスティ”なる種族であると言うような悪魔です――」
 ……いや、名前からしてしっかりとイタイケさを利用してお兄様の心を奪う気満々な種族だな!  フィレイナは悩んでいた。
「プリズム族は適齢期のお姉さんというのが相場―― でも、そこから背徳感の強いロリ要素を加えた存在が相手だったら?  流石のお兄様でもちょっとタジタジかもわからんわね……」
 それはやばいのでは!? シェリアとディルナは焦っていた。
「召使いはガッツリスケベだからいとも簡単に引っかかっているだろうしね――」
 ディルナは呆れながらそう言った、アルドナスの扱いが雑……。
「だが、女性方とあらばもしかしたら”ララミィ・ラヴリン”の香に惑わされずにやれるかもしれません!」
 それだけその悪魔女は手練れなんだな、だから連中は人を集めているのか……フィレイナは考えた。
「そうね、それなら私らでやるしかないわね――」

 そして、西の森の入口にて……
「あっ、あれ!」
 シェリアは気が付いた、そこに立っていたのはフローナルだ! 彼は後ろを向いて立っているだけだった――
「ふ、フローナルさんは、ララミィ・ラブリンの毒牙に……?」
 ディルナはそう言うと、フィレイナは剣を取り出した。
「正気に戻すしかないってわけね……ちょっとやばそうだけど、仕方がないわ――」
 そして、彼女は構えるが――
「さあ! どうしたのよ! ララミィ・ラブリンの下僕! 全部わかっているのよ!」
 フローナルに向かって叫んだ、彼は剣を一向に引こうとはしない――
「くっ、わけがわからないわね――まあいいわ、そう言うことなら、これでどうよ!」
 フィレイナはフローナルに向かって速攻で襲撃! そのまま彼をその剣で真っ二つに!
「えっ……!?」
 と、フィレイナはすんでで踏みとどまると、一気に距離を離した!
「ちょっ!? 何してんのよ! 今の完全にノーガードでしょ!?  今のまま行ったらあんた、完全に死んでるからね! なんのつもりよ!?」
 そう、彼女の言うように、フローナルは一向に動こうとしていなかったらしい。
「くっ! 次はマジでやるからね! さあ! 行くよ!」
 と、そのままフィレイナは再びフローナルに襲撃!  すると彼を思いっきり転倒させた! そしてそこへ刃を向けた――
「だから何のつもりよ! なんで一切抵抗しないのよ!」
 フィレイナは再び疑問をぶつけると――
「だって、ララミィ・ラブリンの下僕だからな、同士討ちを誘ってるってことだな。 それによって俺はあんたに殺されようとしている……直面の問題が解決できてよかったじゃないか――」
 いいわけないだろ! そう言いたそうなフィレイナは涙をにじませていた。 するとフローナルは――
「そっちで何を吹き込まれたかは知らないが俺の言い分を訊いてもらってもいいか?  俺はララミィ・ラブリンの下僕だから何を言っても信じないかもしんないが……」
 フローナルはそのまま姿勢を変えずに話した。
「光栄なことに俺はあの女のお気に入りらしく、 そもそも誘惑魔法などというもので心を縛るようなことはしていない――」
 フローナルは淡々と話し始めた。