あまりに穏やかならない彼女の言い分――2人は彼女の話を聞くことにした。
相変わらずフードを脱いでくれず、ローブで身を包んでいる姿だが、
顔はしっかりと見せてくれた――何とも可愛らしい顔立ちの女性である、
プリズム族にも通ずるような美しい顔立ちである。
「わらわの名前は……そうじゃな、”アイシャ”とでも呼んでくれるといいぞ」
なんだそれは――2人は悩んでいた、呼んでくれっていうのは――。
「なあ、そのフード、脱がねえか?」
アルドラスは訊いたが――
「いや、遠慮しておこう、これでも案外気に入っておるのじゃ」
無理強いはするな、フローナルはアルドラスに促した、でも脱げばいいのに――アルドラスは気になっていた。
「そっ、そうか――それなら仕方がねえ。
だったら、そろそろ俺達に何の用なんだか教えてくれよ!」
アルドラスは言うと――
「そうじゃな……しばし待て、話をするのには時期尚早というものじゃ――」
と、なんだかはぐらかしている様子。
「んだよ、何も教えてくれなければ何も言わねえし、何もしてくんねえんだな!
フローナル、行こうぜ! ”トリシロン遺跡”の情報知ってんのに教えてくれねんだ。
俺達はんなところで油売ってる場合じゃねえってのに――」
アルドラスはそう言うが、フローナルは――
「いいや、俺はせっかくだからアイシャから聞き出すことにするつもりだ。
どうやら彼女にも何か目的があるらしい――乗り掛かった舟だからな、彼女の目的に付き合うことにするぞ」
なんだって!? アルドラスは問いただした。
「どうしたんだよ!? まさか、この女にゾッコンとかそう言うことじゃねえよな!?」
フローナルは呆れていた。
「お前はどうしてそういう発想しかできねえのか……。
俺はただ……祖国の民たちを想ってのことだ。
アイシャが言うには原住民に関係する話らしい。
”トリシロン遺跡”の情報知ってんのに教えてくれねえっていうのは多分そう言うことなんだろうな」
「祖国たって、お前はエターニスの民! 滅んでねえだろうが!
大体、原住民と”トリシロン遺跡”が何故つながっているんだ!? 意味わかんねえし!」
「エターニスの民だからだ。
俺達はいろんな種族が争いで滅びゆくさまを見ているからな――
できるだけ、そういうのは避けたいもんだ。
それと、原住民ってだいたい遺跡染みたところを根城にしているからな。
今のフェルドゥーナじゃあ想像もできねえかもしんねえが、古の時代はそういうのが普通だったらしい――」
えっ、そうなのか!? アルドラスは訊いた。
「そうだ。だから――彼女の目的をちゃんと聞いてやるんだ。
そしたら遺跡のことを話してくれるんじゃないか?
もしかしたらついでにお姫様抱っことかさせてくれるんじゃないか? 保証はしないけどな――」
お姫様抱っこ! いや、それはぜひともしたいもんだ! いい匂いするんだろうなぁ……アルドラスは嬉しそうだった。
「本当にわかりやすいやつじゃ。
まあいいわ、目的を達した暁には抱っこでもおんぶでも好きなことをなんでもさせてやろう――」
アルドラスは興奮していた。
「好きなことを? なんでも!? だったらチューしてくれるってのはどうだ!?」
おっ、おい! フローナルは焦っていたが――
「ほほう、チューときたか! お主はなんとも欲しがりじゃな!
いいじゃろう! 場合によってはその願いを考えてやらんでもないぞ!」
「マジか! よっしゃあ! 俺はやるぜえ!」
アルドラスはフルスロットルで興奮していた!
えっ、まさか! と思いきや、フローナルは冷静に考えた。
「なあ、おい、場合によってということは――」
アイシャはニヤっとしていた。
「ああ、考えてやらんでもない――やるとは言っておらんな♪」
やっぱり――フィレイナあたりからは何度か似たようなことを訊いているからすぐさま察したフローナル、女は怖い。
「じゃがフローナル……お主だけは特別じゃ。わらわのことを好きなだけ抱くが良いぞ。
そしていつでもわらわの唇を奪うがよい――お主の伴侶として生涯を共にする覚悟なぞ、
お主と出会った時点で既にできておるのでな……ウフフッ♪」
相手がフローナルとあらば厭わないらしい……フローナルは悩んでいた。
現地のお金については自国の貨幣は使えないので物を売って現地のお金を得るスタイルをとる。
そのため、鉱物のようなものを現地で換金することで得るのである。
調査したところ、多くの惑星で取りやすい鉄鉱石がこの惑星でも取れるようなので、
それを売り込むことで資金を得ていた。
とはいえ、それすらをも自分のお給金や支給品で賄わないといけないのだが――
とりあえず外の様子を見ようとして外に出た3人、
追ってくる連中はだいぶ遠くに撒いたようだ。だが、それよりも――
「うぅ……何を食べようかのう……」
アイシャはお腹を押さえてそう言った、
彼女がお腹がすいたというので外に出て食べるものを調達しようというのである。
「あれはなんじゃ? なんだかおいしそうじゃのう――」
と、そこにある屋台で何やら彼女がそそるような食べ物があったようだ。
「あれはチョコレートパフェってやつだな、女子には人気の甘くてうまい食べ物だ」
フローナルは説明すると、彼女は……
「甘いのか! それは一度は口にしてみたいもんじゃ! なあ、食べさせてくれ!」
乗り気だった。するとフローナルはアルドラスの肩を叩き――
「なっ!? 俺!?」
「彼女が食べたいって言っている、チャンスじゃないのか!?」
そうか! チャンスか! これはまたとないポイントを上げるチャンスだ!
アルドラスは乗せられるままにチョコレートパフェを彼女のために買ってくると、
それを嬉しそうに彼女に差し出した。
「おお! おおおおお! これはなんともたまらんビジュアルをしているものじゃ!」
というか、食べたことがないのか――現地にいながらも、なんだか変わったやつだな……
フローナルは考えていたが、アルドラスにとってはそんなことどうでもよかった。