運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第3章 カルティラの黙示録

第46節 信用ならない領主たち

 エルバトスの屋敷にて――
「やぁっ! はぁっ! たぁ!」
 フィレイナが剣を持って暴れていた……いや、これは――
「ぐはぁっ! なっ、なんと、この私が……このような女に剣で負ける……だ……と……!?」
 相手は膝をついていた。
「ええ、女と思って甘く見たのが運の尽きツキってワケね。」
 フィレイナは剣をクルクルと回しながら得意げな態度でそう言い放った。 その傍らにはシェリアは剣をいつでも引き抜けるようにと手をかけており、 ディルナもボウガンを持ちながらトリガーをいつでも引けるように手をかけている……。
「さて、どうするかしら?  最初にも言った通り、あんたたちと違って魔法なんてものを使ってまで本気出そうって考えは毛頭ないからね。 次は誰かしら?」
 するとそこへ――
「もう、よい……素晴らしい技の持ち主ということがよくわかった。 確かに、女とみて甘く見ていたのは誤算だった―― お前はこの屋敷の強者をすべて倒してしまったのだ……。 どうだ? これまでの非礼を詫びたい、だからここに滞在するのであれば宿を提供しても構わんぞ?」
 この屋敷の一番偉い人、エルバトスがそういうと、フィレイナは――
「ええ、せっかくだけど、こちとら旅を続けないといけないもんでね、 また今度機会があったらお願いするわね――」
 そう言いつつ、フィレイナとシェリルとディルナは屋敷から足早に去った。 残された者たちは呆然としていた。

 その後……フィレイナはイラついていた。
「ったく! なんなんこの星! 女はテメーラのようなカスのカスのカス以下の馬の骨共の道具じゃねっての!  嫁探ししたいんだったら他をあたりやがれ! この××××(※放送禁止用語のため伏せております。お察しください)!」
 エルバトス家の狙い、それはなんとも器量良しなフィレイナとシェリアを見つけると、自分の女にしようと画策していたのだった。 だが断る……フィレイナは速攻で断るが、連中は無理やりにでも自分の女にしようと強引な手段を取ろうとしてくる。 だったら――そもそも自分は魔法剣士云々で呼ばれたんだから腕を見てくれと、 そして自分が勝ったら素直に諦めろという条件を提示したら、 あろうことか、相手はまさかの手練れを用意してきた…… 完全にブチ切れたフィレイナはそいつをブチ殺す寸前までコテンパンにし、いよいよ負けを認めさせたのである…… こんなヤバイ女がいいなんてエルクザートの人にも物好きがいるな。
「ああもう! 目の前に8,000人ぐらいブチ殺してもいいって言う男現れないかなぁ!」
 怖い……本当にどうしたらこの女が好きって言えるんだ? 難しい……。

 フローナルとアルドラスは屋敷を出てきた。 そして、通りを歩いていると……
「お主らがどうなったか少々気になって待っておったわ――」
 先ほどの女性だ、2人はすぐさま駆け寄ると、フローナルは――
「よし、さっさと行くか――」
 と言いつつ彼女を抱きかかえ――
「えっ――」
 彼女はドキッとしていたが、
「さてと、<ミスト・スクリーン>だ――」
 フローナルはアルドラスと共に路地へと入り込んだ途端に魔法を使用した!  すると――
「なっ!? 何処だ!? 何処に行ったんだ!?」
「探せ! まだその辺にいるハズだ!」
 なんと、彼らを尾行していた者たちが――
「追われるのは得意じゃないからな、勝手にやっていてほしいもんだ」
「すげえ腹立つ――なんなんだあいつら……」
 フローナルとアルドラスは呆れていた。 すると女性はフローナルから降り立つと――
「この魔法……なんとも実戦的かつ高尚な能力じゃな……。 単に霧に身を委ねて姿をくらますだけのものであれば数あれど、 まさかわざと魔法の気配をいくつか発生させてダミーまで作り出すとは……。 この発想もすごいが使いこなすだけの魔力を保有しているというのもまたすごい能力じゃ。 そなた、只者ではないな? 何処から来たのじゃ?」
 魔法に感心していた、この魔法の発案者はフィレイナである。 もはや普通の魔法使いの発想で考えられる魔法の領域を超えているクリエイターならではの魔法ゆえに、 控えめに言ってエグイ魔法である。 だが、この空間が魔力が濃い空間であるがゆえにこんな魔法で気配を消されようものなら探し当てるのはほぼ不可能に等しい―― そう考えるとますますエグイ魔法である……。
 とにかく、何者か問いただされたフローナルは悩んでいると……
「ここで話してるとやばいんじゃねえか? 場所変えようぜ?」
 アルドラスから提案が。
「ふふっ、そうじゃの、お主の言うとおりにするかの」

 そこは町はずれの廃屋の中だった。 で、フローナルはどう誤魔化すか考えた末――
「そ、そうか、それは悪いことを訊いてしまったようじゃの――」
 そう、フローナルは一貫していた、彼にはそもそも記憶がない、それをそのまま彼女に話したのである。 なお、アルドラスについては地元民の体を保っている。
「いいんだ、もう慣れた。それに、別にそれが苦だとは思っていない」
 と、彼が話している姿をみて彼女は嬉しそうにしていた。
「そうか、そういうもんか。 だが――それにしても妙じゃの、お主らの価値観はまるでこの世界の人間ではないような印象しか持たぬのでな。 だから、そうじゃな――お主らは目的があってきたのじゃろ? それはどうじゃ?」
 うっ……見透かされている、どうしたもんだか――

 ダルザークの屋敷では目的まで話すことはなかったが、 彼女には話しておこうかと考えた2人は宇宙から来たということは伏せるにしても、 目的だけでも話しておこうと考えた。
「”トリシロン遺跡”……」
 何か知っているのだろうか、フローナルは訊いた。
「うーむ……知っていると言えば知っているが、それはちょっと難儀なものじゃな――」
 難儀? アルドラスは訊いたが――
「難儀は難儀じゃ、わらわからはこれ以上のことは口にできんのでな、すまんのう――」
 それは残念だ。