運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第3章 カルティラの黙示録

第39節 フェレストレイアの女

 メフィリアは話をした。
「いつもあのシェリアと共にしているところが気になってな、 フィレイナなんかはそもそも異性にそこまで興味はない―― 偶然にも宇宙で知り合った男児に気に入られたことで子供を授かることにはなっているが、 そなたへの扱いも”お兄様”を貫いておる程度のものじゃからな」
 え、あれで一応男がいたのか……しかも相手から気に入られたとか…… その男は相当なやつだな――フローナルはそう思った、 しかもフェレストレイア星の自分たちの支配下にある男以外の男……そいつは英雄だ――フローナルは考えた。
「だからまあ……フィレイアは例外としてもだ、 そしてシェリアもフィレイア同様にしかそなたを見ていないのかもしれぬが――」
 それでもやっぱりプリズム族の里のど真ん中に男が素面で生還してきたのが腑に落ちないということか。 とは言われても――
「悪いが、俺としてもそれがどういうことなのかわからないんだ。だから――」
 と、フローナルは話を続けると、メフィリアは首を振った。
「よいのじゃ、気になりこそはするが、そのようなことはどうでもよいのじゃ。 確かに、我らにとっては妖の香が通じぬ男児の存在など痛手以外の何物でもないが―― だが、そなたはなんともよい男児じゃ。 シェリアもフィレイアもそなたに懐いておる、まるで自分の兄のように慕っておる―― そして彼女らを受け入れるその包容力…… 癒しの精霊とも呼ばれる我らとしてもそこは見習わなければならぬところじゃ。 なんとも素晴らしいものよのう――」
 そうだろうか……フローナルは照れ臭かった。
「しかし……それにしてもなんとも羨ましいことじゃ――」
 と言いつつ、彼女はおもむろに――
「……えっ!?」
 なんと、背後からフローナルのことをそっと抱きしめてきた!
「ああ……、よいのう――なんて素敵なのかしら――」
 彼女はまさに恋する乙女のようにとても嬉しそうだった――。 そんな状況にフローナルはなんとも複雑な感じだった、何故かわからないけど悪くはない――。

 一方で、カルディアスはアルドラスが寝泊まりしている部屋へとやってきた。
「目が覚めたようだな――」
 アルドラスは言った。
「あんたがメテオ・ナイツの艦長――」
 カルディアスは頷いた。
「キミの部隊は残念ながら全滅したそうだな」
「そういうことだな。 でも……このことを本星に知らせたいがその手段がねぇと来たもんだ――」
「状況としては我々と同じということか――」
 アルドラスは頭を掻いていた。
「俺は”エントリアス”星人のハズなんだけどな、 お宅らフェルドゥーナ星の者に救われて以来、その星に移住したっていう経緯がある。 でも――そのフェルドゥーナもエントリアスと同じ末路を……たどらなければいいんだけどな――」
 何気に彼は移民だった。
「いや、今やこれはフェルドゥーナだけの問題じゃない、この世界すべての命に関わる問題なのだ。 だから――もはや誰しもが他人事では片付けられないことなのだ――」
 確かに、その通りだった。するとアルドラスは――
「それなら俺がやるべきことは、艦長についていくってことだけだな」
 カルディアスは頷いた。
「ああ、この場にキミを置いていくことはしない。 フェルドゥーナに戻るにせよ、今後の計画を遂行するにせよ、 キミのことは同じ星の者である限りは連れていくつもりだ」
 それに対してアルドラスは――
「ああ、頼むぜ、艦長!  けどなぁ、それはそれでなんとも名残惜しいもんだよなぁ……」
 何故?
「だって、ここはまさに美女ばかりが住まう星……楽園じゃあねっすか!?  そんな美女に囲まれて……もうここ、最高じゃねっすか! 天国じゃねえっすか!  こんなとこ、他にはないっすよ! ヤバくないっすかぁ!?」
 と、鼻の下を伸ばしてデレデレとした態度で話し始めていた。 カルディアスは頭を抱えていた。
「なるほど……これがフェレストレイア星か、やはり恐ろしい惑星だな……」
「艦長もお気に入りの女性とかいらっしゃらねえんですか!?」
「悪いが私にも妻子がいるのでね――他所の女性にうつつを抜かしてしまっては申し訳ないのだよ」
 想い人持ちには不用意に手出ししてこないのもプリズム族やフェレストレイア星の女性の特徴である、 このあたりは癒しの精霊と呼ばれる所以だそうだ、 妖の香の効果を確実にするためということでもあるらしいが。

 フィレイアはとても忙しくしていた。
「ほら! そこ! ちゃんとやってる!?」
 メテオ・ナイツは彼女主導で修復されていた。
「星の下僕さんよりも艦のクルーですか?」
 シェリアが言うとフィレイアは答えた。
「星の下僕共は文明レベルが低くて最低限のことしかやらせらんないのよ。 精密機械触らせるなんてのは以ての外! そんな感じなのよ。 んなことより! そこ! サボってたら承知しねえぞ!」
 と、まさに艦のクルーたちをしごいていた。
「美人には逆らえないってか? まさにそのまんまって感じかよ……」
「同じ美人でもシェリアちゃんのようにおとなしくっておしとやかな可愛い天使様か、 女王様みたいにお色気たっぷりで、俺達のようなのをあの美貌でこき使ってくださるようなザ・女王様だったらまた違うんだけどなあ――」
「色気っつったらあの人も結構負けてねえ気がするけどな、 スイッチが入ってねえとまさにマジで女神様って言う感じのイイ女なんだが、 それでもお前らなんか寄せ付けねえ感が強いほど気が強えぇのがネックなんだわ――」
 と、無駄口をたたいていると――
「貴様ら……マジメにやってんのか!? あぁん!?」
 背後からお前らなんか寄せ付けねえ感が強いほどの末恐ろしいものが――
「は、はい! もちろん仕事しております!」
「す、すみません! 本当にごめんなさい!」
「も、もちろん! マジメにやらせていただいております!」
 その光景を見て女性陣は楽しんでいた。
「フィレイア姉さん! そこらの男なんかボッコボコにこき使っちゃってください!」
「いけー! コテンパンにしちゃえー!」
「なるほど! それがフェレストレイアの女性の扱う妖の香ってやつなんですね!  それで男を従えさせているなんて流石です!」
 それはどう考えても違うと思いますが……
 そんな中、ディルナは作業に夢中になっていた。
「いよっしゃあ! できたぁ! 休憩しよ♪」
 それにしても、メテオ・ナイツってフェレストレイアの艦じゃないよね? あれ?